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第31話

「こんにちわ、取り合えず安全なので、この服を着て、よければ風呂に入ってください」


 そして、レイガは優しく彼女たちに声を掛けた。


「……あなたは?」


 レイガに渡された大きめのタオルで体を隠しながら、詩音が問い掛ける。どうやら、レイガを警戒しているようだが、こんな事があり、さらに盗賊たちを易々と倒した男なのだからそれも当然だろう。


「えっとー、冒険者なんだけど……冒険者って言ってわかるかな?」

「ええ」


 レイガは異世界出身の彼女達が冒険者という職業または身分について分かるか考えながら答える。

 しかし、その心配は無用だったようだ。


「でも、冒険者って一般的なものでしょう?なのに何で私たちに分かるかどうか聞いたの?」


 だが、別の心配をすることとなった。

 レイガの言い方から詩音はおかしな点に気付いたようだ。流石に地球で老獪きわまる者たちを相手にしてきただけはある。


「たまに、冒険者を知らない人達が居るんだよ。

 すごい田舎から出てきた人だったり、冒険者の事をべつの名前で呼ぶ集落出身だったりとか。あとは……お伽噺の異世界人の勇者とかかな。黒髪黒目の…ね」


 レイガは首筋を掻きながら詩音の質問に答える。


「そうなの…。

 あの…自己紹介をしてませんでしたね。私は…皇城詩音……シオン・スメラギです」


 回答に納得したのか、詩音はレイガに自己紹介する。


「私は…御巫咲耶」

「佐倉ほのか…です」

「シルヴィア・シー・アレグリアよ」


 詩音に続いて三人もレイガに名前を告げる。

 レイガからすれば全員の名前を知っていたのだが、それは言ってはいけない。

 実際、レイガは自分のことを彼女達が自力で気付くならまだしも、自分から告げようなどと思ってはいないのだから。理由は地球に未練は無いというのが大きい。


「あ、俺はレイガ・T・ヴァレンシュタイン。

 さっき言った通り、冒険者をやってる」


「「「レイガ?」」」

「?どうかした?」


 レイガの名前を聞いて全員が反応する。

 この時、本人は平静を装っているが内心「やっべ、バレた?」などとビクビクしている。


「いえ、私たちの探し人と同じ名前だったので」

「そうなんだ。取り合えずお風呂でも入ったら?傷も治したし、汚れも落としたけど、気持ち悪さは拭えないと思うから」


 レイガは然り気無く話題を逸らす。


「あ、でもその前に答えてね。

 君たちは異世界出身…だよね?」


 そして、分かりきっていることを訊く。その意図は彼女たちがなぜここに居るのか訊くための布石だ。


「……なぜ、そう思うのですか?」

「さっき、異世界人の勇者について話したとき一瞬表情が変わったし、『そうなの』って話し方が変わったからね」


 レイガは詩音の問いに答える。


「そんなことで……いえ、でも。……ええ、私たちは異世界人よ」


 詩音は何かを考え、逡巡しながらも答えた。


「そうか。異世界人が何でこんなところに居るのか聞きたいところだけど…今は良いや。お風呂に入ってきなよ。安全だからさ。もし心配なら交代でもいいよ」


 レイガは頷きながら、詩音達に風呂にはいるように促す。

 どんだけ、風呂に入れたいんだと思うかもしれないがあの風呂がレイガ拘りのものだとしたら納得するだろう。

 湯はとあるNPO法人が定めた名湯百選が全て選べ、さらに景色も変えられるというものだ。たかが簡易式の風呂でここまでやるのだ。頻りに風呂を勧めるのも理解できるだろう。


「では…戴きます」


 詩音たちは立ち上がると、浴室へと向かう。


「あ、タオルは有るけど着替えが無いんだよね。三分後には中に送るから」


 レイガは彼女たちにそう告げると、インベントリから最高級の布を取り出し女性服を創り始めた。

 女性服と言ってもレイガは大して知識もないのでどうしても単純になってしまう。

 結局、完成したのはシャツとスカートというなんとも言えない無難を求めたものとなった。それでも少しは色を変えるなど努力したことは窺える。某剣の申し子が某アカ〇みたいな色になっているが気にしないでほしい…















 数十分後



 レイガは竈を創り、網を乗せ分厚く切られた【迅雷牛】というモンスターの肉を焼いていた。この【迅雷牛】の肉は肉自体にある風味が強いため、調味料を必要としない。しかし、旨いのだが流通量が少なく、王族や高位の貴族も一年に五回食べられればいい方である。過去に、貴族が冒険者からこの牛の肉を奪ったという逸話まで残されている。それほどまでの肉をレイガは惜しげもなく使う。


「肉肉肉肉」

「グゥルルゥ」


 レイガはいつの間にか出していたメイガと共に肉が焼ける様子を食い入るように見つめる。


「肉肉肉」

「グゥルルゥグゥルルゥ」

「と、その前に……」


 レイガは肉を見詰めるのを一度止めると、数メートル先に転がっている咲耶の使っていた刀の所へ歩みを進め、その刀を手に取る。


「刃こぼれ多数、使用金属はそこそこ。特異級Cランク中位といったところかな。属性付与すれば地球の南総里見八犬伝で有名な村雨と同程度か……回収したらしいけど」


 刀の細部を見ながらレイガは呟く。

 因みに回収というのは実在した村雨(謎の異世界金属で打たれており、水属性つまり南総里見八犬伝に描かれるものと同じ)を神々が「やっべ、あんなとこに魔剣あんだけどwつか、物語にされてるw」みたいなのりであってはいけない村雨をパクってきたことを指す。


