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魔王、スマホ2台で世界征服を目指す

「ふははは!見よ、この二振りの聖剣スマホを!これで我が懐は潤い、いずれは世界経済すらも掌握してみせるわ!」


リビングのソファにふんぞり返り、古びたスマホと最新スマホを高々と掲げるのは、自称・暇を持て余す魔王、吹雪だ。


黒いジャージ姿が、その壮大な野望と絶妙なミスマッチを醸し出している。


「また始まったよ、吹雪のポイ活妄想が」


キッチンでプロテインをシェイクしながら呆れた声を出すのは、吹雪の(自称)眷属であり、現実的な視点を持つドラゴン(の血を引くらしい)先輩、健太だ。


彼はチラリと吹雪のスマホに目をやり、冷静に告げる。

「吹雪、その二刀流、昨日『なぜかリンクしなくなった』って騒いでなかったか?アカウント連携がうまくいかないと、結局は別々の作業が増えるだけだぞ」


「むっ…そ、それはだな、健太!あえて別々のアプリを攻略するための高度な戦略なのだ!いわば二つの戦線を同時に押し上げるが如し!」


吹雪は胸を張るが、その額にはうっすらと汗が滲んでいる。

「CM視聴系のアプリは移動中に片方で、もう片方ではポイントが溜まったらCMを見る別のアプリを…うむ、完璧な布陣だ!」


「へぇ、完璧ねぇ」

ふわりと現れたのは、二人の幼馴染であるアリア。彼女は手に持っていたタンポポの綿毛を吹雪の頭にそっと乗せると、にこりと微笑んだ。


「吹雪ちゃん、昨日TikTokライトの動画を流しっぱなしにして、お菓子食べながら『これが真の不労所得…』って悦に入ってたよ?」


「アリア!そ、それはだな、効率的な時間活用の一環であってだな…!」


健太はシェイカーをテーブルに置き、腕を組む。

「吹雪、そもそもその『聖剣』、維持費は計算してるのか?古い方はバッテリーもへたってるっていってただろ。Wi-Fiで運用するにしても、電気代はかかる。へたったスマホは1日5回充電するとして、月100円くらいか?古いスマホ本体の減価償却も考えろよ。仮に中古で1万円の価値だったとしても、寿命2年なら月420円。お前のポイ活収入が月1200円だとして、実質は…」


「ぐぬぬ…収入が月680円か…我が軍の兵站は思ったより厳しいのだな…」

吹雪はソファに沈み込む。


「いや、しかし!最小限で見積もったからだ!きっと月1500円くらいはいけるはず…!」


「問題はそこじゃないんだよなぁ」

と健太はため息をつく。

「お前、平日のポイ活可能時間、ちゃんと把握してるのか?」


吹雪は指を折りながら、ブツブツと呟き始めた。

「朝は2台稼働させる。これで約1時間はフル稼働だ。料理したり風呂に入りながら自動稼働させるからな。外出の時は1台だけだ。…チョコザップで1時間。朝の通勤電車でくじなどのポチポチ系で0.7時間。朝のブログ執筆中も1時間。帰りの電車も0.7時間。夜は寝るまで食事しながら2台を1時間…ふむ、2台フル稼働できるのは合計2時間か。TikTokライトとTikTokを流しっぱなしで『とりま2台』が2時間…」


彼女はハッとした顔で健太とアリアを見つめる。

「…ポチポチ系の、本当に画面を見ながら操作しないといけないポイ活は、1台しかできない。チョコザップのエアロバイク1時間と、電車での集中タイム(片手ずつ操作するとして)くらいしかないではないか!」


「結局、1台でやってた作業が2倍できるってだけだろ?手間も2倍だ」

と健太は冷静に指摘する。


アリアは

「吹雪ちゃん、頑張り屋さんだねー」

と言いながら、窓の外を飛ぶ蝶を目で追っている。


「うぐっ…確かに手間は増える…その手間と引き換えに得られるのが年間約18000円…年間で考えれば大きいが、日々の時間が…!ポイ活で一番改善したいのは、この時間効率なのだ!」


吹雪は再びソファから立ち上がり、仁王立ちになる。

「そして、やるからには!そのアプリが提供するポイントは根こそぎ獲得し尽くしたい!それが魔王の流儀というものだ!」


健太はやれやれと首を振る。

「その意気込みは買うがな。結局、SIMが必要な大規模サイトの元手0のポイ活はメインスマホ1台でやるしかないだろ。TikTok動画みたいに放置できるものは2台で時間を短縮できるかもしれんが」


「そうなのだ…それ以外に、この二振りの聖剣を同時に振るって時間短縮できる必殺技が…あまりないのだよなぁ…」

吹雪は再び二つのスマホを見つめ、うーむ、と唸った。


アリアが、くるりと吹雪の周りを一周し、言った。

「吹雪ちゃん、スマホ二つ持ってると、バッグにスマホ入れてイヤホンで音楽聴きながら、片方ではポイ活ができて便利じゃない?」


「アリア…それは普通のポイ活だ…。だが、確かに生活の質は上がるかもしれんな…」


魔王吹雪のポイ活による世界征服(我軍の小遣い稼ぎ)の道は、まだまだ試行錯誤が続きそうである。


とりあえず、今日のTikTokとTikTokライトのノルマ達成のため、吹雪は二つのスマホを並べて動画再生ボタンをタップするのであった。


その横で健太はプロテインを飲み干し、アリアはシャボン玉を飛ばして遊んでいた。

なんとも平和な魔王軍の日常である。

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