始まりの雪原 ~一般常識編~
────男が目覚めたのは雪の中だった。
「寒っ!なんでこんな所に!?」
男は今、自分の置かれた状況を再確認する。
「部屋じゃない……ここは雪国?」
どうやら、俺は異世界転移とやらをやってしまったようだ。
しかし、寒いな~。いきなり極寒に放り捨てるなんて神様も大分悪だぜ……
俺はとりあえず歩いた。よく分かんないけど歩いた。するとそこに
「おい!俺と目が合うとはいい度胸だ。死にたくないなら、さっさと金を出せ!!」
え!?モンスター?!ちょっとちょっと!聞いてませんよ!!私、金なんか持ってないし、これ、確実に死にますって!
「払わないなら……死ね!!」モンスターは手に持ってる棍棒を俺に振り下ろした。死ぬ。そう確信したが、
「待て!これでも喰らえ!火の魔法、“危機一髪’’!!
」 その声がすると周りに火が集まって、モンスターを焼いた。容赦なく焼いた!!怖いぐらい!
「貴様……等、覚えてろ……」モンスターは跡形も無く焼けた。
「君、大丈夫か!」男の顔立ちは若い。鼻が高く髪型は七三分けみたいだった。
「大丈夫なようです。それより貴方は?」
「俺の名はキル。って、なんだその格好!見たこともないな~。」
今更気づいたが、俺はなぜか厚着で来てしまったようだ。ジャンパーにジーパン、なんて異世界に合わない格好なんだろうと後悔した。
「とりあえず、話はこっちで聞く。来な!」
キルに案内されて、どこかの木で出来た家に辿り着いた。
「と、言う訳なんです。何か分かりませんか?」
パチパチと燃える薪の前でみんなに説明をした。
「成程、それなら魔王に相談するといい。」
随分とまた唐突だな。と思った。
「魔王って何それ?怖くない?大丈夫何ですか?」
首を横に振って答えた。
「この世界の魔王は確かに強いが、知識のある者には優しいと聞く。だからなんとかなるだろう。」
キルはめちゃくちゃだ。いや、この世界がめちゃくちゃな可能性が有る!?
「話は変わりますけど、さっきのは魔法ですか?」
「ああ、魔法だよ。」
「それって、これですかね?」
俺は手に持ってた四字熟語事典を見せる。
「驚いた……これがあれば世界征服なんて軽々と出来るぜ。」
驚いたのはこっちだ。なんで、異世界の魔法が四字熟語なんだ……
「なあ、これ使わせて貰っても良いかな?」
キルはぱらぱらとページを捲りながら言った。
「良いですよ。」
外に出た。星が瞬き、空は宝石みたいだった。
「行くぞ!“奇々怪々’’!!!」
すると、宝石みたいな空が赤赤とし、どこかにとてつもない火の玉が落ちた。
「やはり、危険すぎる……これは返そう。俺が持つべきものでは無い。」
俺は気になった事を言った。
「あの…… 火の玉落ちたけど大丈夫ですか?あの辺り……」
落ちた火の玉は爆発して、ここから見える程燃えている。
「大丈夫だ。彼処には誰も住んじゃいないって。」
そう言う問題では無いのだ。
「明日には出発しな。お前なら行けるさ。」
キルはそう言って寝床に入った。
俺はこっそり「反面教師。」と呟いた。すると、何か現れた。
「召喚するタイミングを考えなさい!!!」
いきなり現れた謎の女にデコピンを喰らった。
やっぱり何か可笑しいよ。この世界………
翌朝、空は万里鵬翼。旅立ちにはとても似合う空だった。
「じゃあな。健闘を祈るよ。」
拳を前に突き出し、俺の拳にぶつけた。
「とりあえず四字熟語を読めば良いんですね。分かります。ではお元気で!」
こうして、俺の冒険は始まった。
最初に現れたのはやっぱりゲルみたいなモンスターだった。
俺はふっと笑って
「春夏秋冬!!」と言った。すると、ゲルみたいなモンスターの周りに小さな竜巻が出来、モンスターに襲いかかった。 モンスターは泡となって消えた。
経験値を0.334ゲットしました。
ものすごい少量の経験値……辞めたくなりますよ。
ま、良いか。先に進んだ。
次に現れたのは棍棒を持ったモンスターだった、
ここでも俺は四字熟語で華麗に回避する予定だったが、
「千載一遇の意味を答えろ!!」
ふぇぇ……いきなり何だよ!
「チャンスのこと!!」自信たっぷりに応えた!
しかし、「説明不足!!」と聞こえ、頭を棍棒で叩かれてしまった!!
「やったな~この野郎!!“門巷填隘’’!!」
叫ぶ!!そして、何処からか人みたいのが詰めかけ、モンスターを轢いた。
このモンスターも泡になった。
「千載一遇……絶好のチャンスか。」
確かに説明が不足していた様だ。このような攻撃もあるとは驚いたな。辞書は読んどかないと。
経験値を0.04…バシッ! 表示は手で叩いたら消せた。
今更ながら言っときます。これから出て来る四字熟語は多分何の役にもたちません。