第30話
過去最長。
空白入れて15000字です!
〓side of irregular's〓
とある森。
ある日、そこに突然閃光が迸った。
そして、閃光が治まったとき、そこには5人の少年たちが居た。
「……ここが…でも本当に?」
艶やかな美しい黒髪を腰の辺りまで伸ばした少女──皇城詩音が周りを見渡して呟く。
丁度その時、上空を一体のペガサスが通り掛かる。
「……ペガサス…よね。それに……」
再び彼女は呟き、何かを考え込む。
「先輩」
そんな彼女に黒髪をポニーテールにした一人の少女──御巫咲耶が声を掛ける。その横には腰の辺りまである烏の濡羽色の髪を首の辺りで結んだ少女──佐倉ほのかがいる。
「なにかしら、御巫さん」
「ここに居るってことは先輩も手紙を貰ったってことですよね?」
「ええ。神を名乗る怪人物からね」
「たしかに神を名乗るのは不謹慎です」
「さすがに神社の娘からしたら見過ごせないのね。でも、御巫さんもそうだったわね」
「はい。
それで、ここは本当に異世界だと思いますか?あの手紙に特殊な睡眠薬でも仕込まれて寝てる間に拉致されたということも考えられますし、それこそ催眠や洗脳をされてこんなことを見ているように思わされてる可能性もありますけど」
咲耶は詩音に問い掛けつつ、自身の推論を話す。
「いえ、たぶん本当に異世界よ。さっき、ペガサスなんかも居たし」
「ペガサスなんて地球でも340年前に確認されてるじゃない。そんなのでここが異世界なんて分からないわ」
詩音が先程の光景の説明を交えて答えると、咲耶とほのかの後ろから声がした。
声の主は黄金のように耀く金髪を緩くカールさせ、淡いピンクのエンパイアドレスを着た少女──シルヴィア・シー・アレグリア。アレグリア王国の第二王女である。
「そうかも知れないわね。でも地球はこんなに魔力で満たされてはいないでしょう?
それにペガサスとかユニコーンなんて幻獣は最近はまったく発見されてないんだから、それで異世界と考えてもいいでしょ」
「でもさっき見たペガサスだって一体だったんでしょ?それなら偶々見つけた可能性も否めないと思うけど?」
「貴女はここが異世界だと認めたくないのかしら?知らない内にこんな場所に居て、周りが魔力でこれだけ満ちているなら異世界であると考えてもいいと思うのだけれど」
「だから、それだけで決め付けるのが間違いだって言ってるのよ。
もしかしたら地球上の魔力の多い場所かも知れないじゃない。未発見の龍脈の集まる場所かも知れないし」
「知れない知れないって結局願望が入っているようにしか思えないわよ。これだけよく分からないことが起きているんだったら一応は異世界だと思ったほうがいいと思うわ」
「でも!」
「二人とも落ち着いてくれたまえ!」
二人が言い合っていると気取った声が聞こえた。
声の主は茶髪の整った顔立ちの男──井出落輝だ。
「あんたは黙ってなさい!蛆にも劣る害悪!」
シルヴィアはチラリと輝を見てから暴言を吐く。
未だにあの事を根に持っているのだろう。
「そうですよ、二人とも落ち着いてください!」
「ほのか!君も手紙を受け取ったんだね!」
輝はほのかに話しかけるがほのかは無視し、話を続ける。
「先輩も殿下も、一度落ち着いてあの手紙にあった鞄を探してみましょうよ。取り合えず私達がどこに居るのかすら分からないのなら援助を受けましょう」
「そうね、熱くなりすぎたわ」
「私も」
「さすが、僕のほのか!」
「あなたのモノになった覚えはありませんよ、井出落くん」
さりげなく、自分の彼女アピールする輝をほのかはばっさりと切り捨てる。
「あ、有ったわよ。あっちの木の下に鞄が5つ」
咲耶が十数メートル先の木を指差す。
五人はその木を見ると、木に向かって歩きだした。
「これね。手紙があるわ。各自に向けてじゃなくて、全員に宛ててるみたい」
「読んでもらっていいですか?」
「ええ、構わないわ。……それじゃ、読むわよ」
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親愛なるイレギュラー達へ
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「また、このイレギュラーから入るのね」
「静かに」
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これを読んでいるということは無事に支給品を見つけたみたいだね。
良かったよ。
さて、まずはこれを言っておこう。
ようこそ、【ウィルカーナ】へ。君たちは今日からこの世界の住民だ。歓迎するよ。
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「歓迎って……いきなり拉致してそれは」
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まあ、まだ疑ってる人も居るだろうけど、君たちが今居るのは正真正銘の異世界だ。剣と魔術のね。
さて、それじゃあチュートリアルタイムと行こうかな。
