祭、騒、指名手配?
前回から暫く経った日の事。
「突然じゃがゼロ。祭に行ってみぬか?」
「……………はぁ?」
どっかに行っていたかと思ったら帰ってきて早々良い笑顔でそんな事を言う奴がいた。
祭、騒、指名手配?
「なんだよ帰ってきて早々に。祭とかそんなもんやってんのか?」
「さっき民衆が話していたのを聞いただけじゃがな。隣町でやっているらしい。どうじゃ?」
「お前がそんなもんに興味持つなんて以外だな。別にいいぜ。そろそろ他の所も見てみたいって思ってたしな」
「それはよかった。では宿を引き払うでよいのか?」
「あぁ。俺はそれでかまわねーよ」
「では荷物をまとめ出るとするか主がまとめている間に余は宿代を払ってくるでな」
「了解。」
『あの件』から数日。他の国に入り適当な街に滞在していた俺とシャドウだったが、
俺は宿に引きこもり、シャドウの奴は朝早くからどっかに行って遅くに帰ってくるという状態が続いていた
(流石に帰ってきたら妙にいい香りがする、なんて事態はなかったが。)
俺がいくら何してるか聞いても、先に行こうと言ってもシャドウはずっと不機嫌そうに否と答えていた
そんなあいつが久しぶりに嬉々とした笑顔で『祭に行こう』と言い出したのは少し嬉しかった
(うん。本当に久々だからな……)
「ゼロ、用意は出来たか?」
「っ!! あぁっ万全だっ!!」
「何をどもっておる?用意が出来たなら行くぞ」
「あぁ、わかった」
〓〓〓〓〓
ガヤガヤガヤ
「へぇー。やっぱ祭って各所によって違うのな」
「それはそうであろう。西では穀物を投げ合う祭があるらしいしの。北では雪像を造り美しさを競うものもある」
「マジか!うわー。行ってみてぇー」
「先はまだまだあるしの。やりたいしたいことを順々とやって行けばよい」
「お前最近不機嫌だった癖に今日妙に上機嫌じゃねぇ?」
「そうか?気のせいだと思うぞ」
「そうかぁ?…んーまぁ…それはともかく腹減った。」
「それは余に何か買えと言っておるのか?」
「お前しか金持ってないだろうがよ」
「それもそうじゃな 何がいいのじゃ?」
聞かれて回りをクルクルと見渡す。すると、前々から食ってみたいと思っていた食い物の屋台を見つけた
それを指差して「あれ食いたい」と言ったら以外とあっさりと承諾。
シャドウはフィレオチキンとか言うやつを。俺はマリネベーグルとか言うのを頼んだ
「いいなこれ。他の屋台とか見ながら飯が食える」
「確かに。なんとも建設的な品物だ。」
「そうそう、それにこの料理って結構美味いのな なんつったけ?えーと…、フェスタバーガーだっけ?」
「うむ。この味は驚嘆に値するの。 正しくは『ファストフード』の『ハンバーガー』じゃ。」
「他のとこもこんな美味いのかな? あ。それ一口くれよ」
「さぁな。同じファストフードでもこのようにさっぱりしたものと脂ののった物とあるからのう。」
「ふーん?お。この味うめぇ。 こっちも食うか?」
「頂こう。 む?おぉ、此方も美味いのぅ」
「だろ? これはあたりだよなー―――――ん?」
『ねぇ……あの二人…』
『あ。あなたも気付いた?』
『当然よぉ』
「………シャドウ」
「わかっておる。我等は今、何かしらの理由で目視されている」
「もしかして政府の奴らが……」
「うむ。あれから日が経ったしの。可能性は無きにしもあらず、ということかの」
「だよな」
『あ、あのー……』
(ゼロ、身構えておけよ)
(わーってらぁ)
『写真、撮らせてもらってもいいですか?』
「「……………はい?」」
シャシン ……って、なんだ?
つかなんで急に?
んでシャシンってなんだ?
