全力本気スタンピード鎮圧です
ギルドの鐘が鳴る。
「スタンピード発生!北門から魔物の群れ接近!」
ざわめく街。新人五人は震えていた。
その横でガチム・キンニクスは腕を組む。
「安心しろ。筋肉は裏切らん」
新人①が目を輝かせる。
「はい師匠!上腕二頭筋“雷鳴丸”準備完了です!」
もう名前つけてる。
北門外。
黒い波のように押し寄せる魔物群。
ヒンヤリ・サラサラが空気に触れる。
「湿度上昇、体温帯の乱れ。今よ」
冷気魔法が一帯の温度を一気に下げる。
魔物の足が鈍る。
新人②が叫ぶ。
「温度差12度確認!快適圧力帯形成!」
何それ。
ヌル・フェチオが鼻をひくつかせる。
「右から酸っぱい恐怖臭。左は熟れすぎた焦り」
新人③も鼻を上げる。
「耳裏の匂いが荒れてます師匠!」
「嗅げ。匂いは流れだ」
斥候組、匂いで魔物の進路を読む。
完全に変態。
アイラ・スベスベリアは地面に触れる。
「表面ざらつき。滑走魔法、角度三度修正」
地面が絹のように滑らかになる。
魔物が一斉に転倒。
新人④が床を撫でながら感動する。
「これが……スベスベ理論……!」
「触れればわかるわ」
目が怖い。
中央でペルペチュア・オトミミが耳を澄ます。
ドドドドド――
魔物の足音。
「リズムが荒い。揃えなさい」
支援魔法が響く。
味方の足並みが揃う。
新人⑤がストレッチしながら叫ぶ。
「ポキッ……今の関節音、最高です!」
「いい音。続けて」
戦場でポキポキするな。
そして中央突破。
ガチムが叫ぶ。
「筋肉総動員!」
新人①〜⑤、同時に構える。
「三角筋“暁号”!」
「大腿四頭筋“烈風”!」
誰も止めない。
拳と魔法と冷気と滑走が一体化し、
魔物の波が崩れる。
その時、後方から巨大魔獣。
ボス個体。
ギルド員が青ざめる。
「無理だ!」
ヌルが低く言う。
「血の匂い、甘い。強い」
ヒンヤリが目を細める。
「温度、上がりすぎ」
アイラが呟く。
「皮膚、硬いわね」
ペルペチュアが微笑む。
「いい音、出そう」
怖い。
ガチムが地面を踏みしめる。
「全員、普通にいくぞ」
新人たちが頷く。
冷気で動きを鈍らせ
滑走で足を崩し
匂いで隙を読み
リズムを整え
筋肉で叩き込む。
最後に――
ばう!!
犬が飛び出す。
魔獣の喉元に噛みつき、
一瞬だけ動きを止める。
「今!」
ガチムの拳が炸裂。
ボス、沈黙。
静寂。
街が救われた。
新人たちは息を荒げながら笑う。
「これが……普通の冒険者……」
違う。
完全に違う。
ギルドマスターがゆっくり歩いてくる。
「……君たち」
犬を見る。
「その魔獣、統率に貢献したな」
一瞬の沈黙。
「ギルド公認としよう」
犬「ばう!!」
尻尾がちぎれそうに振られる。
新人たちは尊敬の眼差し。
「耳裏の匂い、極めます!」
「筋肉に名前、もっと考えます!」
「床、磨き続けます!」
「温度管理、命です!」
「関節音、研究します!」
完全に継承された。
夕暮れ。
ペルペチュアが小さく呟く。
「……悪くない音だった」
ヒンヤリが微笑む。
「今日はちょうどいい温度」
アイラが頷く。
「表面も整ってる」
ヌルが鼻を鳴らす。
「匂い、誇らしい」
ガチムが腕を組む。
「筋肉の反応が正しい限り――」
全員で。
「俺たちは普通だ」
遠くで新人たちがポキポキ鳴らしている。
街は平和になった。
だが変態は増えた。
――続く。




