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85%くらい実話

虫の知らせ

作者: 青色豆乳

 その日、Kさんは寝過ごしてしまった。家を飛び出すとバス停まで走り、来たバスに飛び乗った。会社に遅刻のメールを打とうとしたら、仕事用の携帯を忘れているのに気がついた。取り敢えず私物の携帯で連絡をと思ったが、上司のメールアドレスを探している間に次のバス停が来たので降りた。


 Kさんは自分のしくじりを心の中で罵りながら、家まで走った。残暑が厳しくて朝から暑い日だった。会社の携帯は見つかったが、充電が切れていた。あんまりだった。Kさんは、自転車で駅まで走った。駐輪場代が会社から出ないので、いつもは自転車は使っていなかったが、バスを待つより早い。


 駅に着いたら、ちょうど電車が来ていた。会社に電話をかけようか、一瞬迷ったが電車に乗る方を選んだ。普段なら電話をかける判断をしたはずだったが、走って疲れてしまったKさんはそれを億劫に感じた。

 電車は混んでいた。女性が近くに立っているので、鞄の中の物を探してごそごそする動きは誤解されそうな気がした。Kさんは人が少なくなる駅まで携帯が出せなかった。

 3駅過ぎて、Kさんは座ることができた。私物の携帯には上司のメールアドレスの登録が無かったので、アドレスを手打ちしてメールを送った。

 Kさんはやっと一息ついて、ハンカチで顔の汗を拭いた。左手に持った携帯がメールの着信を知らせた。それは、届かなかった事を知らせるエラーメールだった。会社のドメインの綴りが間違っていた。


 今日は本当にどうかしている。Kさんはもう一度メールを出した。

 

 エラーメールが返ってきた。


 上司の名前の方も間違っていたのだろうか。Kさんはうんざりしながら再度メールを送った。


 またエラーメールが返ってきた。


 焦れば焦るほど上司のメールアドレスが思い出せない。Kさんは朝起きてからの立て続けのアクシデントに頭を抱えてしまった。


 誰かに声をかけられたような気がして、Kさんはハッとした。

 少しぼんやりしてしまっていたようだった。熱中症かもしれないと思ったKさんは、慌てて鞄の中から水のペットボトルを取り出して飲んだ。

 水分をとったら落ち着いたのか、鞄の中にモバイルバッテリーがあるのを思い出した。会社の携帯を充電し、起動した。会社からメールが届いていた。

 

 それは上司が今朝亡くなった事を知らせるメールだった。

お読みいただきありがとうございました。

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