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異変、異形、異薬?


ほぼシリアス。注意





廃人ばかりの国にただひとりの正常者。

怖くて苦しくてどうすることもできなくて

少年は悲しく(たたず)んでいた


〓〓〓〓〓





「――――な、……」

「………これ、は…」


塀門の内側に入った時、俺とシャドウは愕然とした


「な、なぁシャドウ……これって、一体……」

「余に聞くな。混乱しておるのは余とて同じだ」


目の前に広がっていた光景。

それは干涸び、皮膚が崩れ(ただ)れた人間が辺り一面にひしめいていると言うものだった


「う、ぐ……」

「あまり見るな。主が見て堪えられるモノでは無い」

「シャ、ドウ…これ、まだ生きてるのか……?」

「生きて、はいるが…………最早廃人同然じゃ。

異臭も漂っておる」


俺は今酷い顔色なのだろう。

シャドウは俺の目を広い手で覆い俺の視界を奪う


「異臭、ってんな、…の臭わな……」

「それで正解じゃ。この様な所、早々に退場するとしよう」

「あぁ…」


「……………お兄さん達、余所の人?」


「?!」


声の突然した方をシャドウの手をどけて見ると子供がひとり、こっちを見て突っ立っていた


「あぁ、やっぱり余所の人だ…どれだけぶりだろう………ねぇ、良かったら僕と話して欲しいな。

お兄さん達も、ここのこの理由、知りたいよね?」

「………悪いが」

「いいよ。」

「ゼロ!」

「いいじゃねーか。少しくらいなら。な?」

「……主がそれで良いなら………」

「ああ。サンキュな」

「いや…。」

「じゃあ、こっち来て。僕の家に案内するよ」

「あ、ぁ……………」


いくら廃人と言っても人を踏む事を躊躇っているとシャドウが手を差し伸べる

それに捕まって何とか異形の間を渡って行く


「サンキュ…」

「ゼロ。余が抱えて行こうか?」

「いいや、大丈夫だ。行こうぜ」



〓〓〓〓〓

〓〓〓〓〓



俺達が案内されついて入った子供の家は想像よりも余程綺麗だった

棚がありその中に本とかで見たことのある薬草とかがずらりと並んでいる


「はい。どうぞ」

「あんがと」

「ありがたくいた……」


子供は飲み物を出すと自分も座ってえへへ、とはにかんだ


「本当に嬉しいな。

お兄さん達って、どこから来たの?」

「先刻お前と会ったところがあったろ。そこを逆に真っ直ぐ行った方からだ」

「えーと、つまり、南門の方かな?」

「きっとな。それよりも、アレ…どういう事なんだ?」

「アレね……イヤでも目にはいるよね………」

「あぁ。まともなのはお前だけなのか?」

「うん。まぁ…うん。そうだね」

「歯切れ悪いな…まぁいい。

あれは一体何なんだ?」

「あれねわからないんだ」

「わからない?」

「うん。ずーっと前に『まやく』って言うのが流行ったんだって」

「麻薬……!」

「それで、みんなおかしくなっちゃって、それでまた数年後にドォン!ておっきな音がして、みんな体がドロドロになったの。それなのにみんなまだ生きてるんだ。

おかしくなって体がドロドロになってるのにだよ?」

「……それは、………」


色々とおかしい。

確かにどっかでは爆弾の爆風だかなんだかに当てられてそうなるのがあるとは聞いたけど、それでもまだ生きている?麻薬でおかしくなってるのに?


考えているとずっと黙っていたシャドウが口を開いた


「………小僧、この茶はどこから?」


その質問を受けると子供はぱぁっ、と顔を輝かせて嬉々として話始めた


「そこの棚からだよ。ほら、お茶葉が並んでるでしょ?僕の母さんね、茶葉を集めるのが趣味だったんだ

でもこれは、特別なやつだから滅多に飲んじゃ行けないって」

「ふむ。だが小僧、これはお主が言う『皆をおかしくさせた』元の葉じゃぞ?」


イキイキと答えていた子供はシャドウの言葉を聞いて硬直する


「え…っ」

「マジか…!」

「まぁ、此度はゼロも未だ飲んでいなかったしな

次に客人が来た時は気をつけるがいい」


シャドウがそう言うと子供はガタガタと震え始めた


「え、おい……」

「……………来ないよ。余所の人なんて!

何年も何年も何年も何年も何年も何年も何年も何年も何年も何年も何年も何年も何年も待ってたのに来たのはお兄さん達二人だけなんだよ?

