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いきなりのピンチ

ゲームが開始スタートして二日目。

神殿の食堂で朝食をとったあと、第四魔術師団とともに訓練を受けるため、馬車で王城へと向かう。


魔術師団の訓練場は屋外にあり、そこには黒のローブを纏った団員たちがすでに整列していた。

第四魔術師団は黒、第三騎士団は赤……といったように、自身がどこの所属であるかが一目でわかるよう、制服を色分けしているのだ。

そのため、神殿所属である聖女候補は、神官たちと同様に白を纏わなければならなかった。


一人だけ真っ白な自身のローブ姿が、ひどく浮いているような気がする。


(ゲームだと気にならなかったけど、王家と神殿の関係って微妙みたいだし……)


神殿の役割の一つに『神託の儀』というものがある。

それは、自身の持つ魔力を目覚めさせ、鑑定する儀式だ。

このシャトイール王国では、全ての国民が十五歳になると神託の儀を受けることが義務付けられている。

私も儀式を受け、目覚めた魔力が聖魔法だと判明すると、その場で自動的に神殿の所属とされてしまった。


魔物討伐に必要不可欠な聖女を有していることでもわかるように、神殿はかなりの権力を持っている。

王家と敵対しているわけではないが、神殿側が干渉を嫌うため、神殿内の出来事には王家も迂闊うかつに手を出すことはできないらしい。


ゲームでは何とも思わなかったことでも、実際に体験してみると違った景色が見えてくる。


(それでも、ここでうまくやっていかなきゃ)


私は息を吸い込み、緊張で震えそうになる身体に力を入れる。

すると、後ろからポンポンと肩を叩かれた。


「シュミットさん」

「ぎゃっ!」


振り向くと、そこにはイアンが立っていた。


「あ、驚かせちゃってごめんね?」

「い、いえ!今日からよろしくお願いします!」


ヒロインらしからぬ悲鳴をあげてしまった私は、慌ててミアらしい明るい笑顔で挨拶をする。


「………もしかして、緊張してる?」

「え?」

「なんだか表情が固いからさ」

「あ………」


どうやら笑顔がうまく作れていなかったらしい。


「まあ、初日は緊張するよね。大丈夫!少しずつ慣れていけばいいよ。僕もフォローするから」

「………はいっ!」


さすがは、長男キャラのイアンだ。

おかげで不安だった気持ちが少しだけ楽になる。


(こんなに素敵な人と恋愛できるだなんて……)


そんなことを考え、心の中でニマニマしてしまう。


「でも、ちょっと意外だったな」

「何がですか?」

「昨日、あのサディアスに舌打ちしたって聞いたから……。シュミットさんは強メンタルの持ち主なんだと思っていたよ」

「あ、あれは、違うんです!その……忘れてください」


うまい言葉が何も出てこず、最後は小さな声で呟くしかできなかった。

イアンはケラケラと愉快そうに笑っている。


(これで好感度が下がったりしないよね?)


ゲームのシナリオとは違う出会い方をしただけで、マイナス加点されてしまったのではと勘繰かんぐってしまう。


ここはゲームの世界だが、言葉の選択肢が表示されることもなく、実際の会話はゲーム通りにはいかない。

そして、私に対しての好感度がゲージで表現されることもない。

彼らの言動や態度がゲームと同じかどうかで判断するしかないのだ。


(これ以上、シナリオから外れないようにしないと……)


私はそう決意を新たにする。


「それじゃあ、そろそろ皆にシュミットさんを紹介したいんだけど……あいつ、まだ来てないな」

「あいつ……?」

「ああ。サディアスがまだなんだよ」

「…………」


イアンのその言葉に、内心げんなりした気持ちが湧き上がる。

一応、謝罪の言葉をもらったが、昨日の一連のアレコレで、すっかりサディアスには苦手意識が芽生えてしまっていた。


「あ!やっと来た……」


イアンの視線の先を追うと、そこには昨日ぶりのお色気美形がこちらに向かって来るところだった。

しかし、その表情は昨日よりもさらに険しい。


「遅いぞサディアス!……って、何かあったのか?」


サディアスの表情にイアンも気づいたらしい。

そんなイアンの言葉に返事もせず、サディアスは私の真正面でぴたりとその歩みを止める。


またしても、サディアスと向かい合うことになってしまった。

しかし、昨日とは違い、睨むというよりは探るような視線を向けられる。


「ミア・シュミット。今から取調室へ来てもらおう」

「………へ?」


間抜けな声が自身の口から漏れた。


(トリシラベシツ……とりしら……取り調べ??)


少し遅れてサディアスの言葉の意味を理解する。


「どういうことだ!?」


私が何かを言う前に、焦った様子のイアンがサディアスに問いかけた。


「先ほど、王城内への侵入者が捕まった。その者がミア・シュミットとの関係を訴えている」

「………は?」


今度はイアンの口から間抜けな声が出る。


「いわく、彼女の恋人であると……」


サディアスの言葉にイアンは目を見開き……私のほうへ顔を向けた。


(コイビ……恋人!?)


待って待って待って!本当にちょっと待って!

恋人なんていたら、私はここで好感度がどうこうなんて悩んでない!


「あ、あの、違います!私に恋人なんて……うわっ」


しかし、私が否定の言葉を口にしている途中、首の後ろが引っ張り上げられる感覚がした。

いや、実際に首の後ろの襟部分が引っ張り上げられているのだ。


「な、何っ!?」


必死に顔を後ろに向けて確認しようとするが、位置的に見ることは叶わない。


「話はあちらで聞く。行くぞ」


サディアスはそう言うと、もと来た方向へ歩き出す。

すると、見えない何かの力によって、私は後ろ向きに引き摺られていく。


「サディアス!乱暴なことは……」

「縛られないだけ有り難いと思ってくれ」


二人のやり取りで、どうやらこの首根っこ部分が引っ張られているのはサディアスの仕業しわざであることを知る。

おそらく、私が逃げないように、彼が何かしらの魔法を使っているのだろう。


(待って……私、どうなるの?)


あまりに突然の出来事に呆然としながらも、困惑したようなイアンの表情がひどく目に焼き付いたのだった。

続きは明日から毎朝8時頃に投稿していきます。

よろしくお願いいたします。

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