ルト国の歩道、一大イベント最終日
(?誤記等御容赦?)
【車人】のイメージは、國民によく知られたところのものである
改まった席では、あたかも人種問題や同和問題であるかのように憚られているようだが
それは公然の秘密となっていた
電波メディアが自主規制しているだけで
雑誌は自粛せず、ただ‥‥
写真だけ(画像のネット拡散)のはずが早々に付録のロムがアップされ
ニューブチュウでは天文学的数字を叩き出していた
そうであっても、合成だろうと半信半疑の者も居た
併し乍ら、“車人がくる”ということは大大的に告知されていたのであり
他府県からの徹夜組まで出た
それでも‥‥これは頑強に放送キーは動かなかったのである
孰れにせよ、ポスターに車人の文字を見出したとき、誰しも最初は目を疑ったろう
1輪車人の人橋渡りショーという“異常に豪華”な出し物となった此の日の為に
それはもう家族連れ、そして学生グループ、着飾ったギャル、
外回りか昼休みは過ぎているのに抜け出してきたかスーツ姿も少なくないといった…
国内では腫物に触れる“車人”とあっては警官も出ないが
警備会社のグレーの制服が、此れも横一に並んで封鎖しており、至ってものものしい
外国人プレスらしきもちらほら
いっぽう、この辺りに大規模小売はなく、周囲の立体駐車場は当然満車で
ビル地下はビジネス目的だが一部開放されており、1km程離れた屋外駐車場では広いが
此方に警官が応援他署より出張っていた
半巨人たちは、道路寄りに陣取り、既に体勢を取っていた、昨日よりも列が長く、もはや6、70人くらいは居る
こうなるとスタート地点とゴールを一ヶ所で一望することは難しいが…
それだけ歩道の収容人数が増えるわけで、視よ、デモのごとき…此の、大群衆を
前座のチアダンスの露出多め(金を掛けているのが仄見え、実は並々ならぬ力の入ったイベントなのでないかと疑わせる、バックは何処なのか)、
併し、既に概ねそわそわして私語多しで…
「では皆さま…次なるは御待ちかね、
北コーナーより立ち出でまするはぁー
幻のルト族‥‥
車 じ ー ん!」
「じーん」がビル街に谺する、静まり返っている、そしてうぉーという津波のような歓声があがる
溜めのある この反応
いつの間にみなフジヤの昭和ランチよろしく目の丸の小旗を振っている、
イナゴの群れのごとき目の丸の嵐である、メガホンを叩く者、ジャンプする者、ジェット風船を飛ばす者、
フライヤーには禁止事項のはずだが…
背後から会場配布する青コスチュームも多い、主催者側の動員も相当だろう
「拍手で御迎えください、拍手でぇー」と男声
車人が小さく視えた、スポット照明こそ2つで夕暮れの街燈みたくだが、「車人」と大書された
横断幕のゲートにしてあるスタート付近に、工事用のバルーン投光器が置かれ遠目に眩しい、
車人と思しき大きな影が滲んでみえる
‥‥
やはりナマでみると車人は大きい、あれぐらいだと成人しているのだろうか、半巨人たちこそ普通サイズに視える
車人は無骨で、その肉体のシルエットをみれば、軽く手を挙げることも不可能なのがわかる 喋れるのだろうか
そして何時始まるのか間延びして
会場がザワついている、スタート地点はやや熱いのだろう、周到に団扇まで準備なのかして
そのパタパタに夜風の風車屋を連想させられた
車人は‥‥これはもう人間の動きではないが‥‥恐らくの処、準備体操で鈍りを解しているのだろうと、何となく判りはする
位置についた
会場の動きがピタリと止まる、
二、三人腰をかがめて小走り、小走り
「はい、南側、すいませーん、ロープ越えないで‥‥超えないで‥‥ちょ、警備行ってー」
(メインのアナウンスで此れを言う、走りこんだ客が人垣の陰から赤い顔でキョロついている)
車人が構えをやめる
客席がどょ~んと弛緩する
ふー、と声が出る
すかさず、
「始めていいですね‥‥はい、行きます、行きますよぉー」
‥‥
‥‥
‥‥
「ではーーーー、車 ジ ー ン どうぞーーーー」
(バーンと、運動会のピストルの白煙)
ダーと走り出した、というか回転しはじめた、
だ、だ、だだだだ
