第19話
「こうやって歩いてるとS〇O3話の音楽が流れてくるな」
レイガは一人言を言いながら(冥雅は異空間に入っている)子爵の家に向かっていた。因みにレイガが言っている音楽は3話の酒場でのbgmのことだ。3話、あれは悲しかった。運営の悪意を感じたとはレイガの談だ。
少しすると始まりの街のあの広場の様な場所に出た。
ここは中央広場。街の中でも有数の商会や、貴族の運営する店舗が目立つ場所である。その為、賑わっており、ここに来たものは大体がそちらに目がいくのだがレイガは違った。
「茅場でも出たら面白そうだよな」
完全にアニメなどの事ばかりを考えている。
また、その時口許に笑みを浮かべていたため、何人もの女性が顔を赤くしていたのだが、レイガは気付いていない。それどころか、髪を掻き上げるという暴挙にでた。その仕草でまた堕ちた。
「これはゲームであって遊びではない、なんてな。転移勇者でもいたら『これはゲームの様だが遊びではない』とか言ってやるか。俺が言っても説得力ないけど」
そんな一人言と共にまた笑う。ほら、また堕ちた。
またレイガの言った説得力が無いと言うのはレイガが完全なる完璧な不死性を持っている為である。それこそ消滅しようが、燃やし続けられようが、絶対に死なない。理の外にいるからだ。
レイガは一度神々にこの世界の事を、本物のデスゲームと称した。ポリゴンでは無い生身の肉体に本物の心、そして死。自分には最後のものは無縁だが、もし転移勇者などが居たらそうなのだろう、と。この世界の人間はNPCでは無いから非道な行いをすれば自身に返ってくる。それが分からない転移者は可哀想だと。
神々は言った。その通りだが、君の様に考えられる人間は少ない。力を得ると傲り高ぶるのは人の性質だからと。
それはレイガにある人物のことを思い出させた。
「止まれ、これより先は領主であるスカルハ子爵の──」
「依頼を受けてきた」
レイガが貴族街を歩き、子爵邸に到着すると門番に止められた。茶髪の生意気そうな顔をしたレイガより少し年上と思われる青年である。
レイガはこの後に続くであろう言葉を理解したので青年が言い切る前に自身の目的を告げた。まあ、理解したということ以外に自分は選ばれた人間みたいな顔をして偉そうにしている青年にちょっとイラッとしたというのも理由だが。
「ふん?依頼?貴様のようなガキがか?」
「貴方も大して俺と年かわらんでしょうに」
青年の言葉にレイガは軽く反論する。
「俺は、子爵の騎士として選ばれた人間だから良いのだ」
「はいはい、バカ乙でーす。取り敢えず通せ」
「なに!?バカだt…」
「ねぇ、邪魔なんだけど。それとも、何か?君は子爵の依頼を受けた冒険者を通さず、子爵に迷惑を掛ける気なのかな?一応俺がここに来た理由は支部長から頼まれたからなんだけど。あんま時間を掛けると依頼人に失礼になるんだけど。それよりも、依頼内容と思われる子爵の娘がドンドン危険になっていくよ?君は彼女を殺したいのかな?いや、ギリギリで彼女を助けてそのまま結婚とか考えてるんだね。ゲスだね」
レイガは青年のバカ発言を真っ向から叩き潰した。それどころか青年の心を読み、色々と大声で暴露した。
「つーか、今まで誰も──それこそ聖女も治せなかったのに回復魔術すら使えないお前がどうやって治す気なんだよ。愛とかいうなよ。不確定すぎるから」
さらにレイガは追い撃ちを掛ける。
というより、このバカ門番は回復魔術すら使えずに治すとか考えていたのか。
「おい!どうかしたのか!」
その時、某清原みたいな髭を生やしたゴツい男がやってきた。
「騎士団長!このガキが我らを侮辱「してないな。俺がしたのはこのバカに現実を見ろと教えてやったまでだ」
レイガはバカの台詞に被せて言った。
なんか、最近レイガが粗暴になっていってる。
「ところで騎士団長殿?依頼を受けてやってきた冒険者を追い返そうとし、さらにガキだなんだと侮辱するのが子爵の騎士なのか?それとも子爵もそうなのか?」
「いや、それに関しては完全にこのバカの独断だ。依頼を受けてやってきたということは例の件なのだろう。追い返すなど有り得ない」
「そうか、ならそのバカは教育をしておいてくれ。なんなら今度支部長と共に絶望級フィールドダンジョンの森に行くから一緒に連れていこうか?まあ、支部長と違って命の保証はしないが」
「ハハハ、止めておこう。流石にこのバカ相手にそこまでしてもらうのは申し訳ない」
然り気無く、騎士団長がヒドイ。
「子爵の所へ行くんだろ?着いてこい」
「そうさせてもらう」
「おう。それとバカ。お前は後でミッチリしごいてやるから楽しみにしとけ」
やっぱり騎士団長がヒドイ。
だが、そんなこんなでレイガはやっと子爵へと会えるのだった。




