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ノーン物語〜記憶のない復讐〜  作者: さ上
第1章 軍人学校篇
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ランキングテストその①

 筆記テストはなかなか難しかった。

 それでも、満点に近い点数が取れたんじゃないかと思う。

 アランさんに教えてもらっているときに、覚えておくよう言われた場所が特にたくさん出た。

 教えてもらえてなかったら解けなかっただろう。

 アランさんのおかげだ。


 キーンコーンカーンコーン


「はい、そこまで!」


 試験監督がチャイムと同時に終了の合図を出す。

 みんな、疲れ切っているようで頭を後ろに傾げている。


 そんな中、アグラヴェインとアクトルが余裕そうにこちらにやってくる。


「どうだった、ノーン」


「うん、難しかったけど大丈夫だった。アクトルも余裕そうだな」


「お前、いきなり俺のことをバカだと思ってただろ。みんな最初はそうなんだよ。後から俺の凄さに気づくんだ」


「ハハハッ。俺もそのうちに一人だったけどな」


「ほんとそれなのよねぇ~」


 ワクナとパルテノペ―も遅れてやって来たようだ。

 二人はアクトルやアグラヴェインと違い、疲れ切っているようすだ。

 

「なんか、ノーンさんも余裕そうで落ち込んでしまいますね」


「いや、そんなことないよ。空欄は作ってないけどところどころ不安だし」


「私なんて自信のある方がところどころですよ。ノーンさんは一体誰に魔法学を教わったんですか?」


「そうよ! それを聞かないと」


 二人は僕に顔を近づけてくる。

 ダメだ。

 エレイン様以外女の子と話した経験が無いせいか、顔を近づけられると緊張して顔が赤くなってしまう。

 急に、今まで普通に話せていたことが不思議に思えてくる。


「俺も知りた~い」


 アクトルがそう言ってくれたおかげで女子たち二人が離れる。

 助かった……。

 ナイスだアクトル。


「まず、あることが理由で宮殿を訪れたんだけど、今はそれは省いていい?」


「ああ、軍隊長の話ね。わかったわ」


 軍隊長というのはガウェインさんのことだ。

 僕がガウェインさんの愛人の子、という設定が役に立った。

 みんな、そこは深く聞こうとはしない。


「そうそう、それでガウェインさんのもとに行ったら家族として僕を受け入れてくれるようになったんだ」


「で、どうしてあなたが魔法を学ぶようになったわけ?」


「ガウェインさんの息子ということで軍に入るように勧められて、新しい学年が始まるまでむこうで勉強していたんだ」


 まぁ、こんなとこだろう。

 辻褄も合っているはずだ。

 適当に考えた割にはいい感じだと思う。


「でも、宮殿に魔法教えられるような人っているもんなのか?」


 アクトルがなかなかいい質問をしてくる。

 そうだ。

 宮殿に魔法を使える人なんてほんの一部の人だけだ。

 しかも、その人たちも自分の仕事が忙しくて僕の面倒なんか見てる暇なかった。

 ただ一人を除いて。

 言ってしまうか、エレイン様やアランさんのことを。


「実は、アランさんというお姫様の執事に習っていたんだ」


「おお、アランに魔法を習っていたのか」


 アグラヴェインが懐かしそうに言う。

 アグラヴェインは平然としているが、他の三人は度肝を抜かれていた。

 

「お姫様って、あなたどんだけすごいのよ」


「いえ、それよりも一年以下の勉強でこのテストが解けたんですか?」


「お姫さまって可愛いの?」


 わかってはいたけど僕は結構特別なんだな。

 アクトルはやっぱり馬鹿だ。

 ここで神剣使いだっていうこともついでに教えたくなっちゃうけど、それはだめだな。

 自己顕示欲は自らを滅ぼす。


「まぁいいじゃないか、お前ら。今はランキングテストに集中しないと」


 そう言ってアグラヴェインは周りを指さす。

 誰も話している奴はいない。

 おのおの精神集中やウォーミングアップしている。


「それもそうね。ノーン、またテストが終わったら教えてもらうからね!」


「ああ、わかったよ」


「は~い、みんな次の会場に行くわよ~!」


 イスメネ先生が教室に入ってきた。

 移動するらしいな。


「次は何なんだ?」


「魔法量の計測だ。特別な器具が必要だから、移動するんだ」


「そうか。そういえば、どうやって測定するんだ?」


「とりあえずついて来い。測定まではかなり待つから向こうで説明してやる」


「あれってもうちょっとどうにかならないんですかね? いくらなんでも長すぎですよね」


「仕方ないっしょ。二千五百人もいるんだから」


「そうそう、日程ずらして他学年とは交わらないようにしているんだからまだマシよ」


「そうですけど、立って待つのって疲れるじゃないですか」


「あなた、魔術師とはいえ一応軍人なんだからそんなこと言わないの」


「う~ん……」


 僕たちがそんな会話をしているうちに他の連中は続々と教室から出ていく。


「言っていつも仕方ない。俺たちも会場に行くぞ」


 アグラヴェインがそう言うと、僕たちは会場に向かった。

 会場と言っても、グラウンドに器具並べられているだけのようだ。

 器具は高さが腰くらいで、幅は僕の肩幅より少し大きいくらいだ。

 三十台くらい器具があり、長蛇の列がその後ろに出来ていた。

 

