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第32話

 〓side of irregular's〓


「先輩……この後どうするんですか?」


 温泉に浸かりながらほのかが詩音に訊いた。その声は少し震えている。


「そうね……取り敢えず街まで行かないとなんもできない訳だけど私たちだけで行けるのかってところね、問題は」


 詩音は浴槽の中で湯を肩に掛けながら答える。


「あの連中がどの程度の強さなのか分からないけど…あれが普通の強さだとしたら私たちで行くのは無理だわ」

「なら、ヴァレンシュタインさんに連れてって貰うのは…」

「それも考えてはいるけれど…彼がどんな人物なのかわからない以上危険にもなるわ。……少なくとも連中を圧倒できる力を持っているんだから…御巫さん、貴女から見て彼の実力はどの程度だと思う?」


 詩音は浴槽の縁に腰掛けている咲耶に問う。


「……わかりません。でも…少なくとも私の眼では捉えられませんでした」


 咲耶の眼のことは勇者(笑)以外は全員が知っている。現在の効果も。


「それに……纏っている武具もよくわかりませんでした」

「【武具鑑定・神】でも?それって、つまり……」

「はい、最低でも神級武具以上ってことです」


【武具鑑定・神】とは咲耶が加護によって得たスキルであり、神級までの武具ならなんでも鑑定できるというものである。もちろん、彼女たちは等級のことは分かっている。支援品その5のガイドブックに書いてあったからだ。蛮勇者は彼女たちが情報収集をしている間ずっとニヤニヤしたりまったくなっていない構えや太刀筋で剣を振り回していた。


「問題はそれよりも魔術についてよ」


 いつの間にかサウナから出てきたシルヴィアがシャワーで汗を流し、浴槽に入りながら言った。


「あの《冥界への門》って魔術。

 一瞬だけど門の向こう側が見えたわ……空間に作用するなんて一体どれだけ力を持っていればできるっていうの?」


「そうね……まあ、話を戻しましょうか。彼の危険度について」


 詩音は一人一人の顔を見てから口を開いた。



 ※以下ほぼ会議&会話の為名前をつけます


 詩音(以下、詩)「まず、戦闘力の高さと装備のレベル。そして人を殺しても平然と、それどころか来るまでにも何人か殺しているような言い方だったわ。それに頭もよく回る…。………こう考えるとかなり危険人物ね…」

 咲耶(以下、咲)「……!……まさかあの整った顔立ちや物腰のやわらかさを利用して悪事を繰り返して……」

 ほのか(以下、ほ)「……咲耶が男の人を褒めるなんて……惚れたの?」

 シルヴィア(以下、シ)「お腹減ったわ…」

 詩「あのね……御巫さん。べつにそんな事はしてないと思うわよ?なんか悪事をするなら回りくどいことをしなくても強力な力を持つと思われる装備を使えばいいんだから」

 咲「そうですね…」

 ほ「それで結局惚れちゃったの?」

 咲「惚れてない!……まあ他よりはマシ程度だよ」

 ほ「それ、東桐くんのこと訊いたときも同じこと言ってたよね…」

 咲「あ、あれは…同年代で私とマトモに打ち合えたからで…」

 詩「話がずれてるわよ……それで、結局のところ危険かどうかなんてわからないわよね。あれだけ言っててなんだけど…身を守るための殺しこっちじゃ普通らしいし…第一、私たちだって目的のためにその覚悟をしたわ」

