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三題噺

自動人形とウミガメ

作者: あきまさ

 あるところに、浜辺近くに位置するところに古ぼけた洋館に、一匹の亀と一人の少女が住んでいた。

 少女の名はアンジェリカといい、容姿端麗であり見た目は一五歳頃に近く髪は金糸で出来ているかのような見事な金色であり、肌は透けるような白雪を連想させる肌の白さが特徴的であった。

 そう、彼女はまさしく人間ではなくある人形師から作られた自動人形だったのだ。

 

自動人形というものは人間を模して作られた、いわば人造人間である。それ故に彼女は寿命が減らず、人口が滅亡した今も彼女は生き続けている。

 人類が滅亡したのはそう遠くなかった。食糧危機による内戦が始まり、ついには核戦争にまで勃発し地上は荒れ果て人が生きて行くには過酷な世界になってしまったのである。アンジェリカは元々戦争用を目的とした自動人形であったのだが、人類が滅亡した今ではもはやその意味も皆無である。

 

 そしてアンジェリカだけが取り残され、現在まで生き続けた。

 亀の方はというと、アンジェリカが博士の墓参りをしていると、前足が傷ついた状態で浜辺へ打ち上げられているところを彼女が救ったのである。それ以来、彼女に懐いたのであろうか彼女の側を離れることはなかった。そして彼女は亀にホープと名付け、日々の生活を共にしていた。


 あるときの朝方、アンジェリカが森に家の補強用の資材を取り終え洋館に帰ると、ホープがいないことに気づき始める。今まで一緒に居たため、彼女の心はだんだんと不安が募り始めホープを探すため家を飛び出す。

 

 アンジェリカは走り出す。綺麗な足が傷つくことも顧みずにただひたすら名前を叫びながら走り出す。

 

 気づくともう日は落ちていき、空が朱色に染まり始めてきた。綺麗だった足は走ったためか至る所に傷がつき、痛々しい。最後に思い当たった場所は出会いの浜辺であった。

 

 さくさくと浜辺の砂を踏みしめながら、注意深く探していると、砂にはまっているホープの姿がそこにあった。

 拾い上げようとするも、ホープはそれを嫌がる素振りをする。しばらく待っていると、ホープは動き出し目には涙のような物が流れている、そこで彼女ははじめて卵を産んでいたことに気づいたのだ。

 生命の神秘を目の当たりにした彼女の頬にも一縷の滴がしたたり落ちる。戦争中、彼女は命を奪うばかりであり生命の誕生を見たのは初めてであった。卵からかえった子ウミガメ達は広大な海へと向かう。アンジェリカはその子達を眺めているうちに自分の胸の中が暖かくなる気がした。そして彼女の心に感情という物が芽生えた瞬間でもあった。

 

そして歳月が流れ、アンジェリカの元にかつての子ウミガメ達の何匹かが訪れた。彼女はあれから動物たちの保護や環境の手入れなどを積極的に行うようになり、彼女の周りには動物たちが集まるようになった。今まで一緒だったホープは寿命が尽き、いなくなってしまったが彼女の心の中には感情とかすかな希望を胸に今日も生き続けている。



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