 測定している人を見てみると、台の上に手を置いている。

 測定が終わると、みんなしんどそうに教室に戻っていく。


「あれで魔法量を測定できてるのか?」


「ああ、魔法量の八割を送り込んで測定するんだ」


「僕、八割なんて調整できないぞ」


「そんなのできる人なかなかいないわよ。魔法量を送っていたら、装置が八割と判断したときに勝手に止まるのよ」


「そんなこともできるのか」


 すごいものがあるものだ。


「でも、あれはなかなか酷なシステムだぜ」


「そうですよね、まだまださせるのに! 思っちゃいますよね」


「そうそう! パルテノペーちゃんもそう思うよな!」


 アクトルがうれしそうにパルテノペ―に同調する。

 

「アグラヴェインもそうなのか?」


「昔は俺もそうだったが、今は何とか満点を取れるようになってるから別に何とも思わないな」


 アグラヴェインがちょっと胸を張る。


「はいはい、天才さんは良いわねー。ノーン、こいつは特別なんだから。普通は百五十点取れたらいい方よ」


 三百点中百五十点でいい方か。

 二千五百人もいるんだ。満点というのは相当凄いことなんだろう。


「ちなみにみんなはどれくらいなんだ?」


「私は百六十くらいよ」


「私は魔法量は多くて、二百点くらいあります」


「俺は二百五十くらい!」


 ワクナが百六十で、パルテノペ―が二百、アクトルに関しては二百五十あるのか。

 この四人はみんな魔法量が多い部類に入るらしい。


「そろそろ空いてきたぞ。みんな並ぼうか」


 アグラヴェインの言う通りそろそろ人も少なくなってきたようだ。

 とりあえず、僕たちは別々の列に並ぶことにした。


 僕の列は男の教師が監督らしい。

 しばらく経つと僕の番が回ってきた。

 

「ノーン・アベルです。よろしくお願いします」


「お前が噂の編入生か、装置の使い方はわかるか?」


 やはり、教師の中でも僕は有名人らしい。


「いえ、よくわかってません」


「うむ、では軽く説明してやろう。この台の上に手を置いて攻撃魔法を発動するのと同じように魔法量を台に注ぎ込め、そうしたら台がお前の魔法量を吸収する」


 何となくだがやり方はイメージできた。


「はい、とりあえずやってみますね」


「ああ、初めてだし魔法量がなくならない限り待ってやるから安心しろ」


「ありがとうございます」


 僕はそう言うと、指示された通り、台の上に手を置いて魔法量を注ぎ込んでみる。

 イメージは攻撃魔法を撃つ感じだったよな。


「おお、いい感じだ。初めてなのにやるじゃないか」


 どうやら無事、魔法量を注ぎ込むことができているらしい。

 集中しているので返事をすることはできないが、何となくうなずいておく。


 注いでも注いでも、装置は終了を告げない。

 しばらくすると台が光を放ち始めた。


「よし、もういいぞ」


 教師はそういうが、他の人たちは装置が終了を告げている。

 教師が終了を告げるのはおかしいと思い、首席になりたい僕は教師を無視して魔法量を注ぎ続けた。

 その間、やめるように言われていたが無視してやった。

 

「おい! もういいと言っているだろ」


 流石に教師がしびれを切らし、僕の腕をつかんでやめさせようとした時だった。


 ボン!


 装置は大きな音を立てて停止してしまった。

 周りの人たちが音に驚いてこちらを見つめる。

 教師はやってしまったとこめかみを抑えている。


「お前は初めてだから仕方ないな」


「あの、何かまずかったのでしょうか?」


「なに、装置のキャパシティーを超える量をお前が入れてしまっただけだ。修理すればすぐ直る。それよりもおめでとう。満点だ」


 教師がそう言うと周囲が沸き上がる。

 周りの生徒たちは「すげぇ」や「そういえば、あいつ誰?」などと僕に注目する。

 気恥ずかしくなった僕は急いでその場から離れた。


 それにしても満点か。

 いきなりいい滑り出しだ。


 僕はそのまま、みんなが待つ教室に向かった。


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