表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/31

神殿へ

読んでいただき、ありがとうございます。


※今話からミア視点に戻ります。


よろしくお願いいたします。

面談の担当者が応接室に現れると、サディアスとイアンは退室し、残された私はやっと面談を受けることができた。

これから私は第四魔術師団の訓練に参加し、聖女として認められるよう励むこととなる。


この世界では、高度な聖魔法を使える者のことを聖女と呼ぶ。いわば、職業名のようなものだ。

そして、聖魔法は魔物の核を破壊するのに有効で、魔物討伐に聖女の存在は欠かせない。

そのため、魔術師団は聖女ともに魔物の討伐へ向かうのだ。


面談を終えると、王城を出て再び馬車に乗り込んだ。そして、今度は王都にある神殿へと向かう。

神殿は王城からそれほど離れておらず、十分もかからないうちに到着した。

白を基調としたシンプルな造りの建物がいくつもあり、色鮮やかなステンドグラスが目を引く。


すると、ふわふわな若草色の髪と琥珀色の瞳を持つ美少年が、神殿の入口で私を待ち構えていた。


「あんたが聖女候補さま?」


彼は白の神官服に身を包み、胡乱うろんげな表情でこちらを見つめている。


(あっ!エイベルくん!)


それは、スイパラの登場キャラの一人で、サディアスと同じサブキャラである神官のエイベル。

神官といっても見習いから昇格したばかりで、年齢もミアより年下の十六歳だ。


同じサブキャラなのにエイベルのことだけ詳しい理由は、実は彼がスイパラの隠し攻略キャラだから。

四人の攻略対象者それぞれとハッピーエンドを迎え、そのセーブデータが揃うことで、新たにツンデレ枠のエイベルルートが開放される。


「ったく、何で僕が案内係なんてしなきゃならないんだ」


ぶつぶつと文句を言い続けるその姿もセリフも、ゲーム画面で見ていたエイベルそのままで、きちんとシナリオ通りに進んでいるのだと安心した。


といっても、私は積極的にエイベルを攻略するつもりはない。

まあ、年下があまり好みではないという理由もあるが、攻略キャラ全員と同時にハッピーエンドを迎えるのはさすがに難しいと思うからだ。


私は、四人の内の誰か一人と愛し愛され幸せに暮らし、最終的には孫を抱ければいいなと思っている。


「僕の名前はエイベル。見ての通りここの神官だよ」

「聖女候補のミア・シュミットです!よろしくお願いします!」


気怠けだるそうな表情でゲーム通りに名乗ってくれたエイベルに、ミアらしく元気に挨拶をする。

どんなにエイベルの態度が悪くても、好感度を上げれば彼がデレデレになることを知っている。

そのため、彼の態度を不快に思うどころか、ニヤけてしまいそうになる表情を押し留めるのに必死だった。


「ほらっ!案内するから、さっさと付いてきて」

「はい!」


まず案内されたのは、入口から左手にある建物。ここには神殿で働く人たちが暮らしており、許可がなければ外部の者は入れないらしい。

聖女候補は神殿所属のため、これからはここで暮らすことになる。


「ここがあんたの部屋。荷物はあらかじめ運んでおいたから」


与えられた部屋は一人で過ごすには十分な広さで、ベッドとクローゼット、それにドレッサーなども備え付けられていた。

その後は、食堂や風呂などの共用スペースを順番に案内してもらう。


「最後は礼拝堂に行くよ。そこに神官長様もいらっしゃるはずだから」

「…………っ!」


エイベルのその言葉に、思わず息を飲む。


(いよいよ会えるんだ……)


その神官長が攻略キャラの一人なのだ。

私は緊張と興奮でソワソワし、左手の指先にくるくると自身の髪を巻き付ける。

そんな私の姿をエイベルがジロリと睨んできたので、慌てて何でもない風を装った。


礼拝堂はこの広大な敷地の中央に位置しており、早朝から日没までならば誰でも自由に出入りすることができるそうだ。

両開きの巨大な扉を開くと、思ったよりもはるかに高い天井。そして、ステンドグラスの窓からは陽の光が差し込み、荘厳な空気が辺りに漂う。

並べられたベンチタイプの椅子に信者らしき人は誰も座っておらず、祭壇の前に一人の男性が佇んでいた。


「ああ、来ましたね」


銀髪に明るい空色の瞳、白磁のような肌を持つ美しい彼は、ステンドグラスから降り注ぐ光を浴びて神々しいまでに輝いている。


「神官長様。聖女候補様をお連れしました」


先程までの生意気な口調はどこへやら、エイベルがかしこまった態度で神官長に頭を下げる。

そんなところもゲームと同じだった。


「ご苦労様、エイベル」


そうエイベルに声をかけたあと、空色の瞳が私に向けられる。


「はじめまして、神官長のレジナルドと申します」

「聖女候補のミア・シュミットです!よろしくお願いします!」


今日だけで何度目になるかの自己紹介……。

それでも、ミアのキャラを忠実に守り好感度を上げるため、私は大きな声で明るく挨拶をする。


「ふふっ、元気いっぱいですね」


口元に手を添えて、レジナルドがクスクスと笑う。


(はあ……キラキラしてるぅ)


エイベルとは違い、レジナルドは裾の長い神官服を身に纏っている。

そこに中性的な顔立ちも相まって、レジナルドの笑顔は儚げで美しい。


ゲームのレジナルドは、神官長という立場もあってか好感度が上がりにくいキャラだった。

そのため、コツコツと何度も声をかけ、少しずつ恋愛関係へと発展していくのだ。


「何か困ったことがあれば、いつでも相談してくださいね」

「はい!ありがとうございます!」


これで、ゲーム開始すぐに出会える攻略キャラ全員と、無事に顔を合わせることができた。

残りの二人とは、もう少しストーリーが進んでから顔を合わせることになる。


(なかなか順調なんじゃない?)


この時、好調な滑り出しに満足していた私は、自身の厄介な体質のことをすっかり忘れ去っていたのだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