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後方腕組み保護者面

本日で『小説家になろう』に投稿を始めて二年になりました!

いつも読んでくださる皆様のおかげで、二年も続けることができたのだと思います☆

ありがとうございます!!

今日も今日とて朝から豪奢な馬車が神殿へとやって来た。

そんな状況にすっかり慣れてしまった私は、軽い調子でサディアスに挨拶をする。


「おはようございまーす」

「ああ……おはよう」


なんと、珍しいことにサディアスが挨拶を返してくれたのだ。

彼も私とのやり取りに慣れてきたのかもしれない。


そして、乗り込んだ馬車が走りだすと、先に口を開いたのはサディアスだった。


「昨日、一晩考えてみたんだが……」

「何をです?」

「君が恋愛を望むことについてだ」

「…………」


いや、もっと他に考えることがあるだろう。

そうは思ったが、とりあえず話の続きを促す。


「たしかに、執着されやすい特殊な人間だからといって、恋愛を制限されるいわれはないのかもしれない。しかし、恋人を望むことは危険な目に合う確率を上げることに繋がる。だからといって、君の要望を俺がさまたげる権利なんてものはないのだろう」

「そ、そうですね」


珍しくよく喋るサディアス。

どうやら、結構な熱量を持って、真剣に考えてくださったことが伺える。


「そこで、君がどこで誰とどのように恋をするのか……それをそばで見守らせてもらうことにした」

「へ?」

「それならば、君の身の安全は保証される」

そばで見守るって、えっと……どのくらいの距離感で?」

「君の真後ろが理想なんだが……」

「いや、おかしいでしょ!」


真後ろにサディアスがいる状態で、攻略キャラの好感度を上げる……絶対におかしい。あと、普通に気が散る。


「だが、相手が執着心をうまく隠すような人物だったらどうする?」

「そ、そんな人を好きになんてなりませんよ」

「なぜ、断言できるんだ?外面がいい奴なんて大勢いる。……まあ、俺ぐらいになるとわかるがな」

「へぇ……」

「経験値が違う」


なんとなく自慢げな口調のサディアス。

まさかストーカーの経験値の差でマウントを取られるとは思わなかった。


「君が恋をした相手……その裏の顔を知る手立てが君にはあるのか?」

「…………」


サディアスの言わんとしていることはわかる。

相手が貴族であったなら外面がいいのは当たり前。

平民である私がストーカーにころっと騙されてしまうことを心配しているのだろう。

それに、貴族同士の繋がりか何かで、相手の素性や評判を調べることだってできるのかもしれない。


しかし、私が恋愛をしたいと思っているのは攻略キャラたちのみ。

彼らがストーカーになるような男性ではないことを、ゲームをプレイした私は知っている。


ただ、それを証明するには、前世の記憶とゲームの知識をサディアスに明かさなければならない。

……さすがにそんな話を彼が信じることはないだろう。


「その男が安全かどうか、俺が確かめてやる」


結局、サディアスからの提案をうまく断ることができないまま、馬車は王城へと到着した。



◇◇◇◇◇◇



「本日より一週間、第四魔術師団と我が第三騎士団の合同演習を行う!」


声高らかに宣言をしたのは、柔らかな金の髪に翠の瞳を持ち、背が高く筋肉質な体躯の美丈夫。

そう、彼こそが攻略対象者である第三騎士団団長のチェスター・モンテスだった。

今日から始まる合同演習が、彼との出会いイベントとなる。


(ついに始まった!)


期待に胸を膨らませながら、離れた位置に立つチェスターを見つめる。

実は、四人の攻略キャラの中で一番の恋人候補がこのチェスターだった。

華やかな見た目とは裏腹に、真面目で実直な性格がとてもいい。


(もちろん見た目も素敵だけどね)


そんなことを考えながら、チェスターに熱い視線を送り続ける。


黒のローブを纏う第四魔術師団の団員たちと、真紅の騎士服を着用した第三騎士団の団員たちが、騎士団棟の訓練場に整列している。

そんな中、一人だけ白のローブを纏う私の姿はきっと目立っていることだろう。


初めて第四魔術師団の訓練に参加した時は、この白いローブ姿が浮いているような気がした。

しかし、今ならわかる。これは、ヒロインが攻略キャラの目に留まるために必要不可欠なものだったのだ。


特に、合同演習は人数が多い。攻略キャラがヒロインを見失ってしまえば、ストーリーに不都合が生じてしまうだろう。

その証拠に……ほらっ、チェスターが隣に立つイアンに何やら言葉をかけながら、こちらを指差している。

おそらく、私のことを何か話して……それより、チェスターとイアンの絡みを生で見られるなんて最高過ぎない!?


