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Over&Over-時を超え、選び直す-  作者: うしご
第一章 旅立ち
21/24

1-21.天然危険物

 ギルドマスターの部屋を後にした俺たちは、リリアの元へ向かい、ルプス村の調査に行くことを伝えた。


リリア「ルプス村の調査に向かわれるのですね……。今まで多くの冒険者が消息を絶っている危険なクエストです。決して無理をせず、必ず無事に戻ってきてください」


 彼女の言葉には、静かながらも強い想いが込められていた。


クライス「心配してくれてありがとう」

リリア「こちらは、クライスさんとシロさんのギルドカードです。身分証明として使えるので、ギルドで情報を集める際は、受付に見せるとスムーズに話が進むと思います」

クライス「そうか、助かる」


 ギルドカードを受け取りながら、改めてこの世界の制度に順応していく必要があると感じた。


リリア「どうか、お二人にドライアドの加護があらんことを……」

クライス「ありがとう」


 そう静かに祈るように言うリリアの姿を見て、俺は軽く頷き、シロと共にギルドを後にした。


 ギルドの外に出ると、相変わらずの活気に満ちた景色が広がっていた。道行く人々の話し声や、露店の呼び込みの声が賑やかに響く。ほんの少し前にも見た光景のはずなのに、妙に懐かしく感じるのは、ギルドの中で交わされた話のせいだろうか。