背のパネルマットに車人の足があたる音か、隣と密着する半巨人達の肉のきしむ音か、異様な連続音をたてて
50人の背中を、大きな円い物体が、一気に、高速回転しながら猛然と駆け抜ける
だだだだ、だっ、だっ
後半勢い余って小さくバウンドする、もうポーン、ポーンと跳び弾んでいる
音は聴こえているのだが
音と眼前の絵が分離して
何か‥‥時間の淀んだ、無音の白い世界の、死後を描く映像で、幻が無重力遊泳しているようだ
息を殺し、唾を呑んで固まっている
何これ、つぶやく
勢い余って最後は飛び出した、人垣が大きく割れて後退‥‥陸橋の下、車道の左折の辺り、
どうなったんだろう、視えないな
はぁ~
あっけなかった、だが体感は長く長く感じられた、ゆっくりゆっくり動いて視えた
ただ‥‥
確かに視た、皆が‥‥皆と目撃証人になった
そういえば最初は写メを構えだしたのもいた
けど速すぎて収まらない、マホの手を横に投げ出して
大群衆の前で、あれは‥‥
ニンゲンじゃない、でも生き物だ、生きて走ってた
ああそうだ‥‥ラストスパートは滞空時間のほうが長かったのでないか?
よく高速側の一般道を交通規制できたな、
群衆は更に増えて向こうの二車線いっぱい迄食み出していたのである
「ありがとうございましたー、ありがとうございましたー、
車人本人に代わりまして、主催者側よりオン礼申しあげます、ありがとうございましたぁーッ」
「シャ…」
「シャ、ジ、ン」「シャ、ジ、ン」「シャ! ジ! ン!」「シャ! ジ! ン!」
一部の若い奴が叫びだしたみたくだが‥‥車人コールが、いま大合唱になり始めていた
ビルの谷間の黒い大群衆が大きく揺れうねっていた
‥‥
周囲のビルの多く窓という窓から人が首を出して手を振ったり、又入って移動する影が視えている
だが‥‥倶に“感動”を共有した人々は
気安く話かけ…
いまやサプライズゲストがくるという実しやかな噂が、専らとなって居たのである
横断する通行人に開けたギャラリーの切れ目から視える幹線道路、
車人がリムジンバス的な大きな車体に後ろからラダーレールをあがったのが視えた
走って追いかける者たち‥‥やにわにバイクに跨る者もいて、警備が制止に入った
向こうでは色とりどりの風船が放たれた
(以上)
ルポ: 王立テル騎士団ナスセンター山之内部隊チーフ 曾根崎三城夫
‥‥ ‥‥
ルト国の橋(領事館前@太坂) 前編完結(苦笑)
「通達が届いております…読みあげさせます」
「映せ」
「紙媒体です、正式ですから」
「ちッ」
「ぁ、スキャンしま…」
「後でいい」
「…デゴス様の御署名です」
「まさか」
「で、では早速」
「早くしろ!」
「像出ます」
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タルトムーセン(新イケニエ社会計画) ~ 利便性増大に伴う新たな脅威生産 ~
1、少数派を呪詛する為に世界は造られた
2、全体とは少数犠牲である
3、全体とは細部の(差益細部への)目隠しである
4、不完全性が、再生産のダイナミズムを保証する
5、完全へ移行するには、完全分解しなければならない
6、再度で個別を定着させるには中全体を形成する必要がある(事実上実施困難)
7、全体とは、そして多数とは少数犠牲への口実である(多数負担自体にも有効)
8、支配少数は少数犠牲世界を物質運用する糧は、多数が担う(2少数が依存的)
9、支配少数を祝福するエネ原資は少数(集散大少数)の絶望と、その絶叫である
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「何だあ?これは…」
「これは何なので」
「獣の数字…耳目と口の猿封じ」
「は?」
「違うな、デゴス様でないな」
「え?」
「こんなもの生まれる前から知っておろうが
目論んだなロフォカめ…第1衛星のイントラに繋げ、
死の印を送ってやれ」
「アク拒否」
「おう、久しぶりよの」
「ロフォカ…
侵入して無事に」
「死の印なら只今聴き届けた」「何用ッ」
‥‥
本編完結(苦笑)
(?誤記等御容赦?)