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磁石人形(マグネットマリオネット)

 指先にチリチリとした電流が走る。それを、向こうの机に置いてあるみかんに軽く飛ばしてみる。

 ミカンは、まるで私の意志に応えるかのようにコロコロと転がってくる。

 こんな能力だ。まあ、こたつから出て、わざわざみかんを取ってきてもいいんだけど。


 小学生の頃、大雨の中で傘を差して帰宅していた。傘の骨の先端に稲妻が走るのが見えた瞬間、視界が真っ白になった。何が起こったのかはわからない。

 ただ、気がつけば、あの日以来、身体から電流のような、磁力のようなものが飛ばせるようになっていた。


 みかんが甘い。そういえば、転がすと甘くなると言われていたっけ。たまには力を使ってみると、こんな些細なことにも面白い発見があるものだ。

 スマホがピロンと音を鳴らす。通知は企業や昔のグループからだろうと思い、習慣でアプリを開く。だが、思わぬ人物からのメッセージを見つけた瞬間、心臓が跳ねた。

 期待していなかったと言えば嘘だ。けれど、しばらく口も聞いていなかったから、もうダメかなと半ば諦めていたのも本当だった。

 すぐにでも内容を確認したいところだが、落ち着こうとして1回こたつから出て、みかんを1つ取ってからまた入りなおした。皮をむいて食べてみて、さっきより甘いんだか酸っぱいんだか考えようとしてみたけれど、そんな余裕がはなかった。


 いつだったか、何となく…いや、期待していたんだ。少しの期待を込めて、微弱な電流をピッと飛ばしてみた。それがあいつに当たったとき、あいつは振り向いた。それだけで、十分だったんだけどな。


 他のメッセージを適当に既読を付けてから、本命を開く。

 一言あってから、二行目に続く。三行目はない。


 グッとスマホを握りしめた。短い文章だったけれど、それでもいい。今はこれで十分だ。少しずつ、少しずつでも歩み寄れるのなら、それで――

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