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魔王の、空腹が導く人生の羅針盤

「お腹が膨れるとやる気が出なくなる…まさか、この吹雪が悪しき魔王と化し、怠惰の城に引きこもっていた真の原因が、食べ過ぎだったとは!」


吹雪が、真剣な顔で朝食のマクドナルドのコーヒーをすすりながら力説する。


向かいに座る健太は、いつものことだとばかりに冷静にチキンマックマフィンを頬張っている。幼馴染のアリアは、ハッシュポテトを2枚つまんで、不思議そうに首を傾げた。


健太が呆れたように言う。


「あのさ、吹雪。昨日の今日で、いきなり『腹いっぱい食ったらバカになる』とか言い出すの、ちょっと極端すぎない? そもそも、魔王がお腹を膨らませてたら世界征服なんてできないでしょ」


「いや、健太先輩、それが違うんだ! 私はずっと人生で何かを成し遂げたいと思ってきたのに、なぜか行動に移せない。その大部分(70%くらい?)の原因は、お腹を満たしていたからだと昨日気づいたんだ!」


吹雪は熱弁を振るう。


アリアが「ふむふむ」と頷きながら、残りのハッシュポテトを健太のトレーから奪う。


「じゃあ、アリアがお腹いっぱいでも元気なのは、なんで?」


吹雪はハッとした顔でアリアを見た。


「それは…アリアは魔王じゃないからだ! 私は、この『腹を膨らませては、人生がダメになる』という事実に、昨日心が納得したんだ!つまりだ、空腹こそが活動の源! イライラも有効活用すれば、それは世界征服…いや、老後のための活動エネルギーになるのだ!」


吹雪は立ち上がり、マクドナルドの店内で大袈裟なジェスチャーをする。健太は周りの客に迷惑だから座れ、とばかりに吹雪の腕を引っ張った。


「で、その活動のために、電動自転車を買うか買わないかで悩んでたんだろ? 朝からマクドに来て、最終的に自転車の話にたどり着く思考回路が、相変わらず魔王っぽいけどな」


健太が冷静にツッコミを入れる。


吹雪は座り直し、真剣な顔で健太に語りかける。


「その通りだ、健太先輩。しかし、電動自転車は、通勤に利用しようとしたら月3000円の駐輪場代がかかるし、高いから、通勤電車代との差し引きで、元を取るのに14年もかかる計算なんだ」


アリアが目を輝かせながら言った。


「じゃあ、普通の自転車なら安いし、乗ると運動になるから、健康にもいいんじゃない?」


「その点では少しはマシだが、結局、今の原付きバイクが壊れた時に電動自転車をレンタルしてみて、使い勝手が良ければ購入、悪ければまた、原付きの代わりのバイクを買うのがベストな気がするんだ」


吹雪は自信満々に結論を述べた。健太はため息をつきながら言った。


「結局、レンタルで試すって結論か。まあ、それが一番現実的だとは思うけど、そこに至るまでの思考の迷走が、まさに吹雪らしいな」


「迷走ではない! 試行錯誤だ! これもすべて、怠惰な魔王からの脱却のため、そして理想の自分に近づくための、壮大な計画の一環なのだ!」


吹雪は胸を張り、残りのコーヒーを一気に飲み干した。


「これで、休日に食べ過ぎて一日を無駄にすることも無くなるだろう。朝マックでコーヒーだけ飲んで、家で自作したバケットサンドはリュックに入れて持ち歩き、お腹が空いたら外で食べる! これが、私の新たな生活スタイルだ!」


「あのさ、それってただの節約生活じゃない?」

健太がぼそっと呟いた。


「違う! これは『食べない』ことで『活動的になり、頭が働く』という、魔王吹雪が提唱する新時代の生き方だ!」


吹雪は立ち上がり、マクドナルドの出口に向かって歩き出した。アリアがその後に続き、健太もやれやれといった表情で後を追う。


「なあ、吹雪。結局、今日は何しに行くんだ?」

健太が尋ねる。


吹雪は振り返り、満面の笑みで答えた。


「もちろん、腹を空かせた魔王の探求の旅、そして、電動自転車や普通自転車のレンタルショップを探しにだ!」


「そこはまず、ネットで探せばいいのに…」

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