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第29話

 レイガは盗賊退治に行くまえにギルドから一度、自宅へと戻ってきた。

 それは……朝食のためである。冒険者というのは往々にして早朝にギルドに行き、依頼を受けるものなのである。それは危険性の高まる夜までに帰ってこれるようにするためや、護衛等の依頼に滑り込める可能性があるため、そして良い依頼を受けるためである。

 レイガは最高ランク冒険者のため、大体の依頼に良し悪しもなく、さらに言えばランク相応の依頼も残っているし、この街周辺の依頼──最高でもCランク程度──もすぐに終わる。

 その為、早朝に来る必要は無いのだが、レイガは習慣としていつも早朝にギルドにやってきている。……朝食を摂らずに。








「ご馳走さまでした!」


 レイガは高級住宅地にある邸宅の一人暮らしにしては大きい食堂で手を合わせて言った。

 そして、壁に掛かっている時計をチラリと見てから、立ち上がり、魔法で食器を綺麗にすると、そのまま厨房の食器棚へと転移させた。

 レイガはそのまま、扉へ向かって歩いて行き、食堂を出た。その後は階段を上り、四階の自室へ入る。

 部屋に入るとレイガはインベントリから金属製の様にも見える黒の革鎧【龍神の革鎧】、通称【黒殻】を装備し、椅子に腰掛け、靴を【龍翔の軍靴(タクティカルブーツ)】へと履き替える。その後、腰の剣帯に【仇桜】を差し、右腰にタクティカルナイフ【龍雅】を装着、右足の銃嚢(ホルスター)に愛銃【黒烏】を収納する。次に甲の部分と指を覆う部分に金属板が付けられた指貫戦闘用手袋ハーフフィンガータクティカルグローブを着ける。そして、最後に【深淵の外套】に袖を通す。


「さて、行くか」


 レイガは呟くと、部屋から出て、階段を下り、玄関を出た。施錠は魔錠と呼ばれる特殊な鍵であるため、必要無い。

 そして、庭へと向かう。

 その庭には一体の黒き鷲獅子(グリフォン)が寝そべっている。


「メイガ!」


 レイガはそのグリフォンに向かって名前を呼ぶ。

 それを聞いたグリフォン──メイガは、すぐに立ち上がると、レイガの所へ駆け付けた。その時、後ろの地面がめくれあがっていたのはご愛敬だ。

 レイガはそんなメイガを声を掛けながら撫でる。メイガは嬉しそうに目を細め、鳴いている。

 その後、少ししてから一人と一体は家の門から出た。


 そして、街から出ると、レイガはメイガの背中へと乗り、目的地へと向かう。


 再会までは近い。







 ◇◇◇◇◇

 〓side of irregular's〓


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 我らが世界のイレギュラー達へ


 君たちは生まれる世界を間違ったと思ったことや、なぜ自分がここに居るのか疑問に思ったことはないかい?

 もしかしたら、無いかもしれないし、自覚してないかもしれない。

 ただ、それは些細なことだ。

 君達は、選ばれた。ただ、それだけ。


 と、いう具合に言っては見たけれど、これは言ってしまえば建前だ。まずは僕達が誰なのか言おう。

 この手紙を書いている僕を始め、君たちを見つけたのは君達が【神】と呼ぶ存在だ。

 あぁ、頭の可笑しいやつだ、なんて思わないでくれよ。ただの事実なのだから。それこそ、人は死ぬということや、人間は強欲にして傲慢で愚かということと同じくらいに。いや、人間の君達に言うのは失礼かも知れないね。

