普通に表彰されました
街の広場に人が集まっていた。
いつもなら屋台と大道芸で賑わう場所だが、今日は様子が違う。
「静かすぎない?」
アイラが石畳を指でなぞりながら言った。
「うん。人の数の割に、服の擦れる感触が落ち着いてる」
「それ、感触で分かるものなのか?」とガチム。
「分かるでしょ?」
当然のように返された。
壇上では、街の役人が巻物を広げている。
ペルペチュアが小さく耳を澄ませた。
「紙の音が丁寧。公式行事」
「温度も高めね」
ヒンヤリが日陰と日向を交互に見て言う。
「人を長く立たせる気」
「匂いも整ってる」
ヌルが鼻を鳴らした。
「緊張と期待が混ざってる。祝賀寄り」
「祭りか?」
ガチムが首を傾げる。
その瞬間。
「――次に表彰されるのは!」
役人の声が広場に響いた。
「先日の地下水路崩落事故において、
迅速かつ的確な判断により、街を救った冒険者パーティ――」
五人は同時に立ち止まった。
「……今、音がこっち向いた」
ペルペチュア。
「視線も集まってきてる」
アイラ。
「体感温度、急上昇」
ヒンヤリ。
「匂い、完全にこっち」
ヌル。
「筋肉がざわつく」
ガチム。
「――ガチム一行!」
拍手が起きた。
どよめき。
歓声。
紙吹雪。
沈黙。
「……あれ、俺たち?」
ガチムが聞く。
「他に同じ名前の人いた?」
アイラ。
「いないと思う。音が完全に固定された」
ペルペチュア。
「でも、何したっけ?」
ヒンヤリが真顔で言った。
「水路、たまたま通っただけだよな」
ガチム。
「あの石、触ったら嫌な感触だったから動かしただけ」
アイラ。
「崩れる前の音が気になっただけ」
ペルペチュア。
「冷気の流れが変だったから止めただけ」
ヒンヤリ。
「血と油の匂いが混ざってたから、掘っただけ」
ヌル。
壇上に上がるよう促され、五人は並んだ。
「あなた方のおかげで、被害は最小限に抑えられました」
役人が頭を下げる。
「街を代表して、感謝と表彰を――」
メダルが首にかけられる。
「重さ、普通だな」
ガチム。
「表面処理は丁寧ね」
アイラ。
「金属音、悪くない」
ペルペチュア。
「冷たすぎない」
ヒンヤリ。
「匂い、無臭。好印象」
ヌル。
拍手がさらに大きくなった。
観衆の一人が呟く。
「……英雄だ」
五人は顔を見合わせた。
「英雄って、特別なことした人だよな?」
「うん」
「俺たち、普通だよな?」
「普通」
ガチムが代表して言った。
「なんか勘違いされてないか?」
役人が慌てて首を振る。
「いえ!事実です!」
「そうか」
ガチムは納得した。
「じゃあ仕方ないな」
表彰式が終わり、広場を後にしながら、アイラが言う。
「これ、次どうする?」
「普通に帰る」
「普通に飯」
「普通に次の依頼」
「普通に選別」
「普通に嗅ぐ」
背後で、誰かが言った。
「……英雄って、ああいうものなのか?」
五人は知らない。
自分たちが“本気”を出していたことも、
それが普通じゃなかったことも。
今日も、彼らは普通だった。




