第42話
遅れまくってすいません。レインボーシックスが悪いんです。
ただ、1つ言わせてください。
どうしてこうなった。
「あ、クランホームはどちらになるか教えていただいてもよろしいですか?」
一通りの登録を終えた受付嬢がレイガに訊く。
クランホーム……クランの本拠地であり、なんらかの用事があった際に連絡が来る場所である。
「あー、そのことなんだけど……まだ決まってないから、ギルドから不動産屋かなんか斡旋してもらえる?」
「でしたら……商人ギルドの方へ紹介状を書かせていただきます。少々お待ちください」
「ありがとう。
じゃあ、二階に居るから教えてくれるかな」
「かしこまりました」
レイガはそう伝えると受付から離れ、階段を登る。
そして、見えたのは絡むチャラ男と絡まれるハクア達。しかし、普通(冒険者の普通であって一般の普通ではない)の絡み方ではない。
因みに冒険者の絡み方でよくあるのは「なに見てんだ、ゴラ!」、「いい女連れてんじゃねぇか、俺達にも貸せよ」、「イヒーイヒヒ」である。まあ、これは女連れの男に言う言葉であって、女性に向けては言われていない。
ならば女性へはどんなものか。「俺達といいことしようぜ」である。捻りもくそもない。
では、このチャラ男はどうか。
「まさに君たちは咲き乱れる華のようだ!」
チャラい。
なんだ、咲き乱れる華とは。しかもこの後もつらつらとロマンティックな、聞き方によってはアホらしいセリフを重ねていく。
行きたくねぇー。そんな言葉をレイガはなんとか飲み下す。
ああいう男は関わると碌なことがない。自意識過剰の英雄気取り。脳裏につい昨日別れたばかりの一人の男が浮かぶ。と、同時に激しい殺意を覚える。
殺せ、滅ぼせ、消せ。龍の残虐性がその殺意に呼応するようにそう訴える。
落ち着け。殺るのは今じゃない。アイツが調子に乗ったらだ。
レイガは自身にそう言い聞かせる。
1つ、息を吐くとレイガはゆっくりとハクア達のもとへと歩き始めた。ただやはりその足取りは重い。
そして、レイガはハクア達に声を掛ける。
「おまたせ。
取り敢えず終わったから、もう少ししたら登録しにいこう」
「あ、ヴァレンシュタインさん。わかりました」
「少し待ってないといけない用事があるから、ここに居ようか。ということなんで、どっか言ってもらえます?」
レイガは詩音に告げると、未だ居座るチャラ男に言う。
「僕がどこに居ても君には関係ないよ、少年?」
「わかってねぇみたいだから言ってやろうか?邪魔だから消えろって言ってんだよ」
「なあ、君。口のきき方には気を付けたほうがいい。特に冒険者の世界ではね。それに、彼女達は僕と話しているんだ。邪魔をしないでくれたまえ」
「ふーん、で?」
「わかってないようだね。僕はAランククラン【黄金の鐘】副クランマスター、Aランク冒険者のリーフェン・エルメス。本来なら君のような底辺が言葉を交わすことなどない存在だ」
「ふーん、で?
だからなに?要するに自分はすごいから敬え、口説くのを邪魔するなってこと?」
レイガはチャラ男の言葉に適当に答える。
そして、チャラ男を見据えると口を開く。
「ところで、さっき俺の事を底辺だのと罵倒していたけど……宣戦布告と受け取ってもいいのか?」
「そう、受け取りたければ受け取るといいよ。まあ、なにもできないと思うけど」
「そうか。それはよかった。言質はとったぞ。
みんなも!聞いたな!」
レイガは周りにいる冒険者たちに訊く。
それに対して冒険者たちは頷き、ああと声をあげる。その様子を余裕の表情で見るリーフェン。
それらを確認したレイガは声を上げた。
「クラン戦争を始めるぞ!」
一瞬の静寂。
「「「うぉおおおおおお!!!!!」」」
それを破るように男達の歓声がギルドを駆け巡った。
「さて、リーフェンさん。これで逃げ場は無しだ」
「ふ、ふふふ。アハハハ!!君は何を言ってるんだ?クラン戦争?よりにもよって僕達と?いいよ、やろうか!それで、なにを賭ける?」
「お互いのクランの全財産とプライド」
「それじゃ、割に合わないよ。追加だ。君たちが負けたら、そうだね……彼女達を貰おうか」
リーフェンは詩音達を指差してレイガに告げる。
だが、その言葉にレイガは怒りを覚えた。
「貰う?彼女たちは物じゃねぇぞ」
「なら、やめるかい?それでも構わないけど、その場合は……君にはそこに這いつくばってもらうよ」
「やめるわけないだろ。
いいよ、その条件でやってやる。じゃあ、行こうか。ギルドに報告だ」
レイガはそう言い、階段を降りていく。
クラン戦争。その開始宣言をギルドにするために。




