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普通に石を拾いました


森の奥深く、パーティは尾根道を歩いていた。ヒンヤリ・サラサラは足を止め、石を見下ろす。

「……これ、持ち帰る」

目の前には直径一メートルを超える巨石。辺りには巨石破片、表面はひんやりし、掌で触れると重みがずっしり伝わる。ヒンヤリは手でなぞり、微細な凹凸に指先を沈める。

「冷たい……でも重さが指に馴染む……触れていると心臓が……」

彼女の胸が早鐘を打つようにドクン、ドクン、と音を立てる。宝くじの一等組違いの音のように、奇妙で跳ねる高低の振動が響いた。

ヒンヤリは思わず石を頬に押し当て、舐めそうになる。

「……あ、あ……」

「ヒンヤリ、やめて!」ペルペチュア・オトミミがすっと手を伸ばし、肩口から抱え込むようにして止める。

「駄目よ! 聴覚的にも危険すぎる!」

ヒンヤリは少し赤くなり、近くに落ちていた巨石の破片を拾いぎゅっと握りしめる。

「……ただ、温度を……確認したかっただけ……」

ガチム・キンニクスは胸筋を叩き、腕組みしたまま苦笑する。

「無茶はするな、筋肉の準備はまだ整ってるが、お前の心臓が飛び出そうだぞ」

アイラは小首をかしげて呟く。

「……ただの石を舐めそうになってるのね」

ヌルは鼻をひくつかせ、石とヒンヤリの周囲の匂いをかぐ。

「匂いは安定……でも心臓のリズム、少し慌ててる」

その瞬間、森の奥から太鼓と怒号が響く。部族が石を囲み、叫びながら迫ってきた。どうやら、この石は彼らのご神体らしい。

ヒンヤリは破片を抱え、即座に尾根道を駆け出す。胸の鼓動は宝くじの組違いの音のように、跳ね、響く。掌に伝わるひんやり感と微細な凹凸を頼りに、一歩一歩慎重に進む。

「進む……空気、温度、湿度……全て安定」

ガチムは胸筋を叩きつつ走る。

「守るぞ、俺の筋肉が安定している限りな!」

アイラは魔法書を片手に振り、枝を避けながらつぶやく。

「この振動……微妙に読む……危険」

ヌルは鼻をヒクヒクさせる。

「匂いは安定……だが怒りの匂いも混ざってる」

ペルペチュアは耳を押さえ、ヒンヤリの心拍を感じながら小声で注意する。

「その鼓動……宝くじの組違いの一等みたいに跳ねてる!落ち着いて!」

部族は追いかける速度を上げ、尾根道の段差や根を利用して飛び掛かろうとする。ヒンヤリは破片を守るため体を低くし、掌で石の重みを感じながら慎重に移動する。

森を抜け、川沿いに出たところで部族の追跡は途切れた。太鼓の音は遠くに消えた。パーティは息を整え、ヒンヤリは破片を抱きしめながら深く息を吐く。

「……普通に、最高の収穫」

ガチムは胸筋を叩き、笑みを浮かべる。

「筋肉も無事、石愛も無事……だな」

森に静けさが戻り、全員が次の本気冒険に向けて感覚を研ぎ澄ませているのは確かだった。


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