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第38話

「ん?誰か寄ってきてるな」


 レイガ達は、帝都を望める森から馬車に乗って帝都へと至る街道を進んでいた。

 その時、レイガ……正確にはレイガとハクアは近寄ってくる気配を感じた。同時に常人離れした聴覚によって金属製の鎧の音も聞こえる。


「ミスリルと魔鋼の合金……それと、関節部にワイバーンの革。それと一人だけミスリルにオリハルコンコーティング、関節部に水竜の革か」

「結構いい装備を使ってるね」

「それにしてもそれが合計で三人か……あとは…剣が聖鋼製。それと一人だけアダマンタイト製か。何者だ?」

「可能性としては帝国近衛騎士団……通称【太陽の騎士団】…」

「それか……帝国裏騎士団【月夜の騎士団】……は無いか」


 レイガとハクアは二人、装備の質から近寄ってくる者の素性を予想する。また、二人が上げた騎士団はどちらも帝国が誇る最高の騎士団であり、後者はともかくとして前者【太陽の騎士団】はその精強さと気高さによって各国に知られている。


「さて……仮に【太陽の騎士団】だったとして何で来たのかだよな」

「不明…ただ、可能性としては私達が転移してきたことが考えられる」

「偶然ってのもあるな」

「あとは……何らかの問題があって警邏中か……あ、」

「どうした?」


 考えを言いながら動きがとまったハクアにレイガは声をかける。


「ワインの品評会…」

「なにそれ」


 ハクアの言葉にレイガは若干被せ気味に言う。


「通称【葡萄酒の王撰ワイン・オブ・ヴェリタス】……ワイン大国ヴェリタスで三年に一度行われる品評会……各国から様々なワインが集まり同時に遍歴の騎士や高名な冒険者たちによる競技会も行われる……」

「なにそれ、遍歴の騎士ってどんなウィッ〇ャーだよ」


 ハクアの説明を聞いたレイガはとあるゲームを思いだし、おもわず呟く。しかし、忘れてはいないだろうか。ここには二人だけではなく、詩音達も居るのだ。

 もはや、隠せないほどのミスをやらかしたとはいえ、まだ、ぎりぎり、ごまかせるレベルだった。だが、これ以上はさすがにキツいだろう。

 まあ、今回でどうなるということはないだろう。幸い、彼女達は〇ィッチャーがなんなのか、わからないようであるし。


「まあ……いいさ。

 とりあえず来るのを待ってみよう。なんかしてくるようならその時は…」

「その時は?」

「龍の力……とことん味わってもらおうじゃないの」

「訂正、レイガはただの龍じゃなくて龍神」

「ちょ、なにばらしてんのぉ!?一応龍人って設定だから!」

「設定……」


 ずいぶんと物騒なことを言ったと思ったら、ハクアがツッコミを入れる。さらに設定とか言ってる時点でレイガは本当にダメかもしれない。まあ、龍神だと知られても困ったことになるのはこの世界の住人からのアプローチであるため、まだ平気だろう。


 そして……何者かとの邂逅は近い。


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