まず、この世界には【ステータス】と呼ばれるものがある。これは簡単に言えばゲームのステータスと同じだ。勿論、人体の詳細を数値に表すのは不可能だから、ある程度の参考だね。
では、ステータスについての説明だ。
まず、ステータスには筋力値などを表す【パラメーター】があり、自らの習得した技能の証明となる【スキル】というものがある。【スキル】には複数の種類があり、剣術などの一般的な技能は【ノーマルスキル】と呼ばれ、一部の人間が習得できる【ユニークスキル】、そして一人しか習得できない唯一無二の【オリジナルスキル】というものが存在する。
また魔術も存在すると言ったよね。これの説明は後でするけど各スキルと魔術を合わせて【アビリティ】と呼ぶんだ。
そして、他にも【ジョブ】や【称号】、【種族】、【加護】と言うものがある。これもあとで説明するけど、これもステータスに表示される。
じゃあ、次はパラメーターの表示の説明だね。
まず、パラメーターは
〔現在のランク〕〈数値〉[成長ランク]
で示されるんだ。そして、自分以外には〈数値〉と[成長ランク]は見えないんだ。
では、それぞれの説明をしよう。
〔現在のランク〕
これは〈数値〉を基にしてどれくらいの高みにいるかわかるようにしたものだね。鑑定などのスキルでステータスを見られたときに示されるのはこれだ。ランクはF~SFまであるよ。どのくらいでどのランクに達するかも書いておくね。あ、それと魔力はここには含まれないよ。
F→1~100
E→101~150
D→151~380
C→381~700
B→701~900
A→901~1500
S→1501~100000
SS→100001~500000
SSS→500001~99999999999999
SF→100000000000000~
〈数値〉
現在の能力をおおまかに表したものだよ。
ちなみに、上昇はレベルアップ依存じゃないよ。成長に伴ったりして上昇するよ。
[成長ランク]
どれくらい成長するのかわかるよ。これはレベルアップで上昇する数値によって変わるよ。
これに関係する上昇値のランク分けも書くね。
F→0~2.5
E→2.6~3.5
D→3.6~4.5
C→4.6~6.5
B→6.6~8.5
A→8.6~9.5
S→9.6~10
SS→11~50
SSS→51~85
SF→100000000000000~
開きがスゴいけど気にしないでね。
SFだけは特別枠ってことだから。
ちなみに、一部の者は86以上の上昇値を持つよ。その場合はSSS+って示されるね。
それと、一般的なパラメーターを見せるね。
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一般人
種族
年齢
ジョブ
レベル
MP 50[F]
STR〔E〕125[E]
AGI 〔E〕110[F]
VIT〔F〕 80 [F]
INT 〔F〕45[F]
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これが一般人(25歳)のレベル1の状態でのパラメーターだよ。普通に生活してればレベル1のままとかあり得ないからもうちょっと高いね。
それじゃあ、ステータスを見てみようか。
皆、ステータスと口に出すか、心のなかで言ってみて。
そうすると、目の前に薄い青色の半透明のパネルが出てくるから。それがステータスだよ。勿論、他の人には見えないから安心してね!
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「「「「「ステータス」」」」」
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シオン・スメラギ
Age17
種族【最高位人族】
ジョブ━┳━魔術師━魔姫(特殊)
┗━剣士━細剣士━━┛
┗魔術剣士
レベル1
MP 35000/35000 [SSS+]
STR 〔C〕370+80[SSS+]
AGI 〔C〕395+80 [SSS+]
VIT 〔C〕395+80 [SSS+]
INT 〔C〕520+80 [SSS+]
《ノーマルスキル》
【体術level4】【細剣術level4】【魔力操作level3】【交渉術level6】【話術level6】【礼儀作法level5】【身体強化術level1】【並列思考level1】【並列処理level1】
《ユニークスキル》
【皇城三式武術】
【魔力・気同時操作可】【魔術・術技同時使用可】
【異世界言語理解】
《オリジナルスキル》
【魔術倍加level1】
《魔術》
基本属性適正:全(火・風・雷・光+土・水・氷・闇)
《ユニーク魔術》
【氷炎魔術】【天焦魔術】
《加護》
【魔術の神々】
《称号》
【双天の魔姫】【東洋の魔姫】
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サクヤ・ミカナギ
Age 15
種族【最高位人族】
ジョブ━┳侍━姫武将(ユニーク)
