翔ぶ決意
僕のグループは4人組と言われた時点で決まっていた。
「おい、剣、有紀、舞友。
いいよな!文句ねぇよな!」と幸田の声がする。
「もちろん!」舞友が笑う。
「それでいい。」有紀も同意した。
「おい、剣。いいよな?」
幸田がいい、舞友が微笑みかけ、有紀がチラリとこちらを見る。
僕の返事は一つだけだ。
「当たり前だろ。よろしくな。」
5分ほど経つと、倉庫内のざわめきが段々と収まってきた。
「よし。とりあえず、今日はこのメンバーで、訓練説明を行うぞ。
空船は4人乗りだが、それぞれ役割が違う。
1人は、この機体を動かす操縦士。
これは、もっとも4人の班内で信頼のおける優秀なものがよいだろう。
また、操縦士は総責任者も兼ねており、情報伝達や最終判断権も持つこととなる。
さらに、それをサポートする副操縦士。
操縦士とともに、運転を担い、操縦士をサポートする。
薬剤管理士。機内に積んである薬剤のコントロールを行い、どこにどのように薬を散布するかを的確に判断し、レバーを押す。
爆発事故の防止にも務める。
そして、ターゲットロッカー。」
河和田がすかさず、突っ込む。
「教官!ターゲットロッカーってなんですか?」
「カッコ良く言うと、ターゲットロッカーだが、戦闘員のことだ。」
漣教官は少し間を開けてから続けた。
「今まで話していなかったが、実はこの計画を、妨害しようとする輩がいる。工作員内では有名な話だ。それがどんなやつだかは、指導教官である私はあまり知らないが、有名な話としてそいつらの大きな特徴が3つほどある。
一つは、そいつは海の中にいるということ。
さらに、そいつらは我々の築いた海水の完全凝固部分に海水凝固剤をぶちまけて、爆破しているということ。
そして、もう一つ。これが、お前らに最も関係することだが…
奴らは当然薬を撒く張本人も狙ってくる。
つまり、空船めがけて弾丸をぶっ放してくる。海中からな。」
河和田が質問を入れてくる前に、僕はすばやく質問した
「教官!では、我々に向けられた玉はどうするのでしょうか?我々は狙われたら一環の終わりですか?」
教官が答える。
「そのためのターゲットロッカーだ。この空船には、弾丸が飛んで来たときに迎撃する為のミサイルが6機ついている。幸い、あちらの弾丸は単純で我々を追尾したりはしない。つまり、当たる精度はかなり低い。まぁ、海中から撃ってるからなぁ。
ただ、厄介なことに、空船のレーダーにこの弾丸は映らねぇんだよ。だから、弾丸は海面からいきなり飛んでくる。現在の技術では予測不可能なんだ。それを迎撃するのが、ターゲットロッカーの仕事。弾丸が水面に現れてから空船に着弾するまでの、長くて10秒ほどの時間でターゲットをロックし、迎撃ミサイルを発射する。
誰がどの役をやるかを今決めろ。
この役ごとにこれから受ける研修の内容も変わってくるからな。」
再び、倉庫内がざわめきだした。
「どうするんだ?」僕は、3人に問いかけた。
「やっぱり一番しっかりしてる方が、操縦士でしょ?ね、有紀。」
舞友が有紀の肩を叩く。
「私でいい?」有紀がこちらの方を見る。
「おいおい。どうしたんだよ。いつものお前なら、『分かっている。』とか言ってクールにやってくれるのによ。」幸田がおちょくった。
「文句はないだろ。」僕が言うと、幸田がバツが悪そうに頭をもたげて言った。
「俺だって、文句はねぇぜ。もちろんな。
俺、副操縦士がいい。俺ってさ。
びっくりするぐらい優しいだろ?だから、弾飛んで来てもかわいそうで撃ち落せないと思うんだよね。それに、薬剤ばら撒くのも海水がかわいそうだろ。罪もないのに固められてよお。」
「副操縦士なら、有紀がなんとかしてくれるからでしょ。正直に言いなさいよ。それに何よ。海水がかわいそうって。
私は、薬剤管理士ね。私にぴったりな気がするの。」舞友が言う。
「そうすると、俺はターゲットロッカーか。」僕が言う。
「本当にいいの?」有紀がボソリとつぶやいた。
「いいさ。戦うのは嫌いじゃない。」
「そうなんだ…。」
「なんだよ。そんな、悲しそうな顔して。だって、こっちは大砲撃たれるんだぞ。死ぬか生きるかだぞ。それに、国家計画を邪魔する奴らなんて俺は許せないしな。」僕が言うと、有紀は我に返ったように言った。
「別に。あなたに、出来るかなって思っただけ。」