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怖いことありますか

作者: 星谷菖蒲

 ピンポーン、とチャイムの音。ヘッドホンを外して耳を澄ます。カーテンを引いた部屋の中は薄暗く、パソコンの画面だけが光を放っている。しばらく間が開いて、もう一度ピンポーン、とチャイムの音。宅配サービスを頼んだ覚えはない。何か、今日届く予定の本やゲームがあっただろうか。ピンポーン。宗教勧誘なら居留守を使おう。のろのろと腰を上げて、玄関に向かった。ピンポーン。しつこい奴だと思いながら、玄関のスコープを覗く。背の低い人物が俯いているのか、黒い頭だけが見える。少し目をずらすと、かろうじてスーツを着ていることがわかった。セールスも居留守に限る。ピンポーン。戻ろうとした時、ふと、外で何か呟いているのが聞こえた。ぶつぶつ、ぶつぶつと。気味が悪かったが、気にもなった。ドアに耳を押し当てて息を潜める。「…………ありますか」ピンポーン。呟きと、チャイムを交互に繰り返しているようだ。「……ことありますか」ピンポーン。もう一声。目を閉じた時、まるで耳元で囁いたかのように言葉がはっきりと聞き取れた。「怖いことありますか」……怖いこと? ドアから離れる。チャイムが鳴りやんだ代わりに、呟きが繰り返し聞こえる。「怖いことありますか」「怖いことありますか」「怖いことありますか」まるで壊れたレコーダーだ。いよいよ気味が悪くなって玄関から離れる。けれど声は次第に大きくなっていく。「怖いことありますか」一体何なんだ。警察を呼ぼうか考えて、面倒くささが勝る。注意して立ち去らなければ警察を呼ぼう。「怖いことありますか」チェーンをかけたまま、鍵を開ける。息を吸って、ゆっくりとドアを開ける。「こういうの、やめてください」目を走らせるが、誰の姿もない。呟きも聞こえない。さては逃げたか。ドアを閉めて鍵をかけると、息を吐いた。「怖いことありますか」耳元で、声が。

久しぶりの「てのひら怪談」です。

文字数は800字以内。

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