┗魔術師┻魔術剣士(侍)
レベル1
MP 10000/10000[SSS+]
STR 〔C〕450+50 [SSS+]
AGI 〔C〕520+50 [SSS+]
VIT 〔C〕350+50 [SSS+]
INT 〔C〕395+50 [SSS+]
《ノーマルスキル》
【体術level6】【刀術level6】 【魔力操作level1】【身体強化術level1】【並列思考level3】【並列処理level3】【礼儀作法level3】【奉納神楽level3】
《ユニークスキル》
【御巫清心流剣術】
【魔力・気同時操作可】【魔術・術技同時使用可】
【異世界言語理解】
《オリジナルスキル》
【刻眼level3】
【斬リ屠ムルハ我ガ敵ナリ】
《魔術》
基本属性適正:氷+水・風・光・雷
【身体強化魔術】
《ユニーク魔術》
【灼光魔術】
【氷華魔術】
《加護》
【武術の神々】
《称号》
【剣の申し子】【捉える者】
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ホノカ・サクラ
Age 15
種族【最高位人族】
ジョブ━┳巫女━癒し手━━━┓
┃ ┗━聖女《特殊》┻姫巫女《杖使》
┗付与術士
レベル1
MP 30000/30000[SSS+]
STR 〔C〕260+120[SSS+]
AGI 〔C〕350+120[SSS+]
VIT 〔C〕290+120[SSS+]
INT 〔C〕420+120[SSS+]
《ノーマルスキル》
【体術level3】【杖術level3】【奉納神楽level4】 【魔力操作level1】【礼儀作法level4】
《ユニークスキル》
【神憑り/神降ろしlevel???】
【聖女のたしなみ】
【異世界言語理解】
《オリジナルスキル》
【我が身使いて邪を滅し払わん】
【姫巫女の癒し】【姫巫女の恵み】
《魔術》
基本属性適正:風・水・雷+光・火・氷
【神聖魔術】【回復魔術】【障壁魔術】【付与魔術】
《ユニーク魔術》
【神霊魔術】
《加護》
【治癒神】
《称号》
【姫巫女】【聖女】【神霊の器】
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シルヴィア・シー・アレグリア
Age16
種族【最高位人族】
ジョブ━━魔術師━魔姫(特殊)
レベル1
MP 40000/40000[SSS+]
STR 〔C〕300+100[SSS+]
AGI 〔C〕300+100[SSS+]
VIT 〔C〕300+100[SSS+]
INT 〔C〕300+100[SSS+]
《ノーマルスキル》
【護身術level2】【魔力操作level3】【礼儀作法level5】
《ユニークスキル》
【支配者】
【異世界言語理解】
《オリジナルスキル》
【七星より力を】
《魔術》
基本属性適正:全(水・氷・土・光+火・風・雷・闇)
《ユニーク魔術》
【氷炎魔術】【天冷魔術】
《加護》
【魔術の神々】
《称号》
【お姫様】【双天の魔姫】【西洋の魔姫】
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※この下の括弧『()』は本人には見えていないが本来の数値等
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ヒカル・イデオチ
Age15
種族【最高位人族(劣人族)】
ジョブ━勇者(蛮勇者)
レベル1
MP 15000/15000[SSS+(F-)]
STR 〔C〕381[SSS+(F-)]
AGI 〔C〕381[SSS+(F-)]
VIT 〔C〕381[SSS+(F-)]
INT 〔C〕381[SSS+(F-)]
《ノーマルスキル》
【剣術level3】【体術level3】【魔力操作level1】【礼儀作法level3】(【智謀(笑)level3】)
《ユニークスキル》
【勇者の威光(蛮勇者の愚かさ大公開)】
《オリジナルスキル》
【光集めて力と成す】(【愚かな我は自爆する】)
《魔術》
基本属性適正:光(笑)
【身体強化魔術】
《ユニーク魔術》
【極光魔術(使える訳ないだろ、バァーカ!)】
【異世界言語理解】
《加護(呪い)》
【神々】
《称号》
【勇者】(【出落ち】【ゴミ】【カス】【愚かな者】【蛮勇者】【嫌われ者】)
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「皆、どうだった?」
「なんと言うか……これはいい方なんでしょうか?」
「取り合えず、皆自分のランクを開示しましょう。あの手紙に書いてあることを信じるなら戦力の確認は必要だから」
「そうですね」
「じゃあ、私から。
私はオールCよ」
「私もです」
「私も」
「私もよ」
「僕もだね。皆と同じなんてやっぱり僕らは運命の赤い糸でつなが(ry 」
「じゃあ、次を読むわね」
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確認したね?
