アベル家の日常
ガウェインさんの養子になり、アベル家に来てから5日経った。
僕は忠誠を誓ってすぐ、エレイン様に
「ノーン・アベル」
という名前をいただいた。
何もないから、"None"ということだそうだ。
アベル家はガウェインさんとシャロットさんともう一人、息子のアグラヴェインがいる。
アグラヴェインはまだ軍人生だが、さすがガウェインさんの息子といったところだろうかスウィッツ王国の軍人生の中では3本の指に入る生徒で、正規軍に入隊する日もそう遠くないようだ。
僕はガウェインさんの愛人の息子で、母が死んでガウェインを頼りに都市に出て来たということになっている。
アグラヴェインはそんな僕にひどく同情し、
「父のせいで苦労したんだな。今日から俺とお前は兄弟だ! 何も引け目に感じることなんかないんだからな」
と必要以上に暖かく僕を迎え入れてくれた。
彼も兄弟というものに憧れを抱いていたらしく、僕が敬語を使おうとしたら、
「兄弟に敬語を使うな!」
と怒られてしまった。
年はわからなかったので、とりあえずアグラヴェインと同じ17歳にした。
スウィッツ王国では早くても十八歳、通常なら二十歳で初めて戦いに出るらしい。
ちなみにアグラヴェインは確実に十八歳から出撃するだろうと言われている。
僕は反射で魔法を撃ったといっても、その原理そのものは覚えてないので1からまた勉強しなければならない。
僕は記憶を失う前にに魔法を学んでいたのだろうが、たった四日の勉強で普通なら半年かけて学ぶ魔法学の基本は理解してしまった。
僕がとっさに撃ち込んだ"フレア"は攻撃魔法の中でも火の中位魔法だったらしく、普通の兵士なら撃つのにある程度、精神を集中させなければいけないらしい。それをあっさり撃った僕も、あっさり受け流したガウェインさんも両方バケモノらしい。
実際、魔法の威力は絶大で、現代の戦争も魔法に勝敗を左右され、接近戦だとしても肉体強化魔法の強さがものをいうらしい。
魔法学の基本はほとんどは肉体強化魔法で、効果範囲が自分から離れるほどその扱いは難しくなるらしい。
僕は肉体強化魔法を使うというより普通に体を動かそうとしたら自然と肉体強化魔法が使えた。
本当に僕は何者だったのだろうか。
「ノーン! 今日も来てあげたわよ」
振り返ると、深い金色の髪を一つにまとめあげ、青いガウンというらしいドレスを着ている少女が嬉しそうに手を振っていた。
きめ細かい白い肌、ドレスの上からでもわかる張りのある大きな胸。手を振りながらこちらに向けた笑顔はまるで女神様のようだった。
どうやらエレイン様が今日も来てくれたようだ。
エレイン様は僕がアベル家に来て次の日からずっと僕に会いに来ている。
その際に一緒に付いてくるアランさんに魔法学を教えてもらっている。
アランさんはエレイン様が僕を初めて見つけたとき、エレイン様と一緒にいた執事だ。
どうしてエレイン様のようなお姫様がわざわざ僕に会いに来てくれているかと言うと、
エレイン様はあの女の子を助けられなかったことに負い目を感じて毎日僕のところに来ていると自分で言っているが、どうも違うらしい。
アランさん曰く、姫であるエレイン様は同世代の男の子との交流が極端に少なく、初めての男友達というものを経験してみたいだけらしい。
しかし、記憶のない僕は何か面白い話ができるわけでもないのでエレイン様は僕が魔法をアランさんから学ぶのを隣で見ているだけだ。
けど、エレイン様はそれだけでも充分に楽しいらしい。
「ありがとうございますエレイン様。アランさん、今日もお願いします」
「はい。実を言うと私も早く教えて差し上げたくてうずうずしてたんですよ」
「アランったら、最近はずっとノーンの授業のこと考えているのよ。私の世話がおそろかにならないか不安だわ」
「そうなんですか。なんだかすみません」
「いえ。私がやりたくてやっているだけなので。それにエレイン様がおそろかになることなんかありませんよ。悪いですがノーン様は二の次です」
アランさんが笑いながら言った。
「いや、それくらいの方が気が楽です。あまり期待されると緊張してしまいます」
「何言ってるのよ、ノーン。あなたは天才よ。それは間違いないわ。ガウェインが認めてるんだもの」
「いえ、記憶はないだけで僕はきっと過去に魔法を使っていたんですよ。だからどうせ、どこかで急にボロが出ますよ」
「なら、行けるとこまで行ってみなさいよ。それまでアランを貸してあげるから。それに、あまりガウェインをなめない方がいいわよ。あれでもスウィッツ王国最強の男なんだから」
「そうですよノーン様。過去に魔法を使っていたとしてもあなたが天才なのは間違いありません。私でよければいつまでも付き合いますよ」
「ありがとうございます」
僕は本当に色んな人に助けられているな。
出会いに恵まれている。感謝してもしきれない。
ガウェインさんとの約束もあるし、僕はもう過去に囚われてはいけないな。
行けるとこまで行って、止まったらそのとき考えよう。
「では、今日の授業を始めましょうか」
「はい。張り切っていきましょう!」
「あなたって急に元気になるわね」
「はは。そうですか?」
今日も、僕はアランさんに魔法学を学ぶ。
幸せな日常。
だがそれも、忘れていることを忘れている間だけだった。
書いてて、
むちゃくちゃだなぁ
と自分でも感じてしまいます(笑)
何か気づきましたら、些細なことでもアドヴァイスお願い致します。