表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

7

「お前だろう。やったのは」

「答えます。否定します。いいえ。違います」


 私は、答えた。目の前の男に。黒崎伊織に。


「殺したのはお前はない。それは、道三自身だろう」

「答えます。肯定します。はい。そうです」


 私の父。私を作った人。倉城道三。殺されたと言われた彼。彼は、自殺したのだ。私を作って。満足したと言って死んだのだ。

 そう、私を作って。完成しさせて、私の名を呼んで。彼は、死んだのだ。自分で自分を殺したのだ。それが全てなのだ。目の前の男は知っているのだろう。そうでなければ、ここにはいないだろう。自分の前にはいないのだろう。

 ならば、何が目的なのだろうか。合理的な思考に基づくならば、自分を逮捕するという結論に至る。だが、どうにもそのような雰囲気は感じられない。

 男からは、どうにも面倒くさいなどといった、中庸な感情ばかりを感じさせる。データベースにはない男だった。


「問います。質問をしてもよろしいでしょうか」

「ああ、こちらの問いに全部答えたらな」

「答えます。了承しました。これより、如何なる問いにも答えます」

「なぜ、道三の死を偽装した」


 私の父の死を偽装した。

 はい、肯定します。私は、私の父の自殺を偽装しました。

 窓に細工をし、かりそめの犯人の証拠も作りました。動機も十分でした。100%それは成功しました。

 なぜ? ええ、答えます。

 私は、父の遺言を果たしたにすぎません。人形を守るために。


「違うだろう」

「違う?」

 

 答えます。答えます。答えます。なぜ。なぜ。なぜ。なぜ。私は、なぜ父の死を偽装したのでしょう。私は私に問います。なぜ、偽装したのですか。

 答えます。わかりません。

 問います。なぜ?

 答えます。わかりません。

 問います。なぜ?

 答えます。わかりません。

 結論を出します。不明。不明。不明。


「問います。なぜ、私は、父の死を偽装したのですか」


 何かがあったはずなのです。私は、確かに、何かの命令に従って死を偽装したはず。なのに、なぜ、私は父の死を偽装したのでしょう。

 記録(ログ)には何も残っていません。ですが、確かに命令はあったはずなのです。

 なのにわかりません。


「はあ、やれやれ、面倒だ」


 彼は心底面倒そうに息を吐き出した。溜息と呼ばれるものだ。

 溜め息にはいくつか種類があったはず。

 失望・落胆などによる溜め息。感動・美しさなどによる溜め息。将来への不安からくる溜め息。素晴らしいものを見た時の溜め息。

 感動じゃないでしょう。感動する要素があったとは思えません。どちらかと言えば、失望、落胆でしょうか。


「俺は、それを知っている」

「願います。それを教えていただけませんか」

「面倒だ。だが、交換条件を飲むなら、言ってやってもいい」

「問います。交換条件とはなんでしょうか?」

「うちの助手をやれ」

「熟考」


 助手。探偵の助手ということ。

 全ての技能はネットに接続すれば全てを習得できます。問題はないでしょう。住民票などの問題など、全ては児戯に等しく、私の手には問題などない。


「答えます。はい、YES、了承しました」

「じゃあ、教えてやる。面倒くさいから一回しか言わん」

「はい」

「愛、だろ」

「愛? 愛、愛」


 親子・兄弟などがいつくしみ合う気持ち。また、生あるものをかわいがり大事にする気持ち。 異性をいとしいと思う心。男女間の、相手を慕う情。恋ともいうべきもの。


「理解不能」


 自分にそのようなものを感じるものはない。そんなものは設定されていない。そんなものは理解できない。

 だが、なぜだろうか。納得できてしまっている。なぜだろう。なぜでしょう。なぜでしょう。


「じゃあ、教えたからな。行くぞ」

「求めます。説明を」

「教えるだけだ。約束は守ってもらう」


 そうですか。ならば、保留にしましょう。考えましょう。考えましょう。時間は、まだあるのですから。


「答えます。了承します。わかりました」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ああ、面倒だ。面倒だ。

 なぜ、俺が説明をしなければならない。知っているから? ふざけるな。ただ、知っているだけだ。説明などしらん。

 答えを求めたのはそっちだ。だから答えた。どうとでも解釈しろ。

 答えは与えた。俺は説明しない。お前たちで解釈しろ。

 俺は知るだけだ。答えるのは俺の仕事じゃない。答えるのは“あいつ”の仕事だ。

 俺じゃない。俺じゃない。

 “あいつ”の仕事だ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「むぅ、遅いですよ」


 私はあとからよたよたとやってきた黒崎さんに文句を言いました。でも、いつものように聞いてないようで無視されてしまいました。

 ちょっと、むっとして、言い返そうとした私に、あの人は、爆弾を落としました。


なんか、もう、本当にごめんなさい。

1か月も間隔があいてしまいました。本当ならもっと早く出したかったんですけど、予想以上に4月は忙しかったです。

それと、一定の間隔で来る、精神的な意味合いで、書けない時期というのにぶつかったのも大きいです。

未だそれは継続中で、また遅くなるかもしれませんが、これからも読んでくださると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