興奮で自然と鼻息が荒くなる。


チェスターとの出会いイベントで、この二人の絡みを見た記憶はない。

おそらく、騎士団長であるチェスターの隣には、魔術師団長であるサディアスが立っていたのだろう。

しかし、理由わけあって副団長のイアンが隣に立つこととなり、このような素晴らしい光景を目にすることができたのだ。


(………あっ!)


チェスターとイアンが並んでこちらに向かって来る。


まずは、いつもの元気いっぱいで明るい自己紹介をしなければ……。

初対面の印象から失敗するわけにはいかない。


「騎士団長、彼女が合同演習に参加する聖女候補です」


イアンに紹介された私はにっこりと笑顔を浮かべ、チェスターに向けて口を開く。


「はじめま……」

「彼女の名はミア・シュミットだ」


しかし、私の声に被せて、艶やかな低い声が私の真後ろから響いた。

私は後ろを振り向き、自己紹介の邪魔をしたサディアスを睨みつける。


そう、今朝のサディアスの提案……『私をそばで見守るために真後ろに立つ』を有言実行しやがったのだ。

それが、挨拶をするチェスターの隣にサディアスがいない理由だった。


「はじめましてシュミット嬢。僕の名はチェスター・モンテス。ウェバー殿もよろしく頼みます」

「ああ」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします……」


せっかくの自己紹介がサディアスと一括ひとくくりにされてしまった。


邪魔だ……。腕組みしながら保護者面をするサディアスが思った以上に邪魔だ。


しかし、出鼻を挫かれたぐらいで諦める私ではない。


「あの!実は団長にお伺いしたいことがありまして!」

「僕に?……何かな?」

「近距離攻撃が苦手なので、団長からコツをお聞きできたらいいな……なんて」


上目遣いでチェスターを見つめながら、ちょっぴり甘えた口調で問いかける。


チェスターを攻略するポイントは『話題』選びだ。

彼は幼い頃から剣術一筋で、会話の選択肢から剣術に関するもの……例えばトレーニング方法や名剣の歴史などを選べばすぐに好感度が上がるキャラだった。


「聖魔法の近距離攻撃かい?」


予想通り、チェスターの瞳がキラキラと輝く。


聖魔法の近距離攻撃といえば、剣術と動きが似ていることは周知の事実。

遠距離攻撃が得意な私が、近距離攻撃もマスターしようとしている理由は、魔物討伐の成功率を上げることもそうだが、チェスターとの話題作りのためでもあった。


「そうなんです!どうしても狙いからズレてしまって」

「ああ、それはきっと……」

「体の軸がブレている」


すると、盛り上がりそうだったタイミングでサディアスが会話に割り込んでくる。


「だから剣先もブレてしまうんだ」

「そ、そうなんですね……」


とりあえずサディアスに返事をして、再びチェスターに向き直る。

しかし、チェスターの瞳は興味深そうにサディアスへと向けられていた。


「ウェバー殿は剣術にもお詳しいので?」

「元は騎士志望でしたから……」

「そうだったのですか!」


サディアスの言葉を聞いた途端に、チェスターのテンションが一気に上がる。


「となると、シュミット嬢は下半身を鍛えることから始めるべきではありませんか?」

「いや、そもそも彼女は体力からして足りていない」

「それなら、基礎メニューに少々工夫が必要かもしれませんね!」


私を置き去りにして、二人の会話はどんどん盛り上がっていく。


「あとは、食事にもこだわりたいところですが……」

「それは、こちらに任せてほしい」

「ああ、失礼。すでに食事メニューには気を遣ってらしたのですね」

「食事は基本ですから」


結局、嬉しそうにサディアスと会話をするチェスターの姿を見つめることしかできなかった。

ついにストックが切れました……。

次話から2日に1回投稿となります。すみません。


6月3日(月)朝8時頃に投稿予定です。

よろしくお願いいたします。


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[一言] 普通にストーカーの素質あるよあなたと言いたい
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