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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

愛し愛され、巡る世界

作者: 廻廻風

「ずっと君の事が好きなんだけどなぁ」

 立春は机に肘をついて、向かいで優雅にお茶を啜る少年に言う。

「何を言っているんですか」

「ホントだよぉ?」

 立春はうるんだ瞳で少年を見つめる。

「私は知っていますよ。貴女はその魅力で多くの人々を虜にしてきたんですよね」

 少年は呆れたようにカップをソーサーに戻す。

「あははっ!ご明瞭!!!」

「全く、何が面白いのですか」

 大声で笑う立春を余所に、少年は立ち上がって片づけをする。

「分かったら帰ってください。貴女といると調子が狂う」

「それは僕も同じさ」

「その一人称、どうにかなりませんか?」

「僕と結婚してくれたら、ね」

「じゃあ構いません」

 少年はそう言って、立春の分のカップに手を掛ける。


「・・・・宋襄そうじょうってこんなに冷たかったけ?」


 そう言われて、宋襄の肩がぴくりと動いた。

 そして、少し間を開けてものを考えてから口を開いた。

「貴方のお蔭で・・・ね」

「あははは!!君ってば、本当に彼にソックリ!!!」

 この返答の何処が面白かったのか、立春は再び笑い転げた。

「・・・・もう一人のソウジョウさんですか」

「まぁ、どっちの名前も僕があげたものなんだけどね」

 立春は宋襄が手を掛けたカップを取り返し、傍に置いてあったクッキーを一緒につまんで食べる。

「そう言われると、貴女がますますわかりませんね。私と貴女のいうソウジョウさんとは実に何百年もの年齢差がある筈なのに」

「僕を人間だと思うからだよ」

「そこからしてますます、分かりません」

 なぜかそこで、にっこりとほほ笑む立春。

 その笑顔がやけに目に焼き付いた。


・・・・


「お前、本当に懲りないな」

「五月蝿いなぁ。君だってそこら辺の女の子引っ掛けてるクセに。人のこと言えるのかい?」

「言えない」

「じゃあ仕方ないや」

 立春は美しい横顔をふっと緩ませて、男に向かって笑顔を作った。

「今回で何人目だい?」

 その穢れを知らないような瞳で、男を見据える立春。心の奥をえぐるようだ、と男は思った。

「何度も言わせるな。一人、二人までは覚えてたが、何十、何百人となるともう数えてなどいない」

「そうだったね。それは愚問というヤツだったね。失敬失敬」

 けらけらと笑う立春。男は本心を悟られまいとして、冷静ななりを装う。

「・・・じゃぁな」

「んー。もういっちゃうのかい?」

「お前といると調子狂う」

「君も彼と同じこというんだねぇ」

 これ以上一緒にいたら、見透かされてしまう、と男はさっさとその場を去った。


「逃げないでよ、崇城」


 立春は一人、その場に蹲っていた。



・・・・


「待ってよ、ソウジョウ!!」

 ソウジョウ、ソウジョウ、ソウジョウ、と何度叫んだことだろうか。

 立春は痛む咽を抑えた。

「お願いだよ、私を置いて行かないでおくれ!!」

 何百年も、何千年も、君ばかりを追いかけてきたんじゃないか。

「お前は、不思議だ・・・。いつまでたっても若くきれいなままだ」

「若さが欲しいなら、くれてやる!!ソウジョウ、君の欲しいものなら何でもやる!!君が願うなら、なんでも叶えてやるッ!!!」

 立春はソウジョウの死を許さない。

「願え・・・・。願え!!」

 力なく、瞼を閉じようとするソウジョウの頬をはった。

「眠るな・・・・。私を置いていくな!!!」

 ソウジョウは必死に立春から逃げようと、瞼を閉じる。

 それに気づかない程立春は愚かではなかった。

 立春は唇をゆがめて、ソウジョウの上に跨った。


「分かった・・・・。分かったよ、ソウジョウ」


 そう言って、手に忍ばせていたナイフを翳した。



「おやすみ、ソウジョウ」



・・・・


「ん~?楸の事は好き」

 俺の主人(仮)である破壊魔、戸田さんはその甘い端整な顔を可愛く歪めて、俺に笑かける。

「だから、楸の望むことなら、なんでも叶えてあげるからね」

 心の底から楽しそうにほほ笑む戸田さん。

「さぁ、なんでも言ってごらん?」

 戸田さんは赤茶色の綺麗な瞳を俺の方に向けて、真摯に見つめてくる。

「今は何もない・・・・」

 雰囲気に押され、やっとの思いで発したその言葉。


 不死の願いだって、英知だって全知だって、聡明さだって、終焉だって、なんだって彼女は持っている。

 


「あ、ああ。うん。私が愛しているのはソウジョウだけ。だってソウジョウは約束したんだもの。私を一人ぼっちにしないって。だから一族だって繁栄してくれたし、私もすっごく幸せだった。

 なのに、約束を破ったソウジョウが悪いんだよ。私に怖気づいて、死という快楽に惑わされた、可哀想なソウジョウ。死は決して解放ではないのに、そうと信じて、その身を地に埋めた哀れな我が夫。

 だから、私は彼を救ってあげるんだ。でも約束は果たされなければならない。だってそれがこの世の理で、唯一の決まりだからね」

 ・・・。

「おやすみ~」




 


森田「おいおい、こんなん出していいのかよ」

立春「いいんじゃない?どうせ本編とは関係ないんでしょ」

ソウジョウ「(ホッ)」

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