これから先どれだけ待っても来るはず無いよ!

ねぇ、お兄さん!お兄さんもここを出て行くんでしょう!?連れて行ってよ!

もうここはイヤだ!僕以外はみんなおかしくてみんな死んでる同然のところなんて!」


子供はそう言ってゼロにすがりつく様にしがみつく

シャドウはその子供に冷ややかな視線を向ける


「出てどうするのだ?」

「え…」

「この国を捨て外に出て小僧はどうするのだ?我等と来るつもりか?

それならばアテは外れる。

余はゼロ以外の者と行動を共にする気はない」


……………こいつ、傷心の子供にも容赦ねぇ

俺だって同じ気持ちだけどこんなボロボロの子供にあんなこと言う勇気は無い


「お兄さんも、同じなの…?」

「う……。……………」

「そっか………じゃあ、お兄さん達早く出たいよね?」

「無論じゃ。この様な所。一刻も早く立ち去りたい」

「本当にお前容赦ねぇな。オイ

ちったあ言葉を包め」

「あはは、こっちに来てよ。東門を開けるからさ。ちょっと先に行ってて?」

「お前は?」

「そこの道を真っ直ぐ行って、二番目の角を曲がったら一本道だから」

「了解した。早々に来る様願っておる」

「うん。じゃあ、後でね」


〓〓〓


「おめーよぉ、あのガキに容赦無さ過ぎじゃね?」

「いや……何と言おうか………若干被ってしまって」

「あぁ?」

「だから、あの小僧と余の愚弟が若干似てるんじゃよ」

「はぁ?おめ、弟いたのかよ………

………変人じゃ、ねぇよな?」

「何じゃ。その口振りでは余が変人の様ではないか」

「その若ぇ(しかもそれなりに美形な)外見で爺臭い口調でその上一人称が『余』の奴のどこが一体変じゃないって?」

「く…、口調は変えられぬし、外見はこの姿が気に入っておるのだ」

「だからって『余』はねぇだろ…」

「…様々な試行錯誤の下この一人称が合っているのだ」

「苦しい言い訳だなオイ………。お、ついたついた」


ぐだくだと話しながら歩いていると恐らくここが東門だろうと言う所につく

入って来た門と同じくでかい。


「これが開くのか……すっげーな。

んで、どうなんだ?その弟って。変人なのか?」

「変人じゃ」

「即答かよ。」

「何故か語尾に『ッス』などつけるし

女っぽい男とか男っぽい女とかのギャップが好きなど言いおるしあまつさえ殴り蹴りされ快感など抜かす」

「………確かに変人だな

(主に後者。)」

「そうであろう?」

「できれば会いたかないな。」

「滅多にこちらへ来る奴では無いからな。

余に余程の用がない限り会う事はないであろう」

「そうか。ならよかった。」


「お兄さん!」


「お、来たな」

「ごめんね。ちょっと戸惑っちゃって」

「なにやってたんだ?」

「うん?いろいろだよ

じゃあ、ちょっと待っててね!」


子供が建物の中に入ってしばらくすると、ごごご、と大きな音を立てて開き始めた

半分くらい開くと止まって建物の中から子供が箱を持って出て来た


「お兄さん、これあげるよ!

この先きっと役に立つから!」

「サンキュ…」

「うん。有効に使ってね?

お兄さん達はこれからどこに行くつもりなの?」

「とりあえず自然がある所がいいな。」

「あはは、ここら辺は四方自然しかないよ?」

「………」

「お兄さん?」

「な、なぁ。俺があいつを説得すっから、今からでもついてこねぇか?」

「ううん。やっぱり僕はここに残るよ。まだやる事が残ってるし」

「やる事?」


子供はにっこりと笑い俺らの背中をぐいぐいと押して外に出るよう催促する


「あ。それを開けるのは、この門から二十分くらい離れてから開けてね」

「? あぁ。わかった」



「あなたがたの旅路に、幸あれ」



〓〓〓〓〓


「……………あいつ、置いて来てよかったのかな?

あんな廃人だらけで、まともに動いてるのは自分だけなんてよ」

「……………。」

「俺、お前がなんて言ってもあいつを引きずって来るべきだったのかな」

「………さぁな。余には分からぬよ。

それよりもゼロ、あの小僧より貰い受けた荷物はどうした?」

「ん?あぁ。あるよ」

「そろそろ遠のいた事だ。開けてみるとしないか?」

「お前、澄ました顔しといて気になってたのかよ」

「五月蠅い。主が開けぬなら余が開けるぞ」

「あっ!おい、待てよ!