「あ、死体もどうにかしないと……頭だけとってあとは燃やそうかな。そうしよう、《空間斬》《蒼焔》」


 レイガは盗賊達の頭を魔法で切り取り、燃やす。切り取り方がどう考えてもやりすぎだが、気にしないことにする。


「収納っと。これでいいかな」


 レイガはそう言いつつ、もう一度手に持った刀を眺める。

 そして、左手に一振りの刀を出現させる。


「刀がこの状況だから新しいのを渡したほうがいいと思うんだけど……こいつしか無いからなぁ」


 左手に出した白い柄の刀を一瞥し呟く。


「【呪刀・雪月花】……完全にやらかした刀…超越級。これを渡すとなるとなぁ、他のみんなにも同じクラスのを渡さなきゃいけなくなるし……別に良いんだけど…」


 そう言いつつ、レイガは寝ている勇者(笑)を一瞥する。


「アイツには渡せないんだよなぁ。絶対調子に乗るし【蛮勇者】なんてジョブ持ってるし。まず、アイツになんて俺の造った装備を使わせたくない。……よし、アイツが寝てる間にみんなに装備を渡そう」


 レイガは言いつつ、机を創製し、【呪刀・雪月花】を置く。そして、次いで机の上に幾つもの装備を出していく。どれも華美ではないが美しくそれでいて力強さを感じさせるものだ。


「【神霊剣・世界を照す光(ラディウス)】、【神聖杖・女神の祝福ブレッシングヴィーナス】、【神杖・女神の涙(ヴィーナスティア)】、【闇夜を揺蕩う月華シリーズ】、【魔の神髄シリーズ】、【聖なる神シリーズ】、【魔の深淵シリーズ】」


 レイガは取り出したそれぞれに所有者登録を施していく。

【呪刀・雪月花】と【闇夜を揺蕩う月華シリーズ】は咲耶、【神霊剣ラディウス】と【魔の神髄シリーズ】は詩音、【神聖杖ブレッシングヴィーナス】と【聖なる神シリーズ】はほのか、【神杖ヴィーナスティア】と【魔の深淵シリーズ】はシルヴィアのものとなる。どれも超越級装備である。因みに現在のレイガの装備の等級は真理級という超越級よりも数段階上のモノとなっている。


 ここで装備の詳細説明をしよう。

 まずは【呪刀・雪月花】から。

 これはこの中で一番弱いものと思われそうだが実は最強クラスである。そして、特性は【氷属性魔術の強化】と【奥義・雪月花】の習得(レイガも使える上にレイガからしたら奥義では無い)、そして暗黒魔術死霊魔術呪術合成複合魔術【月の狂呪】による敵の弱体化(呪い付与)である。最後の特性は相手に傷をつければつけるほど効果が高く、一つでも傷をつければ最高でも30分後に相手を死なせるという凶悪なものだ。まあ、この凶悪な効果はレイガがどっかの村雨を参考にしてお遊びで付けたものでしかない。その証拠に魔法ではなく魔術を使用してある上にどっかの村雨よりも弱体化してある。因みに魔法でやっていた場合はどっかの村雨のように呪が心臓に届いたりする間もなく死亡する。勿論、この刀は取り扱い注意だ。

 次は【闇夜を揺蕩う月華シリーズ】。

 これは上半身の主要な部分の鎧と籠手、そしてブーツがセットになったモノだ。黒のベースカラーに銀色のアクセントがいい感じに効いている。防御力は半端ないの一言に尽きる。

 次に【神霊剣ラディウス】。

 白銀の刀身のレイピアだ。特性は【魔術の強化】と【精霊との共鳴率上昇】だ。

 次は【魔の神髄シリーズ】。

 これは黒を基調としたマントと、神霊銀で造られたアクセサリー等のセットだ。魔術の強化もできる装備である。

 次は【神聖杖ブレッシングヴィーナス】。

 回復や障壁魔術の効果を大幅に上昇させる杖。特性として【聖域魔術】の習得も含まれる。

 次は【聖なる神シリーズ】。

 白のローブ等のセット。回復魔術などの効果を上昇させる。

 次に【神杖ヴィーナスティア】。

 特性は【魔術強化】と【破壊魔術】の習得。

 最後に【魔の深淵シリーズ】。

 濃紺のローブとオリハルコンベースのアクセサリーなどのセット。

 魔術の強化もできる。


 こんな具合である。


「あ、飯」


 レイガは一通り検分を終えると、竈のほうへ向かう。


「おお、いい感じに焼けてんな」


 トングで肉を皿に乗せ、メイガには肉を食べさせる。



 厚さ5cmほどの肉を30枚ほど食べ、メイガは満足したのか、


「グル」


 と一声鳴く。レイガはそれを聞き、異空間へとメイガを戻し、呟いた。


「女の風呂って長いなぁ」






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