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以心伝心

それから、僕たちは休みの日以外ほとんどを各役職の訓練に費やした。


この高校の成績は、一般の高校と同じ教科書内容のテストと、役職の実技によって決まる。

でも、普通のテストと実技の点数の比は1:9ほどで、教科書の内容なんて知らなくても実技さえ出来ていれば充分なのである。


初めて空船というものを見て、この仕事は命のかかった戦いであるということを知ってから3年が経った。

いよいよ僕たちは卒業の間際にいる。


実技テストを通過すれば、あの3人と一緒に空船に乗れる。

期待に胸が膨らんだ。


休憩のベルと同時に、戦闘シュミレーターから、みんなが一斉に出て行く姿が見える。


体がなんだか重くて、シュミレーターから動きたくなかった。


「ケン。どうしたんだよ。」

「お前って、なんかボーッとしてる時多いよな。」

「ターゲットロッカーが、ボーッとしてたら、仲間みんな死んじゃうわよ。」


どちらかというと、訓練は役職ごとに行うことが多いから、有紀達と会うよりも、ほかの空船のターゲットロッカー仲間と会っている時間の方が多かったりする。


みんな、闘志に燃えているアツい連中である。



「絶対に俺らの空船は落とさせない。俺が撃ち落としてやる。」

京太は、ターゲットロッカーの中でも好成績で、人情深い奴だ。

「なぁ、ケン。俺らはこうやって、ゲームセンターにあるガンダムみたいなので、撃ち落とす訓練してるけどさ、これって麻痺しないか?」


「麻痺って何がさ。」と僕が返すと、京太の目が変わった。


「お前、分かってねぇな。

みんな、ターゲットロッカーの訓練をゲームだと思ってやってる。でも、本当は仲間の命かかってんだぞ。画面に『墜落』って表示されたら、ボタンひとつで命はリスタート出来るか?

ゲーム感覚で実践するなんてイかれてるよ。」


正論だ。極めて正論だ。

みんな麻痺してる。

でも、常日頃から『墜落』のことの重大さを噛み締めながらやっていたら、僕は頭がおかしくなると思う。

きっと、京太はそれが実際に出来ているから強いのだろう。


「さすが、京太ね。私も確かにそう思うわよ。でも、私は、京太みたいに心が強くないからこの訓練をゲームと思ってやらないとくたばっちゃうのよ。」

慶子は、何かにつけて僕と意見が合うと思う。

口に出すことはないが、考えていることが同じであることが多い。


僕が、ラーメンの気分の時、彼女もラーメンの気分だったし、僕が、めんどくさがることは大抵彼女もめんどくさがっている。


僕と彼女の違いは、その思ったことを口に出すか出さないかだけだ。


僕はこうして色々と頭の中で考えている。そのときは周りが見えなくなっているらしく、周りからするとボーッとしているように映るらしい。


でも、慶子は違う。僕が、全神経を集中させて、考えたことと同じことをしゃべりながらまとめることができる。


京太と慶子は僕の憧れだ。


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