俺が受け取ったんだから俺が開ける!!」


ポロッ


「「あ。」」


箱の取り合いをしていると手が滑り地面へ投げ出される

………と、思うと、シャドウが間一髪の所で受け止めてくれていた


「ほっ…、よくやったシャドウ」

「構わぬ。さぁ、箱を開けようではないか」


勝手に箱を開けるシャドウに呆れながらも箱をのぞき込む。

箱の中には薬草の詰まった瓶がいくつか詰まっていた

それから、箱の脇の方に便箋が二つ、入っていた

片方の便箋には『お兄さん達へ』と書いてあった


「手紙……?」


ドォン !


「!!」

「う、うぉ!」


爆音がして、今度はシャドウが箱を落し、俺が受け止める


「あぶねー……って、おいシャドウ!」

「あぁ。掴まれ!」


ドォォン !


ドォォォン !


ドォォォォン !


「?!! シャドウ!先刻の方だ!」

「承知しておる!」


もう既に四回の爆音が響いている。あの距離からでも聞こえるって事はかなり大規模な爆発だ

急いで戻ると塀門の内側から黒い煙が上がっている


「な――――」



ドォォォォォン !



もう一度耳をつんざく様な爆音がして、塀門が崩れ落ちる

崩れ落ちると先刻までの街は無くなり、瓦礫の山となっていた


「シャドウ、あの子供……!」

「………。既に死んだと考えた方が利口であろうな」

「―――――!

あいつ、『やること』ってこれだったのかよ…!」

「ゼロ、その箱の中に手紙があったであろう?遺書か何かではないのか?」

「まさか。初対面の俺等に遺書なんて考えにくいだろ」

「あの小僧がこれを元から『最期』にするつもりだとしていたらない事はあるまい?」

「……まぁ、みてみるよ

あいつからの手紙なら結果的には遺書みたいなもんだしな」


『お兄さん達へ』と書いてある方の便箋を心持ち慎重に開けて中を見る

子供らしい少し大きな字で三、四枚だろうか。結構長い


『ぼくと話をしてくれて

 ありがとう。

 あの時いった通り、この国には

 もう何年も何年も何年も何年も

 お客さんが来なかったんだ。

 だからね、もうイヤになって

 イヤになって

 あの国を丸ごとなかった事に

 しようと思って、



 長いこと前から作ってたやつを

 今日、この街のあちこちにつけ

 たんだ

 でも驚いたよ。

 壊そうって思ったとたんに

 お兄さん達が来るんだから!

 考えてた事なんて吹き飛んで

 はしゃいじゃった。

 でも、背の高い方のお兄さん

 に言われて



 我に帰ったんだ

 やっぱりぼくはここにいよう

 って。

 そうそう。この手紙はついで

 でね、同封してる方が本命。

 野草の見分け方なんだけど。

 ぼくのあげた奴がどれに効く

 のか分からなかったり

 無くなっちゃったりしたら

 見てみて?



 きっと役に立つから。

 えっと、こんな長ったらしい

 文字を読んでくれてありがとね

 じゃあ、さようなら』



―――――っ!


「ふざけんな!!!」


手紙を握りつぶし破きたい衝動を何とか押さえて腹の底から大声を出す


「――あいつ!あいつ!本当に『最期』のつもりだったのかよ!」


やっぱり、やっぱりシャドウが、あいつがなんて言おうが無理にでも引き摺ってくればよかったんだ!

そうすれば俺達は、…イヤ

俺はあいつを見殺しにみたいな真似で死なせたりすることはなかったんだ


「やめよ。ゼロ」

「シャドウ!」

「過ぎたことは後悔しても致し方ないであろう」

「でも……!」

「厳しい言い方をすれば、小僧はこの結末を望んでおったのだ。

だからこそこの様な文を主に贈った

それを我等が小僧を無理矢理に救ってもただの我等の自己満足じゃ」

「……………っ

…お前は、本当に言葉を選ばないな」

「気に障ったのなら謝罪する…。」

「いや、事実だしな。

納得はできねぇけど理解はできる」

「そう、か…」

「で、も……バカだよ。あいつ、バカだよ………!」


こられるようにぐっと服を握る

そうしないと涙が零れてしまいそうだったから。


シャドウはもう何も言わなかった。

何も言わずに俺のとなりで佇んでいてくれた。


俺は、目を閉じた。


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