よし、次は魔術とかの説明をするね。
ではジョブから。
ジョブ。それはその人物に適した職業──ある種の天職の事である。この世界にはジョブと職業という二つの概念がある。例えば、ジョブが魔術師の男が冒険者になると、ステータスには、【ジョブ━魔術師】【職業━冒険者】というように表記される。
また、ジョブ適性は一つとは限らず、いくつものジョブ適性を持つものもいる。しかし、一つのジョブにしか就けないのかというとそうでもなく、25レベル毎にさらにジョブに就ける。さらに、上位ジョブへと天職することも可能。また、レベル100を越えると、ジョブ適性が増える事もある。
最後にジョブに就く利点だが、そのジョブに関したスキルの付与、スキルレベルのアップ、ステータスの上昇など。
こんな感じだね。
君たちは色々と特別だから、level1の時点で色々なジョブに就いているよ。
次は魔術について。
簡単に言えば魔力を用いて世界に干渉する能力だね。まあ、万能というわけではないのだけれど。
次は種族について。
この世界には普通の人間のほかにも色々な種族が住んでいる。
そして、上位種族というものがあるんだ。
下に大まかに書くね。
まずは普人種について。
これは地球にも存在する。つまり君たちもこの普人種に分類される。身体能力も魔力も特に優れているわけではないけれど、バランスが良く数が多いよ。そして、弱いからこそ技術が発展してきた。
さらに振り幅が大きいよ。
次はエルフ種。
ファンタジーの定番だよね。
身体能力は普人種より低いけど、視力が良くて、精霊に好かれやすく、魔術と弓の扱いに長けているよ。基本的に眉目秀麗でスレンダーだ。耳も長いよ。
次はドワーフ種。
これまたファンタジーの定番だね。
力が強くて、鍛冶に秀でている。魔術は苦手だけど、魔剣などはつくれるよ。
酒好きで人情に厚いね。あと、職人気質が多いよ。
次は魔族。
これは複数の種族の総称で、魔人種、血鬼種、鬼人種のことだ。魔人種のなかにはサキュバスみたいな習性を持つものがいるよ。あと、基本的に身体能力と魔力が高い。だけど、ちょっと頭が弱いんだよね。
次は獣人種。
言わずと知れたケモミミだよ。
獣が二足歩行になったような者も要るし、普人族とほぼ同じ見た目で耳があるだけの場合もある。
身体能力が高いよ。
最後に竜人種。
身体能力も魔力も高いよ。さらに竜に変身できる。そして、米や味噌とか日本に近い文化を持っているよ。だけど数はスゴく少ない。それと、長命でもあるよ。そして、竜だからドラゴンとかと戦わないということは無いよ。この上位種である龍人種はすべての大陸で信仰されているよ。ちなみに龍人種は現在8人しか存在しないけど、その強さは最強と呼ばれる竜人種が数十人で戦っても傷一つ負わないほどだ。
あとはモンスターや悪魔がいるけど、敵だと思ってくれていいよ。あ、別にルシファーとかと仲が悪いとかじゃないよ。昨日もベルゼブブとかと飲みに行ったし。蠅の王なんて呼ばれて可哀想だよ、とてつもないイケメンなのに。人は時に残酷だよね。
あ、ベルゼブブとかとは別だからね、この悪魔たちは。
(にしても、ベルゼブブったら良く食べるよなぁ。)
じゃあ、次は各種族の上位種等を書くね。右にいくほど高い序列だよ。
普人種
劣人種→人種→上位人族→最高位人族
エルフ種
エルフ→ハイエルフ→エンシェントエルフ
ドワーフ種
ドワーフ→ハイドワーフ→ドヴェルグ
魔族は一律で
ノーマル→上位→最高位
獣人種
ノーマル→ハイビースト→獣王
竜人種
竜人種→上位竜人種→最高位竜人種→古代竜人種→龍人種
となるよ。
また、たまに半神半人の者も要るよ。
次は加護について。
これは神やすごい高位にいる生物から受けられるよ。
その恩恵は絶大で特別なスキルを授かることや、ジョブに就くこともある。君たちには僕らのお詫びとして各々に適した加護をあたえているよ。
最後は称号についてだね。
称号はその人が行ったことに関して付いたりする。恩恵もあるよ。
こんなものかな。
じゃあ次は支給品についての説明。
その鞄は【異空間収納鞄】と言って一定量までは生物以外は収納できる魔道具だ。ただ、とても貴重な品だから盗まれないようにしてね。まあ、所有登録を済ませてあるから他の人が中身を取り出そうとしても無駄だけど。あと、中では時間が止まっているから劣化もないよ。
