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第23話

一気に時間が飛びます

【龍皇ヴァレンシュタイン】

その名を知らない者はこの街──スカルハには一人も居ない。

美しき銀と黒の髪に神秘的な紫水晶(アメジスト)の様な紫の瞳。そして、何人の追随を許さない言葉で表すことができない程に整った容姿。そして、皆に愛される領主の娘を救った男。それは多くの人間が知っていることだろう。

しかし、冒険者達の──特にスカルハで活動する者達のなかでの評価はそれらとは大きく異なる。前者はまさに英雄や貴公子といったいかにも少女が夢見そうなものではある。だが、後者─冒険者達の彼に対する評価は真逆。非公式ながら彼を【荒龍】や【狂龍】そして【殺戮皇】と呼ぶほどだ。ちなみにギルドが定めた彼の通称は【龍皇】である。それと、余談だが彼は別に疎まれていたり恐れられていたりはしない。強さこそ全てな性格が大半を占める冒険者達において彼は言うなれば絶対の高みにある太陽と同じような存在なのだ。


それでは彼がいかにして冒険者達に【荒龍】と呼ばれるに至ったのかを語ろうと思う。


それは彼──レイガ・T・ヴァレンシュタインがここスカルハに来てから凡そ四ヶ月がたった時のことだ。





◇◇◇◇◇


「大変です!近くの!【不滅の森】に!ゴブリン、コボルト、オーク、オーガ、トロールの混成集落が形成されています!」


ある日、そんな妄言ともとれる様な突拍子もない言葉が夕方のギルドを貫いた。普段なら多くの冒険者は何を馬鹿な事をと一笑に付しただろう。しかし、そんな声はその男の様子を見てか上がらなかった。

報告を行った男──クリンクは若きAランク冒険者としてこの国では有名である。もちろん、彼のパーティーである【刹那】も有名である。戦闘力は既に同じAランクでも別格と見なされているレイガを除けばスカルハで最強の冒険者と呼ばれるほどに。

しかし、今よ彼の様子は全くそんな事を感じさせなかった。

ボロボロの革鎧に擦り傷や切り傷だらけの顔や体。肩には矢まで刺さっており、足には火傷も負っている。さらに彼と共に居るはずのパーティーメンバー達も居なかった。


「何があった、クリンク」


そんな彼に銀髪紫眼の美男が声を掛ける。

レイガである。


「頼む!レイガ!皆を、皆を助けてくれ!」


クリンクはレイガに気付くと、縋り付いた。


「落ち着け、クリンク。まずはお前の治療を、次に何があったのかを説明しないことには何もできない。…………ケビンさん!あのゴミに連絡お願いします!

さてと、治療だな。先ずは矢を抜くか。《消去(デリート)》。よし、これで矢は無いな。次は傷の治療。全部再生でいいな《再生》」


レイガが呟き、そして患部へ手をかざして再び……次は違う詞を呟くとクリンクの傷が一瞬にして消滅した。


「き、傷が……消えた」

「なんだ、あの魔術」


それはあり得ない事では無いが、奇跡のような確率でしか起こらないことである。回復魔術では傷は九割の確率で残る。その傷を消すには自然治癒に任せるしかない。それこそが回復魔術という理に反した奇跡の対価なのだ。

しかし、今回レイガが使った再生魔法は傷なんて残らないし、治(直)らないモノはない。そんな魔術を見たことがない冒険者達が驚くのは当然である。それと余談だがレイガの回復魔法でも傷は残らない。今回再生魔法を使ったのは気まぐれだ。


「それで何があった?」

「さっき言った通りだ……俺たちが不滅の森で討伐依頼をこなしていたら奴等の集落を見つけた。

そして……見付かっちまった……皆は…俺に……俺に逃げろって言って」


レイガがクリンクに訊くと彼は涙を流しながら答え始めた。

レイガはそれを聞き表情を曇らせる。

レイガは以前クリンクのパーティーと一緒に依頼を受けたことがある。それは勿論クリンクの言う皆とも面識があることを意味する。

冒険者はいつでもギブアンドテイクの関係。しかし、彼らは幼馴染みでパーティーを組んでおりそんな関係では無かった。レイガはそんな彼らがとても楽しそうだったのを覚えている。

あの依頼以来レイガは新居に彼らを招いてパーティーをしたりしていた。

そんな彼がこう言い出すのは当然だった。


「クリンク、それはどのくらい前の話だ」

「……30分前くらい」

「なら間に合うか。………来い【仇桜】【黒殻】【黒翼】」


レイガが銀の渦に包まれる。

そして、それが収まったとき、完全装備のレイガがそこに居た。

【黒殻】【黒翼】とはレイガの装備である【龍神の革鎧】【深淵の外套】のことである。レイガ曰く装備するときに呼び出すならこっちの方が短いから楽だそうだ。別にどこぞの神達の装備のように心があったり、人化したりはしないが。


「おま、まさか……」

「あぁ、行ってくるよ。取り敢えず殺せばいいんだろ?」

「無茶だ!キングどころかエンペラーがいたんだぞ!?もしかしたらカイザーに成ってるかもしれない!」


クリンクは声を荒げて必死にレイガを止めようとする。仲間を助けたいとは思っていても一人だけで行かせようなどとは思えないのだろう。先程の言葉にしてもレイガだけに言ったわけではない。


「せめて、緊急依頼になるまで待っt……「そんな物待ってたらお前の仲間は確実に死ぬぞ!」


レイガはクリンクの言葉を途中で遮る。


「これを持っとけ。これは【遠見の水晶】って魔道具だ。使い方はこれに書いてある。あのゴミに見せておいてくれ」


レイガはインベントリから取り出した魔道具をクリンクに渡すとギルドの外へ出た。


「…チッ、嫌な天気だ。……《龍翼顕現》」


空を見て文句を言い、レイガはその背中に龍の翼を顕現させる。


そして……曇天の空へ飛び立った。



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