「悪いが我等はそのようなことを形容してはおら」
『キャーーーー!!!』
「なっ、なんだぁ?!」
「よ、余が知るものか……」
『恰好イイー!』
『あの低音声であの口調…素敵』
『小さい方の男のコもカワイイ…!』
「んなっ……おっ、俺は女だ!!」
『声もカワイイー!』
『大人でも子供でもない絶妙な時期ねー』
「ゼロ、諦めよ。この者等は我等の言う事を聞いてはおらぬ」
「はぁ?でもよ…」
「もう一度言おう。諦めろ。その証拠に主は気づいておらぬかも知れぬがこの者等は余が撮るなと言ったにも関らず撮っておる」
「そうそう、それだよ。そのシャシンとかってなんだ?」
「……………後で説明してやる」
「うん、頼む。………んでよ、どうにかしてここから離れようぜ」
「その意見意は全面的に肯定するぞ。余とてこのような不可思議な者らの中に長く居たくはないからの」
「だろ?―――まぁ、それはいいとしてどうやって抜け出すよ?」
「……ふむ。このような大衆の下で目立つ事をする訳にもいかぬしな」
「もう十分目立ってるっつーの」
「それとこれでは別問題じゃ。―――と、いうわけで強行突破にでるぞ。」
「は?……う、ぉ?!」
『キャーーーー!!!』
「さて、行こうか。ゼロ?」
「っお、おい!シャドウ?!」
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「ふむ。この辺でよかろう」
きゃあきゃあと叫ぶ人たちをようやく撒いたシャドウはやれやれと言う風にため息をついて俺を下ろす
「おっ、おま!あんな大勢目立っての前でお姫様だっこでって何考えてんだ?!」
「とりあえず主は落ち着け。混乱で言葉がおかしくなっておるぞ。」
「誰のせいだ!誰の!!」
「余のせいでない事は確かだな」
「どう考えても確実にお前のせ―――――ん?おい。あれ見てみろよ」
「む?……………『wantad ゼロ・サイク 賞金10,0000』ふむ。結構な高額賞金首だな。」
「………。なんだってこんな事になっちまったんだ…………」
「まぁ、終ってしまった事は仕方あるまい。こうなればとことん価格を上げてやろうではないか。」
「これ以上あげてたまるかっ!お前やっぱ馬鹿だ!!一週回って馬鹿だ!!!」
自慢気のしたり顔で笑う馬鹿な悪魔の頭をバシンッと叩く
それでも威力がない為にこいつは平気な顔でじぃっと指名手配の紙を見つめる
「流石に価格上げは冗談として置いておくとして。脱獄のみでこの額とは…悪魔持ちは違うのぅ」
「オイコラ。その悪魔本人が何言ってやがる」
「そうは言ってもな……永く存命している余だからこそ言える事だが他の脱獄した者はこんな高額ではなかったぞ?」
「そういうこと言ってんじゃねーよ。どうするんだよ。こんなもんが張り出されてんならマジ危ねーぞ?」
「ふむ、それもそうだのう…。ならばこう言う時に人間が使うという手を使ってみようではないか。」
「人間がよく使う手……ってなんだ?」
「変装だかイメージチェンジとか言うものじゃよ。有名な者がよく使う手らしいではないか。」
「そう、なのか?俺にはよくわっかんねけど……………一先ずどうするよ?変装するっても道具も服もねーだろ?」
「それもそうじゃな。…………ふむ。よし、こうするとしよう」
「あ?」
「このまま堂d『バキッ』痛っ?!なにをするゼロ!」
「この非常識!!どー考えてもそれ捕まる可能性しかねぇだろ!!」
「いやいや。考えても見よゼロ。
『高額賞金首がこんなところで堂々と歩いているわけがない!』と人間どもは思い込むかも知れぬぞ?」
「そんな勘違いする馬鹿いるわけねぇだろ!お前どんだけ阿保なんだよ?!」
ありえないほど馬鹿な事を言う阿呆は律儀なくらいつっこみを入れる俺の両肩を掴んで急に真面目表情で整った顔を寄せる
「な、なんだよ………」
「ゼロ。モノは試してみないと結果はわからぬのだぞ?否定する前にまずは挑戦じゃ。」
「お前もう黙れ!そんな美形なマジ顔でそんな途轍もねぇ馬鹿な事言うな!!」
少し心臓が動いた俺が馬鹿みていじゃねぇか!
……ん?なんで心臓って動くんだ?
いや、それ以前に俺等の……いや、俺の未来が前途多難すぎる。
また続く。今回はぎゃいのぎゃいの賑やかに騒ぎます