それじゃあ、入っているものについての説明だね。
中には君たち各々に適した装備と、少しだけどお金とポーションなどが入っている。ただ、前に言ったと思うけど(言ったよね?)身分証は用意していないから町で冒険者になることをお勧めする。商人になるのはお勧めできないよ。元手が圧倒的に足りないし、君達みたいに見目麗しいものが居たら騙して食い物にしようとするものが湧きまくるから。
あ、そうだ。
使い方を説明してなかった。
使い方は簡単。中に入っているものを思い浮かべて鞄に手を突っ込んで取り出すだけ。中に入れるときは普通に入れてね。それと鞄に入っているものを書いた紙を張り付けてあるからそれを見てね。
最後に。
しっかり装備をするんだよ。これから先は何があるかわからないから。
殺しの覚悟をしっかり持つこと。
そうしないと君たちはすぐに死ぬ。ここは平和じゃないから。
それじゃあ頑張ってくれ。
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「終わりみたいね」
手紙を読んでいた詩音が言う。そして、手紙を丁寧に折り畳むと着ていた制服のブレザーに仕舞うと、しゃがみこみ、自分の名前の書いてある鞄を手にとった。
ほかの四人もそれにならい、鞄を手に取る。
「えっと、シルヴィアちゃんの装備はローブと短杖だよ。これ以上の装備を渡せなくてごめんね。……って、この杖すごいいいやつだと思うんだけど」
シルヴィアは紙に書いてあった言葉を見て、短杖を取りだし、魔力を通して呟く。この世界ではCランク程度のものだが、地球であれば最高級品を軽く越えるレベルの杖なのだ。
「私は……刀と革鎧か。……うん、スゴく使いやすいし、いい刀だと思うけど『そんなものねごめんね』ってことはこれより良いのがあるってことなの?」
咲耶も少し離れたところで刀を抜き、軽く振って呟く。
この刀もこの世界ではCランク程度のものであるが、日本で言えば天下五剣をやすやすと越えるものだ。因みに天下五剣はこの世界だとDランクほどだ。ランクが1違うだけでかなりの違いだ。
「私のは杖じゃなくて細剣?『これは魔術発動体にもなるよ。こんなものしか用意できなくてごめんね』ってこれ、地球ならエクスカリバーとかと同じクラスじゃない」
詩音もレイピアを取り出して、呟く。因みにエクスカリバーはこの世界でもトップクラスの武器だ。詩音が同じクラスと言ったのは、剣にして魔術発動体となるものが地球ではほぼ無かったからだ。
「私のは長い杖なのね。他には白いローブか。……あ、すごい綺麗な刺繍」
ほのかは白いローブに金糸で施された刺繍を見て、うっとりとしているが、これでもCランク程度の装備だ。
「おお!これはすごくいい剣だ。勇者の僕にはふさわしい!」
バカは装飾過多な悪趣味な金ぴかの剣と鎧を見てニヤニヤしている。女を囲ってハーレムでイチャイチャすることでも考えているのだろうか。
そんなこんなで十数分後。
全員、自分の装備を身に付け、出発する準備が整ったようだ。
咲耶と輝は制服のYシャツの上に鎧を着け、ほかの三人はローブやマントを着けている。
「それじゃあ、皆!僕に着いて来てくれ!」
そして、そんな勇者の言葉と共に彼らは出発した。
そして、十数分後。
「おっやぁ!こぉんなところに可愛い可愛いお嬢さんたちがいるなぁ!」
「へへっ、さっすが親分!」
「こりゃあ今日は楽しめそうだなぁ、えっひゃひゃ!」
「親分!あっしらにも回してくだせぇよ!」
「俺の後ならかまわねぇよ、まあ壊れてるかもしれねぇがなぁ。えっひゃひゃ」
彼らはテンプレ盗賊に遭遇していた。
その数は四人。随分と小規模だ。まあ、実際はアジトに数十人の仲間がいるのだが。
「おぉおおい!そこの色男!命がおしけりゃ、後ろの女と有り金とその金ぴかな装備一式置いて失せな!」
「女は俺たちが可愛がってやるからなぁ!げしししし」
「うっひょあ!やべぇよ、あの体!見ただけで勃っちまった!」
「あの強気な顔を快楽に溺れさせたらどんだけ気持ちいいだろぅなぁ!……って、センズリこくな!」
盗賊四人は勇者に勧告する。
すでにセンズリこいてるアホがいるがほかの三人は既に武器に手を伸ばしている。
果たして、勇者の答えは…
「そんな事するわけないだろう!お前たちこそ、この場から消えろ!」
