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ノーン物語〜記憶のない復讐〜  作者: さ上
第1章 軍人学校篇
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ようこそ軍人学校へ

 夜に宮殿を出発し、軍人学校に着いたのは次の日の明け方だった。


 正直疲れた。

 馬車が激しく揺れるせいでほとんど眠ることができなった。

 

 アランさんに、昼か夜か選べるからどちらか好きなほうを選んでいいと言われ、寝ている間に勝手に着くだろうと思い夜を選んだのが間違いだった。

 

 今から学校……。

 軍人学校がどういう感じなのか知らないが、今は寝たい。

 これに関しても、ギリギリまで残っていたいと言ってかつかつのスケジュールにした僕の責任だ。


 荷物を寮に運んでもらうよう頼んだら、僕は校門とやらに来てみた。


 圧巻だ。

 幅二十メートル、高さ五メートルほどの大きな門だった。


 それもそのはず。

 ここの生徒の数は、一学年あたり二千五百人の学年が六学年ある。

 それに、アグラヴェインのような裕福な家の出身の奴らは入学する前から予備生として早くからここで暮らしているらしい。

 なので、ここは二万人近くの人がいる。

 そうなると、校門が大きくなるは必然だった。


 中は、寮エリア・学校エリアの二つに分けられている。

 とんでもなく広いらしく、アランさんに広さを数値で教えてもらったがよく話わからなかったのですぐ忘れた。


 国に一つしかない軍人学校で、運営も国が行っている。

 戦士志望のためのトレーニングルームや、魔術師志望のための魔法練習場もあるらしい。

 器具も充実していて、あのままアランさんと二人で修行するより遥かに効率よく強くなることができるだろう。


 学校エリアの入り口でアグラヴェインが待っているらしいので急いで中に入る。


 入り口に行くと、すぐアグラヴェインと合流できた。


「久しぶり、アグラヴェイン」


「ああ。久しぶりだな、ノーン。またお前に会えて嬉しいぞ」


 アグラヴェインはそう言うと僕の前に手を差し伸べた。

 別に僕と手をつないで学校を回るわけじゃない。

 握手だ、握手。

 僕はアグラヴェインの手を強く握り返した。


「じゃあ、ノーン。早速、中に入ろうか」


「ああ」


 流石、何万人もの人が通う学校だろうか。 

 廊下が宮殿の何倍も広い。

 歩いている途中、何人かの生徒とすれ違ったが、僕が編入生だと気づく者はいない。

 一学年だけでも二千五百人近くいるんだ。

 見たことのない顔の奴がいても、それほどおかしくないのだろう。


「着いたぞ、まず先生に挨拶しておこう」


 アグラヴェインが連れてきたのは教員室という部屋だった。

 部屋といっても、教員だけで千人以上いるらしく、ある棟のワンフロアをぶち抜きで作られているようだ。


「緊張するなぁ」


「心配するな。とりあえず、学園長と担任が別室で待っているからそこに行くぞ」


 いきなり学園長か。

 余計に緊張する。

 いや、それも当たり前か。

 編入なんて特例中の特例で、ガウェインさんのコネで無理やりねじ込んでくれたらしいし。


 教員室の中を適当に会釈しつつ抜けていくと一番奥に茶色の扉があった。

 その中に二人がいるのだろう。


「失礼します!」


 アグラヴェインが中に入っていったので僕もそれに続く。


「失礼します」


 中には、若い女の人と年老いた男性がいた。


「こちらが、俺たちの担任のイスメネ先生だ」


 アグラヴェインは若い女の人の方を紹介してくれた。

 それに合わせて、イスメネ先生は立ち上がって挨拶してくれる。


「私があなたの担任のイスメネです。これから一年よろしくね」


「はい。よろしくお願いします」


「なれないことも沢山あると思うけど、何でも私に聞くのよ。私は魔術師だから、主に理論魔法学担当だから」


「はい、ありがとうございます」


 理論魔法か。

 僕の今の課題は肉体強化魔法の使い方だか、理論魔法学もその課題克服に役立つだろう。


「ううんっ! アグラヴェイン君」


 もう一人の男性のほうが咳ばらいをする。

 おそらく学園長なんだが、ほったらかしにしてしまっていた。


「はい、すみません。こちらが学園長のネストール先生だ」


「よろしくね、ノーン君。ガウェインやアランから君のことはよく教えてもらった。二人とも、君を天才だって褒めていたよ」


 やはりこの人が学園長か。

 それにしてもガウェインさんはともかくアランさんのことも知っているんだな。


「はい、よろしくお願いします。ガウェインさんはともかく、アランさんのことも知っているんですね」


「もちろんさ。二人ともここの首席だったからね」


 は?