 まあ、そんなことは置いておいても僕らが【神】であるという事実は変わらない。それこそ、彼に神格と呼ばれる神が神たらしめる所以を抹消されない限りは。


 まだ、信じていないかも知れないから一応、言っておくよ。

 この手紙はどこにあった?ポスト?それとも私書箱?はたまたリビング?全然違うよね。

 君たちしか入れない寮の私室。そこにあっただろう。寮母も入ってないしね。

 まあ、これだけで信じろというのも無理かも知れないけどね。


 まあ、前置きはこのくらいにしておこう。

 前置き長すぎ!っていうことは言わないようにね。僕も思ってるから。


 さて、本題に入ろうか。

 さっきの建前で「選ばれたってなんじゃい」と思っただろう。

 まず、そこから言おうか。

 君たちは選ばれてなんか居ない。運命の悪戯である偶然や宝くじの様な一定確率での当選でもない。

 君たちがこの手紙を受け取っているのは必然なんだよ。どんなに因果が狂っても、どれだけ改変しようと君たちが動いても、変えることのできない事象なんだ。


 次こそ、本題に入ろうか。

 君たちは魂の存在を信じるかい?って、また話が逸れそうな話題だね。

 まあ、兎も角君たちはどう思う?

 先人の実験から魂は凡そ21グラムであるから信じるというのも良いし、好きな人が居て、それは魂がその人と共鳴しているからだと言うのも良い。

 前者はともかく、後者はとてもロマンチックだけどね。

 まあ、信じるも信じないも人それぞれだけど、神である僕らから言おう。

 魂は存在する。

 そして、その魂には大きさや形、傾向(これからは三要と言うね)があるんだ。さらに人間である君たちからしたら信じたくないかも知れないけれど、魂の三要によって人の才能は決まる。

 それだけなら「だからどうした」と君たちは言うかもしれない。だけどね、魂っていうのはそんなに簡単なモノじゃないんだよ。

 魂には入れ物、つまり体がいる。まあ、必要無い場合もあるけどね。

 さらに、その体が存在する場所。つまり世界にも魂の大きさの許容量があるんだ。それは数ではなく、大きさだけどね。

 魂の入れ物である【体】、体の存在する場所である【世界】。この二つには共通点があるんだけど、分かるかな。

 それは許容量だ。しかも、どちらも規格のようなモノが決まっている。それは魂の三要全てを含めた【魂量】についての規格だ。

 簡単に言えばどのくらいまでなら多かったり少なかったりしても大丈夫かという指針だ。


 それで詳しくは省くけど、君たちは、この世界で存在するには魂が規格が合ってなさすぎるんだ。

 だから、君たちには異世界に行ってもらう。その世界は魂の許容量も大きいし、規格もアバウトだからね。もちろん、体も再構築して、魂にあったものにするよ。


 あぁ、言い忘れていた。

 拒否は不可能。さらに、君達がこの世界に存在し続けた場合、世界は崩壊する。崩壊世界と呼ばれるような世界にもならないほどに。


 それと、君達にはある程度の援助するよ。

 さっきの体の再構築もそうさ。

 他にはまあ、詳しくはあっちでの手紙に書くけど、取り敢えず向こうに着いたら、名前の刺繍がされた鞄を持ってくれ。そして、一緒に置いてある手紙を読んで、その鞄を使ってくれ。


 最後に。

 向こうはモンスターも盗賊もいる、剣と魔法の世界だ。

 それはつまりこの世界より命が軽いということ。

 奴隷も居るし、差別もある。

 それを変えたければ力を持つこと。君たちは強い力を持つけど、決して無敵でも最強でもない。

 騙されることもあるかもしれないし、奴隷になることも、盗賊のストレス発散奴隷や、性処理肉壺奴隷になることも、ゴブリンやオークの苗床や、モンスターのエサになることもありえる。

 もっと、言えば貴族に見初められ強制的に妾にされることもある。

 あ、言い忘れていたけど、街に入るには身分証が必要だよ。身分証は渡してないから、適当に「無くした」とでも言えばいいさ。そうすれば仮の身分証を貰えるからね。その後は冒険者にでもなれば良いけど、まあ弱かったら性処理道具にされるかもね。

 それが嫌なら強くて影響力があって優しい者に庇護してもらうべきだよ。

 随分と長くなったけど、僕が言いたいのは1つだけ。


 今までとは勝手が違うけど頑張ってくれ。


 これだけだ。


 それじゃあ、また向こうの手紙でね。







 追伸(女の子しか見えないよ!)


 君達の大好きな東桐黎雅くんも同じ世界にいる。

 だから、探すと良いよ。君たちを同じ国に送るからね。


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