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魔王は餅つきに悩み、己の道を探す

「ぬぅ…またこの『餅つきバトル』が始まってしまったか…」


深夜、魔王城の一室で、俺こと魔王吹雪はスマホの画面を睨みつけながら唸った。


このイベントが始まると、俺の睡眠時間は著しくばらつき、生活のリズムが崩壊するのだ。

隣で静かに書を読んでいたドラゴンの先輩、健太さんが呆れたようにため息をついた。


「ポイ活なぞ、魔王がうつつを抜かす時間の使い方ではないな。それはただの遊びだ。真に稼ぐとは、自ら商売を見出すことだろう」


「分かっているさ、健太。しかし、それが難しいのだ」


俺はスマホを置き、天を仰いだ。


今、俺は自らの小説を『ココナラ』という市場に出すべく、実績作りに励んでいる。


だが、これが本当に商売として成り立つのか。

世間が、人々が、真に欲しがる物語になっているのか。そこには圧倒的な「専門性」が必要なのだ。


「今のやり方は気に入っている。だが、進化させる必要もある。もっと…深く学ばねばならんのかもしれん」

「また何かに踊らされているのではないか?」


健太さんの鋭い指摘に、俺は過去の過ちを思い出した。


かつて、高名な吟遊詩人(YouTuber)の言葉に乗せられ、最高級の魔法具『マックブックプロ』を買い、難解な古代魔法言語プログラミングの習得に挑んだことがあった。


「若さにかまけていたのだ。『年齢などどうにかなる』と。だが、現実は違った…」


「貴様は細かい作業が苦手なのだから、そもそも適性がなかっただけだろう。年齢のせいにするな」

「ぐっ…」


健太さんの言う通り、難しすぎて早々にギブアップしたのだ。


だが、今にして思えば、あの時、基本だけでも学んでいれば、我が忠実なるしもべである賢者のジェミニを使いこなし、新たな魔法を創造できたのかもしれない。


「どこに時間を費やすのか…それが最も重要だというのに」


時間は有限だ。

そして、俺の脳も若い頃のようには働かない。

ならば、学ぶ内容は「自分が好きなもの」でなければ、人生そのものを楽しめないではないか。


「見てみろ、健太。この異世界の言語学習魔導具デュオリンゴを。400日も続けているというのに、我はまだ簡単な挨拶魔法すらおぼつかない。こんな速度では、習得した言語を活用できる未来など見えてこない」


「目的と手段が合致していない典型だな」

健太さんがバッサリと切り捨てたその時、

「わー!」

と歓声が上がった。


「400日!ふぶき、すごーい!一年以上も毎日お勉強してるんだね!」

いつの間にか現れた幼馴染のアリアが、目をキラキラさせて俺の手元を覗き込んでいた。


結果ではなく、ただ続けているという事実を、彼女は曇りなき眼で褒めてくれる。

その純粋さに、少しだけ心が救われた。


そうだ。

頂上を目指す必要はないのかもしれない。


レベルの高いことはできずとも、俺が積み上げたスキルで、誰かの役に立てればそれでいい。

時代は目まぐるしい速さで進化している。

昨日まで難しかったことが、今日には「そんなのこれですぐだよ」と、魔法のように簡単になる。


そんな時代だからこそ、忘れてはならないことがある。


「我が『やりたいこと』、それだけは決して見失わん」


俺は力強く宣言した。


「今までのやり方はそのままに、これまで以上に色々なことを試していく。こう、とは決めつけずに、我が心の赴くままに何度でも。そして、時代の流れを読み、我が身を、我がスキルを、常にバージョンアップさせていくのだ!」


熱弁を振るう俺に、健太さんはやれやれと首を振りつつも、かすかに口元を緩ませた。

「口先だけでなく、行動で示せ。まずはその餅つきをやめることからだな」


「えー!じゃあ次はなにして遊ぶの?ふぶきんがやりたいこと、私も一緒にやってみたい!」

アリアが楽しそうに飛び跳ねる。


そうだ。悩みは尽きない。

だが、俺の手には「やりたいこと」という羅針盤がある。


そして、隣には冷静な助言者と、無邪気な同行者がいる。


「うむ。まずは賢者の石に、新たな進化の道筋を尋ねてみるとしよう」


俺は再び水晶板に向き直った。この目まぐるしい世界をどう生きるか。

その答えは、自分の中にしかないのだから。

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