腰の剣を抜いて、切っ先を盗賊に向けての挑発だった。
後ろの四人は「やっちまった」とでも言いたげな表情だ。彼のジョブが勇者だというのは悟ってはいたが、まさかこんなことをするとは思わなかったのだろう。確かに勇者と言えば強そうに聞こえるが自分達は殺し合いの経験などないのだ。それなのに……ということだろう。
一方、勇者は四人がそんなことを考えているとは知らず、根拠のない自信に基づき、盗賊たちが逃げ帰り、皆がさらに自分に惚れると思っていた。彼からしたら盗賊達はギャルゲーで言う好感度上げの「イベント」のNPCでしかないのだ。
「えっひゃひゃひゃひゃ。
それじゃあ、死ぬかぁ?」
「親分、親分!いいこと考えましたぜ!あの男の前で女達を犯してやりましょうぜ!」
「てめぇ!それはいい考えだなぁ!よし、採用だ。
てめぇら、全員アジトに帰るまえにアイツら犯していいぞ!俺はあの黒髪の女剣士をヤる!」
「あっしはあの黒髪マント!」
「俺はあの金髪だぁ!」
「俺はあまりもんかぁ!まあ、もとからあいつ狙いだけどなぁ!」
盗賊たちは笑いながらこの後の計画を練る。
完全に自分達の勝利を疑っていない様子だ。一方、勇者はそんな盗賊の様子を見て若干の焦りを持っていた。
「なぜ、彼らは逃げない。なぜ、勇者の僕からにげない」こんな言葉が頭のなかでぐるぐると回り続ける。
そして、時は来た。
「それじゃぁぁあ!いくぞおおお!!」
「いやっはぁー」
盗賊たちは得物を抜き、一斉に飛び出す。
その動きは無駄を感じさせない。
そして、盗賊の親分は咲耶に向かって行く途中、勇者を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた勇者は数メートル先の樹に激突し、崩れ落ちる。
「いやぁああっはぁ!」
親分はタルワールを上段に構え、跳躍。咲耶に振り下ろす。
四人の少女は思っていた。
彼──輝とは街で別れようと。彼──東桐黎雅を見付けに旅に出ようと。
地球でも輝は自分が主人公だと思って行動している節があった。そんな彼が勇者のジョブを得た。そう悟ったとき、四人の少女は彼を危険だと思った。勇者だ主人公だとやっているくせにあの男は人を殺すことなどできはしないだろうと。
その時、彼女たちは各々決意した。
「殺しに躊躇いを持たない。彼に再び会うために」と。まあ、言っておくと一人は「親友を彼に再び会わせるために」なのだが。
「シッ!」
そんな声と共に咲耶は刀を抜刀し、親分のタルワールと打ち合う。一瞬の拮抗。その一瞬で咲耶は無意識に身体強化魔術を使い、さらにスキル【身体強化術】を重ね掛けし、親分を跳ね返す。
「ヒュー!いいねぇ!」
跳ね返された親分は空中で回転し着地すると同時に縮地を使用。咲耶の目の前に現れ、拳を咲耶に打ち込む。
「ぐっ!」
咲耶は吹き飛ばされながらもその戦闘センスと異世界に来たことと魔術によって強化された身体能力で体制を建て直し着地する。しかし、その時にはすでに親分の次の一撃が迫っている。その一撃が狙うのは咲耶が刀を持つ右肩。そして……その拳が当たるかに思われたが、咲耶はギリギリでその拳を避け、再び無意識で風属性魔術を発動。一部の才能あるものしかできない【纏い】と呼ばれる技術を使用し、風によって強化された蹴りを親分に叩き込む。
「おおう!魔術剣士か!」
だが、親分はそれを軽々と避ける。
それを確認した咲耶は風によって一気に距離を取ると呼吸を整え、刀を正眼に構え…………一気に距離を詰め、袈裟切りを放つ。そしてすぐに切り上げ、休むことなく、斬撃を放つ。だが、親分はそれをギリギリのところで防ぐ。
しかし、徐々に咲耶の攻撃がかすりだす。
「(見える!コマ送りになっているみたいに)」
その時、咲耶には映像をコマ送りにするように親分が見えていた。そして、その目は紅く輝いている。別にどっかのア〇メという訳ではない。加護によって与えられた《オリジナルスキル》【刻眼】。それを使用した際の副作用のようなものだ。
【刻眼】の効果はスキルレベルに応じての「周囲がスローモーションで見えるようになる」ことと「動きの予測」だ。
前者はレベル1の時点で1/10秒つまり0.1秒が一秒に換算される。そして、レベル3の現在は0.1秒=3秒になっている。後者は攻撃の予測などが赤い線で表示されるようになる。だがレベル3の時点で最高0.3秒後までの攻撃で再使用に7秒かかる。
