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ある双子と環境  作者: ピチャ
第一章 聖任務
3/3

婚約者

 と、扉がノックされた。

「・・・はい?」

応答をすると、少し遠慮がちに声が聞こえてきた。

「ライチ様、私です」

「イチハ。入れ」

部屋に入ってきたのは、清潔感があり育ちが良さそうな少女。

ライチの婚約者、イチハである。

「先の出撃、お疲れさまでした」

「ああ」

「ここに来るまでにも、皆さまにお褒めの言葉をいただいておりました。直接ライチ様に告げればよろしいのに、皆さま遠慮深いですね」

「皆はイチハと話したいのだろう。僕の功績など話題にすぎないさ」

「話題で片づけてよいものだとは思いませんよ」

「そう言ってもらえるのは、有難いね」


 ライチはイチハと話すときも変わらない。

真面目で冷静。自分を作ってなどいない。

生来からこの気性なのだろう。となると軍事の指揮者というより参謀になりそうだが、この若者は鍛錬も欠かさず、手合わせを行わせてもなかなかの成績をもつ。

頭でも身体でも勝てない者がときどき腐っているのは、苦笑いするしかない。


 そんなライチに婚約者として宛がわれたのがイチハである。

彼女はいわゆるお偉いさんの娘で、器量が良い。

軍関係のことについては学んでいないので、余計な口を出されることはないし、それでも理想を知っているので、机上の話はできる。

ライチに従うだけではなく、自分の考えを話す。ライチから見て、一人の人間である。男を狂わせるような「女」ではない。

そういうところがライチに合い、同じように一部の女性から嫉妬されている。


 「何か、私にお申し付けたいことはございますか?」

「いつもと同じように、鍛冶屋に装備の手入れを頼みたい。それから、怪我をした兵士たちへのケアも頼む。夕方からは会議になり留守にするので、そのように周知してくれ」

「わかりました」

「それから、軍事関係の新しい書が出ていたら取り寄せておいてくれ」

「この間5冊も取り寄せたばかりではないですか」

「必要なところは読んだ」

「わかりました・・・が、一人のときくらい、休まれてはいかがでしょう」

「休みもとっている。一人のときに新しい情報を仕入れないと、皆に共有できないんだ」

「役割分担が必要かと思います」

「他の人は他のことをやっている。僕は動いた分、頭を使うのが性に合っているんだ。いずれルーティンになって、それなしではいられなくなるだろう」

「わかりました。疲れが溜まっているように見えたら、お声かけしますね」

「ありがとう。そうしてくれ」


 イチハはメモをとる。こうしていると、婚約者というより秘書に近いのかもしれない。

しかしこれは仕事ではない。この二人は、このようにしているのが合うのだ。

周囲から見たら仕事であるのかもしれない。評価者がいないだけだ。

評価したい者がいたら評価し、金になる。それだけの話。

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