クライス「なんとか無事に登録はできたな」

シロ「緊張して、どっと疲れたよ~」


 シロが大げさに肩を落としながら伸びをする。その姿に思わず苦笑しつつ、俺は視線を前に向けた。


クライス「そうだな……。けど、残された時間は短いからな。馬車に乗るまでは、もうひと踏ん張りだ」

シロ「じゃあ、買い出しの前に馬車だけでも手配しとく?準備に時間がかかるかもしれないし」


 的確な提案に、俺は思わず感心する。


クライス「さすがはシロ大先生。視点が素晴らしいな」

シロ「クライス、うるさい」


 シロは照れくさそうにしながらも、軽く俺の肩を殴ってきた。その仕草が微笑ましく、俺は少しだけ気が緩むのを感じた。


 他愛もないやり取りを交わしながら、俺たちは門番が立つ、街の門へと向かった。


 門に到着すると、狐獣人が警備に立っているのが見えた。


クライス「すまない。ギルドマスターからの書状を持ってきた。馬車の手配を頼めるか?」


 俺が書状を差し出しながら声をかけると、狐獣人は俺の顔を見た瞬間、目を見開いた。


狐獣人「お、お前……さっきの犯罪者!!」

クライス「俺は犯罪者じゃない!ちゃんとギルドマスターから許可をもらっている!」


 そう言い返しながら、書状を突き出す。だが、狐獣人はなおも疑いの眼差しを向けたままだ。


狐獣人「本当か?怪しいな……おい、チン!こっち来てくれ!」


 狐獣人が呼びかけると、人間族の男が小走りでこちらに向かってきた。その姿を見て、俺は思わず眉をひそめる。


クライス「やっぱりお前か……」

チン「貴様は、さっきの変質者!!」

クライス「俺は変質者でもない!!」

シロ「クライス、落ち着いて!!」


 シロが俺の腕を抑えて、なだめるように声をかける。


狐獣人「チン、この書状なんだけど、確認してくれ」

クライス「言葉は慎重に選べ!」

チン「何を言っているんだ、こいつは?」

狐獣人「チンは、この世界に来る前は刑事だったんだぞ。こちらでいう騎士様のような職業だ!おかしな真似はやめておけ」

チン「刑事を舐めてもらっては困る」

狐獣人「そうだ!刑事チンを舐めるな!」

クライス「黙れぇぇぇぇ!舐めねぇよ!!」

チン「こらこら、刑事チンではない!チン刑事だ!」

クライス「どっちでもいいわ!!」

シロ「ちょっとクライス!!」


 シロの腕に力がこもり、俺の動きをさらに押さえつける。

 そして、シロは呆れたようにため息をつき、冷ややかな視線を門番の二人に向けながらぼそりと呟いた。


シロ「……さすがに、"デカ"を名前の前に持ってくるのはどうかと思うけど……」

クライス「とにかく!もう喋らずに、今すぐ書状を確認して、馬車の手配をしてくれ!」


 二人は腑に落ちない表情で、手にした書類をまじまじと見つめる。しばらくするとチンがゆっくりと口を開いた。


チン「……うん、この書状は確かにギルドマスターからの正式なものだな」

狐獣人「納得いかないけど、そうみたいだね」


 そう言うと、チンは門の脇にある休憩所らしき扉の中へと入っていった。しばらくして、門の内側に馬車の停泊用の目印となる柵を運び出してくる。


狐獣人「あぁ!中に出しちゃダメ!今日はあれの日だから、外に出して!」

チン「あ、なるほど!すまん、今日は森の日だったな」


 ……もうダメだ、こいつら天然の下ネタ製造機だ……気にしたら負けだ……。


狐獣人「馬車の準備までしばらくかかるから、後でまた声をかけて」

クライス「分かった。準備が整ったら戻ってくる」


 不毛なやり取りに、一気に疲れた気がする……

 本来なら物資を整えた後に、過去に戻るポイントを更新しようと考えていたが、もし過去に戻らなければならなくなった場合、門番たちとまた同じやり取りを繰り返す羽目になる。そう思うと、自然と深いため息が漏れた。


(過去に戻るポイントは、ボルグと対峙する前だし、ここらへんで一度更新しておくか……)


 俺は、懐中時計を取り出し、過去に戻るポイントを更新した。 操作を終えると、隣にいたシロが話しかけてきた。


シロ「ねぇクライス、何から買いに行く?」

クライス「そうだな……買うとしても、ポーションと軽食ぐらいか」


 俺の答えに、シロは驚いたように目を丸くし、少し怒ったような口調で言った。


シロ「それだけでいい訳ないでしょ!ルプス村では、S級に匹敵する魔物が出るかもしれないんだよ!装備や魔法の準備もしておかないと!」

クライス「すまん……確かに装備は整えた方がいいな。だが、魔法の準備は必要なのか?俺は攻撃魔法使えないぞ」


 そう言うと、シロは少し得意げな表情を浮かべながら答えた。


シロ「スペルシートっていう、使い切りの魔法が売られてるんだ。魔導書よりもお手頃で、誰でも使えるから、何枚か持って行った方がいいと思うんだよね」

クライス「そんな便利なものが売ってるんだな」

シロ「うん。ただ、スペルシートは作った人が込めた魔力によって威力が全然違うから、同じ魔法でも値段に天と地ほどの差があるんだよ」

クライス「なるほどな。それなら、ボルグからもらった金を上手く使わないとだな」

シロ「ボルグさん、お金までくれたの!?」

クライス「あぁ。資金を集めている間に死なれては困るからってな」

シロ「ちなみに、どのくらい貰ったの?」

クライス「硬貨の価値が分からねぇからな……シロ、確認してくれないか?」


 そう言いながら、俺はボルグから受け取った袋をジャラリと鳴らした。中には金属の硬貨がいくつも入っているが、正直、俺にはそれがどれほどの価値を持つのかさっぱり分からない。

 シロは袋を受け取ると、中を覗き込み、硬貨を掌に並べながら感嘆の声を漏らした。


シロ「すごい!ざっと計算して……20万ゼニ―くらいかな!」

クライス「それって、多いのか?」

シロ「うん!大金だよ!……オイラの手持ちだけじゃ、ちょっとした物しか買えなかったけど、これだけあればしっかり準備できると思う。でも、良い装備や強力なスペルシートを買うってなると取捨選択は必要かな……」

クライス「そうか……クエストが完了したら、ボルグに礼を言わないとだな」

シロ「だね!」


 サッと大金を渡してくれたボルグの懐の深さに、改めて感謝の気持ちが込み上げる。


シロ「そしたら、宿泊費なんかはオイラの手持ちから出せると思うから、ボルグさんからもらったお金は準備に全部使っちゃおうか」

クライス「いいのか?」

シロ「これから命を懸けた戦いになるんだから、少しでも装備を整えたほうがいいでしょ?」

クライス「……すまん。シロ、ありがとう」

シロ「気にすんなよ!」


 シロはいつもの無邪気な笑顔を見せながら、ポンと俺の肩を叩いた。その気遣いが嬉しくて、俺も自然と笑みがこぼれる。


クライス「よし!それじゃあ、まずはポーションを買いに行くか」

シロ「賛成!ポーションの切れ目が黄泉への入り口って言うしね!」

クライス「なんだそりゃ」

シロ「えっ!?知らないの?」


 そのまま何気ない会話を交わしながら俺たちは、アルボルドの薬屋へ向かった。

貴重なお時間を使って、お読みいただきありがとうございます。


少しでも「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価をしていただけますと、大変うれしく今後の励みになります。

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