表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

プロローグ 出会いの夢

人外×人なラブコメです。

結構がっつりBLになる予定です。

※プロローグのみ、再投稿ですorzorz

では少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

――その夢を見たのは小学二年生の時。


私――天ヶ谷千皓(あまがやちひろ)を女手一つで育ててくれていた母さんが不慮の事故で亡くなり、母さんの兄である天ヶ谷辰生(あまがやたつみ)さんに引き取られて、彼が神職を勤める都内近郊にある涼音町の外れに存在する夕辻神社で暮らすようになってすぐくらいのある夜の事だった。


夢の中で私は墨を流し込んだような闇の中に一人で立っていた。

一筋の光もない、物音ひとつしない、風すらも吹かない。暑くもなく寒くもなく、上も下も右も左も分からない黒一色のこの空間に少しだけ恐怖を覚えぎゅっと胸元の服を握りしめる。


「……これ、夢だよね。……変な夢」


『助けて。』少し震えた声で呟いた私の耳に『声』が届いたのはその時だった。


「……え?」


『助けて。』


『誰か助けて。』


それは涙に濡れながら必死に助けを求める女の子の声で、周囲を見回しその声の持ち主を探していると不意に目の前に一匹の蛍が現れた。


「……蛍?」


ほわり、ほわりとまるで呼吸するかのように淡く点滅する黄緑色のそれにそっと手を差し出せば、蛍が私の人差し指の先に止まる。


『お願い、助けて。』


『あの人を助けて。』


『わたしじゃもう助けられないの。』


『お願い。』


点滅するたびに聞こえる声に、さっきから助けを求めていたのはこの蛍だったんだと理解した。


「ねえ、どうしたの? 私に何か手伝えること、ある?」


指先に止まる蛍にそう話しかければ、蛍がふわりと指から飛び立った。

それが付いて来いと言われているようで、淡い黄緑の光を見失わないように小走りで付いていった先にいたのは、私の遥か頭上、何もない空中で磔になっている不思議な雰囲気の男性だった。


肩幅が広く均整の取れた逞しい体の白のシャツと黒のスラックスというシンプルな格好のその人の、俯いている顔はよく見えなかったけど何故か泣いているような気がして胸がざわついた。


「……――誰だ。」


突き動かされるように一歩足を踏み出した瞬間、一本芯の通った強さを抱いた低く力強い声が耳を打つ。


ハッと顔をあげれば、少しだけ顔をあげたきりりと上がった男らしい眉と少しつり上がった二重で切れ長の瞳の端正な顔立ちな男前のその人の月白色の瞳と目が合った。


「…………人の子か。何故こんなところにいる?」


「あの、助けてって言われたの。蛍に、『あの人を助けて』って。それって、お兄さんの事だよね?」


男性の不思議な雰囲気に気後れしながら言葉を紡げば、彼の瞳がすっと細められる。


「…………蛍? ああ、あいつか。」


「あの、助ける! 私お兄さんを助けたい! でも、どうすればいいか分からないから、だから、教えて? どうすればお兄さんを助けられる?」


その『あいつ』と言うのがきっと蛍の事なんだろう、と何度も頷きながら続けながら彼を見上げ尋ねると返ってきたのは「無駄だ。」という短い言葉だった。


「――――え。」


「俺はすでに誰からも必要とされなくなった者。誰からも忘れ去られた者。後はここでただ一人、朽ちて消えていくだけ。今更何をしようが手遅れだ。」


「……っそんな! でも、あの蛍……っあの蛍は、お兄さんを助けてって泣いてた!! それってお兄さんを必要としてるって、お兄さんにいなくなって欲しくないって事じゃないの!?」


何もかも諦めたような彼の声が寂しくて、悲しくて、必死に声を張り上げると彼がふるりと首を振る。


「……足りないんだ。あいつ一人のその思いでは俺はもう俺を保てない。……仕方ないんだ。」


「っ……!!」


そのまま瞳を閉じた彼に、駄目!!と叫び必死に手を伸ばした。


このままだと彼は本当に消えてしまう、なのに何もできない自分が悔しくて仕方なくて、瞳からぼろりと大粒の涙が零れ落ちる。


「っ、駄目、お兄さん。いなくなっちゃ駄目だよっ……。っ足りないなら、わた……()()がっ! おれがお兄さんの事必要にするからっ!! お兄さんにいて欲しいって思うから!! お兄さんをっ、大切に思うから!!」