 咲「すいません……では、どうするのですか?」

 詩「まだ…わからないって言いたいところだけどそれは無理ね」

 ほ「ではやっぱり彼に街まで連れていってもらうんですか?」

 詩「ええ…ただ、問題が1つ」

 咲「報酬ですか?」

 詩「ええ。私たちの所持金は一人銀貨五枚5000CRで日本円にして50000円。五人分全て支払ったとして25000CRで250000円ほど」

 ほ「街までの案内なら妥当……というか十分すぎると思うんですけど」

 詩「そう思うかもしれないけどね……私達は命を助けられてさらに現在保護もされている。

 ガイドブックによれば盗賊の持ち物は討伐者のものになるのよ。それは人でもね。

 つまり、彼はあのまま傍観して奴等のアジトに入って私たちが何らかの手段で奴隷化された後を襲撃すれば私たちも手に入っていたのよ。その奴隷は違法なら解放されるけど私たちは身分はなにもないから結局奴隷。それは売るもそのまま自分にするのも自由。それで若い女奴隷は高値で取引されるわ。もしかすれば25000CRを軽く越える値で」

 詩「それに…ガイドブックにも書いてあったでしょ?冒険者のランク別の報酬金額が」

 咲「あの強さでいけばそこそこのランクでしょうから…Bランクと仮定しても最低で3万」

 詩「どちらにせよ、彼からしたら損をするってわけ。それにさっきは最大数を言ったけど…生活を始めるためにはどうしてもお金は要るから渡せる額は少なくなる」

 ほ「でも…それなら少し待ってもらって…冒険者として活動して返済というのはどうしでしょう?ガイドブックによると冒険者はその時のランクで開始ランクを決めるそうですし……」

 咲「ほのか……それは多分無理よ。

 CランクとBランクの実力には大きな隔たりがある。私たちはCランクでも底辺だし…何より1ランク違うだけで報酬も違う。確かにCランクからは良い報酬と言ってもそれはアレにも書いてあった通りCランク上位の討伐クエストの報酬。それでも15000CR程度…それにそのクエストを受けたとしても私達が死ぬかもしれない」

 詩「結局、彼は損するってことよ…」

 咲「まあ…少しの損は目を瞑るかもしれないけど……その場合キレイな体でいられるかはわからないわ」

 ほ「………」

 詩「まあ、ダメでもともと。

 一応、話だけはしてみましょう」









 ◇◇◇◇◇

 〓side of Wallenstein〓


 少女達が会話をしている時……


 レイガは三秒だけその場から消えた。



 向かったさきはとある鍛冶場。


 そこで彼は……真理級武具【仇桜】の改造もとい打ち直しを始めた。

 何故か、それは自らと共に成長すると言ってもその恩恵は小さいからである。それと、先日某鍛冶神から「打ち直したほうがいいよ」と言われたからだったりする。


 詳しい過程は省くが想像創造した数多の金属や材料、成長を続ける自らの素材を使用し彼は造り上げた。まあ、仇桜を溶かしてインゴットにして他の物も使って打っただけだ。

 超越級の数段階上の真理級。

 それのさらに数段階上の等級【夢想級】の装備を。


 刃の長さは78.3㎝、反りは浅めで打刀仕様。

 刃紋は乱れ刃で荒々しくかつ美しく、一番近いのは尖り互の目(三本杉)だろうか。また、鋩子が乱れ込んでいる。

 刀身は金属的な黒でチープな感じはせず、刃は銀に耀いている。

 柄巻はレイガの龍髭を使用しているため黒で鍔は若干黒み掛かった銀(流石異世界な色)で透かし彫りを使い装飾されている。

 銘は【佳宵月魄(かしょうげっぱく)】。


 それと同時に各装備も新調している。

 形は細部を除き変わらず、固有名が少し変わった程度である。

 一応書き出すと……


【深淵の外套】→【深淵神の外套・零】

【龍神の革鎧】→【龍皇神の革鎧・零】

【龍翔の軍靴】→【龍翔の軍靴・零】

【龍雅】→【魂魄剥離】


 この程度だ。


 それと【龍皇神の革鎧・零】だが、金属製の胸と腹の一部を守る鎧(ハーフプレートメイル又はブレストプレート)と言っても過言ではないほどに金属が使用されている。まあ、重量はそこまで無いが。







 そして戻ってきて数分後。



「あ、出てきた…」


 レイガが椅子に座って本を読んでいると、ようやく四人が浴室から出てきた。















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