 アランさんがここの首席!?

 ガウェインさんはそうだろうと思っていたが、まさかアランさんも首席だったとは。

 どうりで強いはずだ。


「あら、二人の首席に天才と言われるだなんてノーン君ってすごいのね。流石、この学校史上初の編入生というわけね」


「いえ、そんなことありません」


「謙遜はいいの。さぁ二人は先に教室に向かってて、今日から新学期でクラスも新しくなったし、すぐに馴染めるはずよ」


「わかりました」


「はい、先生。じゃあノーン、教室に行こう。案内する」


 僕たちは二人にお礼を言って、部屋を出た。


「なぁ、アグラヴェイン。新しいクラスって言ってたけど、1クラスに何人くらいいるんだ?」


「大まかに言うと百人だな。まぁ、多少のばらつきはあるが」


「百人!? そんなにいるのか」


「当たり前だろ、二千五百人もいるんだぞ。一クラスに百人いても二十五クラスあるくらいだ」


 百人が二十五個……。

 わかってはいたがいざ聞くとすごいな。


「で、僕たちは何組なんだ?」


「七組だ。ちなみに俺も今から初めて教室に顔を出すから、誰が同じクラスかは知らない。言っておくが、クラス替えは一年に一度のイベントなんだぞ?」


 一年に一度のイベント……。

 よくわからないが、一年間一緒に勉強する仲間が変わるのは重要なことなんだろう。


「僕は友達ができればそれでいい」


「ふっ。そうだな。俺も全力でサポートしてやるよ」


「ありがとう、アグラヴェイン」


「気にするな。俺たちは兄弟じゃないか」


 兄弟か……。

 僕は妹のナタリアのことを思い出す。

 アグラヴェインは僕のことを兄弟と言って、ろくに話したこともない僕にここまでしてくれている。

 じゃあ、僕は妹のために何ができる?

 そんなのは決まっている。

 リブニアをぶっ潰す。

 僕はそのためにここに来たんだ。


「さぁ、着いたぞ。ここが俺たちの教室、七組だ」


「いよいよか。どうしようアグラヴェイン、僕緊張してきた」


「安心しろ。俺だってクラス替えは緊張する。誰と一緒のクラスか気になるからな」


「僕なんて誰も知っている人がいないんだけどね。まぁいい。中に入ろうか」


「そうだな」


 満を持して僕が扉を引く。

 初めての引き戸で、ちょっとてこずったことは内緒だ。


 中に入ると、すでに多くの生徒が中で話をしていた。

 すでに何グループかできているようだった。

 中には、知っている奴を探してキョロキョロしてるやつもいた。

 知っている奴が誰もいない僕はキョロキョロなんかする必要なく、むしろ堂々としてやった。


「おーい! アグラヴェイン、こっちこっち」


 女の子が一人、アグラヴェインに気づいたようだ。

 こちらに手を振っている。

 その子がいたグループの他の人もアグラヴェインに気づいた。


「おっ、アグラヴェインじゃんか! なんだよ、今年も同じクラスか」


「あれがワクナちゃんがよく話しているアグラヴェインくんですか。同じクラスだったんですね」


 アグラヴェインに声をかけたグループは全員で四人。

 中にはアグラヴェインと初めて会う奴らもいるようだ。


「いきなり友人に出くわしたようだ。お前を紹介したいし、一緒に来てくれ」


「邪魔じゃないか?」


「気にするな。一人俺の知らないやつもいるし、気にすることじゃないだろ」


「わかった。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」


 アグラヴェインに僕も付いて行く。

 さぁ、僕の学校生活の始まりだ。

 なんとしてでも、僕はここで一番になる。

 けど、今はその前に友達作りだ。

 果たして僕はここでうまくやっていけるだろうか。

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