無我夢中で、自分の呼び名さえ忘れてそう叫んだ瞬間、ふわりとおれと彼の間に風が吹いた。

その優しい温かな風にきょとんとしていると彼が再びその月白色の瞳を開く。


「お兄さんっ!!」


どこか驚いたような表情を浮かべている彼に構わず呼びかければ、ぱちりと瞳を瞬かせた彼がゆっくりと口を開く。


「……成る程。お前、なかなか難儀な人の子のようだな。人の子よ、お前が俺を受け入れるというのか。……ならば、俺の眷属になり、俺と共に悠久を過ごせるか? 年も取らず、死にもしない体になっても尚、俺と共にいると誓えるか?」


彼の瞳に試すような色が宿ったのを見て、おれは小さく息を飲んだ。

正直、彼の言っている事は当時のおれには難しかったけど。


でも。

……でも、それ以上にこの人を独りにしたくないって強く思った。


だから。


「うん、いいよ。眷属っていうのはよく分からないけど、お兄さんがおれにそうなって欲しいって言うなら、おれ、なるよ。……なって、ずっとお兄さんのそばにいる。そうしたら、お兄さんはいなくならないんだよね? あの蛍も独りにならなくていいんだよね?」


「……ああ。」


「分かった。なら、お兄さん、おれを眷属にして? それで、おれもお兄さんとずっと一緒にいるから。お兄さんもおれとずっと一緒にいて?」


しっかりと頷いた彼にほっとしたように笑いかけて両手を伸ばせば、彼がはぁーーと息を吐き出した。


「……随分と熱烈なお誘いだな、人の子よ。そこまで求められては、どうやら消えれそうにもない。人の子、お前、名前は?」


「天ヶ谷千皓。父さんが……おれが生まれてすぐ死んじゃった父さんが付けてくれた大切な、名前なんだ。」


「そうか。……千皓、良い名だな。」


彼がそう言ってふわりと微笑んだ瞬間、パキィンと澄んだ音と共に真っ黒な空間に白い亀裂が幾筋も入る。


「…………え。」


慌てて周囲を見回した次の刹那、その場に響いた硝子が割れるような高い音が合図だったかのように、闇が崩れ始めた。


そして。


「っ……お兄さん……。」


どんどん黒から白へ変わっていく光景の中、気が付いたらおれは彼に抱き抱えられていた。

彼の腕の中はとても温かくて何故かすごく安心できて、その胸元のシャツを握りしめ至近距離にある彼の顔を見つめれば、自由になったらしい彼の掌が俺の頬に添えられる。


「……契約は成立した。これでお前は、この俺――今は亡き村の守り神、(あおい)のものだ。」


「……うん。」


素直にこくりと頷くと、小さく笑った彼――葵の親指がおれの唇をゆっくりとなぞる。


「ッ……ん」


そのくすぐったい様なぞくぞくとした刺激に思わず小さく声をあげると葵の笑みがさらに深まった気がした。


「……これはなかなかだな。楽しみにしておくとするか。」


「えっ?」


その言葉の意味が分からずに聞き返せば、こちらの話だ、と返され今度は掌全体でゆるりと頬を撫でられる。


「…………葵?」


「千皓、本来ならば今すぐにでもお前を眷属に迎えたいところだが、何せ俺は先程まで消えかかっていた身。今はまだ力が足りない。だから、少し待っていろ。力が溜まった暁にはお前を迎えに行く。」


「……ん、分かった。」


月白色の瞳を細めながら穏やかな声で話す葵に小さく頷くといい子だと耳元で囁かれ、そのくすぐったさに思わず小さく笑い声をあげる。


「葵、おれ待ってるからね。」


「ああ。――千皓、お前は俺のものだ。それを努々忘れてくれるなよ。」


そして、柔らかく微笑んだ葵の唇がおれの額に押し当てられた……ところで目が覚めた。


朝の眩しい白い光の中、寝ぼけ眼で辺りを見回せば、そこは辰生さんが用意してくれたおれの部屋で。

変わった様子なんて勿論なかったから、おれの中でそれはただの不思議な夢だという事で結論付いた。


うん、本当にただの夢だと思ってたんだ。


…………少なくとも、数分前までは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