要するに【刻眼】は身体能力が伴えばすごくつよいのだ。
金属音が鳴る。
剣戟の音が響く。
だが、それも……
「もう終わりでぇ」
親分はそんな言葉と共に急加速する。それは【刻眼】でも霞むほどだ。
「ガハッ、!」
そして、咲耶の腹に親分の拳が直撃する。
意識は失わないが動けなくなるほどのちょうどいい強さの攻撃だった。
◇◇◇◇◇
咲耶が戦い始めたころ。
ほかの三人も戦いが始まっていた。
「『焼き尽くせ 愚かなる者共を《炎環》」
詩音は地球で幼少より培った魔術を使用する。それと同時に虚空にルーンを描き、盗賊Aの足元に飛ばす。
「《爆》!」
そして、ルーンによる魔術を起動させる。
だが……
「あっしに魔法は効きませんぜぇ!」
盗賊Аの魔道具によって効果がない。
「くっ!」
その言葉を聞き、詩音はレイピアを構える。
ただ、この選択は間違いだったと言える。
なぜなら、盗賊Аの台詞はブラフ。彼に効かないのは火属性の魔法だけなのだから。
「あっしと同じレイピア使いですかぁ!」
盗賊Аは盗賊とは思えないほどに優雅で洗練された動きでレイピアを構える。
そして……
「きゃあ!」
四連撃。
詩音は反応することも出来ずに左右の肩と太股に攻撃を受け、倒れることとなった。
「親分はまだやってるみたいですねぇ?味見だけしまぁすかぁ」
盗賊Аはそう言い、倒れた詩音の髪を掴んで顔を上げさせると、詩音の頬を舐め上げる。
「楽しみぃですねぇ」
シルヴィアは杖を構え、詠唱を続ける。
たとえ、敵が近付いてきているとしても。
「『────報えよ報え 葬れば 汝が生は凍結されん《|雪男の抱擁《Umfassen des Yeti》》』!!」
シルヴィアは自らの使える最高の魔術を放つ。
だが、
「『燃やせ燃やせ 下らぬ者よ 我が身滅ぼし 全てを焼け《ヘルフレイム》』」
盗賊Вの魔術によって相殺される。
そして、つぎの瞬間にはシルヴィアは足の腱を切られ、地面に倒れる。
「まぁぁだ親分はやってるよぉ。あぁ、我慢できねぇ」
「あ"あ"あ"あ"あ"!」
盗賊Вは倒れたシルヴィアの腕を踏み、骨を折って呟く。
そして、回りを見てからすでに大きなナニをズボンから取り出し、先程の続きを行う。
「あぁ、でちまう」
そして、男の汚い液はシルヴィアのローブを汚す。
「はぁ!」
ほのかは杖の先端を盗賊Сに向かって突き出す。しかし盗賊Сは軽々とそれを避けるとほのかに接近。そして、腹に一撃入れる。
それだけでほのかは倒れる。
◇◇◇◇◇
四人全員が倒れた。
「よし、あのガキに見えるとこに行くか。まずはあいつを縛ってこい」
親分は盗賊Аに命令をすると、輝のいる樹の前へと咲耶と詩音を引きずっていく。ほかの二人もそれにならう。
「見てろよ、えっひゃひゃ」
「や、やめろぉ…彼女たちに…」
盗賊たちは動けない輝の前に咲耶達を寝かせ、咲耶達の鎧や服を乱暴に引き剥がし、ショーツを手を掛ける。
「ぴゃっ!?」
しかし、突然盗賊Аが奇声をあげ、後ろに倒れる。その頭には直径5mmほどの金属棒が刺さっている。
盗賊たちはそれを確認すると自分の得物に手を伸ばす。
そして、金属棒が飛んできたと思われる場所からやって来たのは……
◇◇◇◇◇
〓side of Wallenstein〓
「てきしゅーう!てきしゅ……」
スカルハ領トゥガ森林。
盗賊団【狂乱の夕べ】のアジト。
「直接被害に遭ったわけではないけど、狩らせてもらうよ」
レイガはアジト前に屯していた八人の盗賊の首を飛ばしながら呟く。
「なんだ、てめぇは!」
「やっちまえ!」
「よくも仲間を!」
「ぶっ殺してやる!」
入り口から続々と出てくる盗賊をレイガは淡々と相手にしつつ、周囲の状況を探る。
「(おかしい。このアジトには強者の反応が少なすぎる)」
そう、アジトの中を含め半径500m以内に団長と思われる反応がないのだ。
「副団長をよべええ!!」
「こいつを早くころせ!」
「団長が帰ってきたらおれらが殺されるぞ!」
「(なるほど、どっかに行っているというわけか)」
レイガは盗賊たちの言葉を聞き、納得する。
ちょうどそのとき。
人に限りなく近い形のオートマタと巨大な金属製のゴーレムがアジトの入り口である洞窟から出てきた。
「うおお!これで勝てるぞ!」
「あれがオートマタだなんて認めたくないよ…」
レイガは呟き、何体ものオートマタとゴーレムを一瞬で切り刻む。
「副団長だ!」
「副団長が、きたぞ!」
そんな声が聞こえてもレイガは萎えた心のまま盗賊たちを切り伏せていく。
そして、三分後。
血の海にはレイガだけが立っていた。
「索敵範囲拡大するか」
レイガは呟くと、徐々に索敵範囲を拡大していく。そして、およそ半径1.5kmまで広げたところで複数の反応を捉えた。
そして、その反応はレイガをそこへと向かわせるには十分すぎた。
「これは……まさか。な。………行ってみるか」
レイガはその反応のしたほうへ向かう。
そして、向かった先で見たのは懐かしい感じのする反応を組伏せる反応──盗賊たちだった。
「反応、ここ。敵はこちらに気付いていない。
職業、盗賊。所属【狂乱の夕べ】。敵だな」
レイガは素早く確認するとスローイングピックを取り出し、一番左に居た男に向かって投げる。それは視認することもかなわぬ速さで男の額に突き刺さる。
「行くか」
そして、レイガは歩き出す。
◇◇◇◇◇
木々の間から脛の辺りまである草をかき分け、銀髪の黒衣の男が出てくる。
「てめぇか!こいつをやったのは!」
「そっくりそのまま返すよ、団長さん。この人たちをここまでやったのは貴様らか?」
親分の怒声にレイガは決して大きくはないがどこか恐ろしさを感じさせる声で返した。
「てめぇ!なにもんだ!」
「俺達が誰かわかってんだろうな!」
「ぶっころすぞ!」
盗賊たちは頭の悪そうな言葉を繰り返す。
「質問に答えろよ。
まあ、いいさ。まずはこっちが答えてやるよ。
貴様らは盗賊団【狂乱の夕べ】所属。団長【邪剣のダルフェ】、一番隊隊長【早狼のパコリ】、二番隊隊長【暗蛇のバルジ】、んでそこでころがってんのが三番隊隊長【麗剣のピサロ】」
レイガはスラスラと盗賊達の名前を述べる。
「わかってんじゃねぇか!」
「それなのに楯突くのか、げしししし」
パコリとバルジはそんなレイガに得意気になって言う。
だが、その時。団長であるダルフェはレイガの容姿を見て、前に聞いた話を思い出そうとしていた。
「(銀髪に黒衣そして…紫眼)」
「んじゃ、俺の自己紹介を。
俺はヴァレンシュタイン、冒険者をやってる」
「(【狂龍】ヴァレンシュタイン!)」
そして、ダルフェはレイガの名前を聞き、思い出す。
「それじゃあ、盗賊さん達。
俺の依頼内容を教えて上げよう。俺への依頼はお前らの殲滅」
レイガは刀を抜く。
仇桜の黒く薄く緋み掛かった刀身と銀の波紋が露になる。
「というわけで斬らせてもらう」
その言葉を聞いた瞬間、ダルフェはポケットに手を突っ込み、オートマタとゴーレムのコアを取り出し魔力を込める。
「クソが!【白騎】【黒鬼】!」
「親分!?なにを」
「そいつはやべぇ!【狂龍】ヴァレンシュタインだ!逃げんぞ!とりあえずゴーレムで時間を「稼がせると思うか?」
レイガはダルフェが投げたゴーレムのコアを破壊し、ダルフェ達の前へ翔ぶ。
「見た感じまだあの人たちにはなにもしてないみたいだな」
レイガは刀を向けながら言う。
「良かったな、貴様ら。
もし、傷を負わせる以上のことをしてたら楽には死なせなかった」
「だが、パコリ。
貴様は別だ」
その言葉と共に、レイガの姿が消える。
そして、ダルフェとバルジの首が胴体から離れ、地面に転がる。
レイガは、その場に立ち尽くすパコリの後ろに居た。
「パコリ、永遠の痛みと永遠の絶望どちらを選ぶ?」
「え…」
「まあ、選ばせないけどな。
《冥界への門》。落ちろ、パコリ。貴様の罪は一億年死ぬこともなく致死量の痛みを受け続けることで漸くダルフェたちと同等だ」
レイガはそれだけ告げると、開いた門へとパコリを蹴り飛ばした。
「さて、こっちの後始末をしなくちゃな」
レイガは後ろを向くと、あられもない姿になっている少女たちを見て呟いた。
「取り合えず《スリープ》」
まず、レイガは樹に縛られた勇者を眠らせる。
「あとは、《創成:浴室》」
そして、外からは見えない浴室を創り、インベントリから新品の男物のシャツ(黒)とタオルを四枚ずつ取り出す。
「他には、《浄化》《再生》」
四人の方へ向かいながら四人をきれいにし、怪我を直す。
「こんにちわ、取り合えず安全なので、この服を着て、よければ風呂に入ってください」
そして、レイガは優しく彼女たちに声を掛けた。




