メリッサの提案
「メリッサおばさん、今日も大繁盛だったね。まっ、当然だよね。メリッサおばさんと母さんの料理は、最高だもの」
怒涛のランチタイムが終り、いったん店を閉めて遅いランチタイム。
わたしたちも「おふくろ亭」の店内で食事をするのである。
マイクは、食事が終わったタイミングでそんなことを言いだした。
「マイク、そんなに褒められたらお礼をしないといけないね。なにか欲しいものはあるかい?」
「メリッサ、いいのです。甘やかさないでください」
メリッサは、基本的にはマイクに弱い。
訂正。彼女は、マイクを溺愛しまくっている。彼女の溺愛っぷりは、ある意味ではわたし以上かもしれない。
「カヤ、いいんだよ。マイクは、遊びたいだろうに毎日こうして手伝ってくれているんだ。それにもうすぐ五歳の誕生日だろう? プレゼントだけでなく、美味しいものを食べに行こう」
「メリッサおばさん、ほんとうに? だけど、メリッサおばさんの料理より美味しいものってあるのかな?」
「マイク、心配しなくても大丈夫だよ。世の中には、いくらでも美味しいものや変わった食べものがあるからね。わたしもそういうのを食べて勉強しているんだよ。ところで、カヤ。あんたもなにか欲しいものがあれば言いなよ。そうだ。こんどの休みにマーレの街に買い物に行かないかい? 定期市が催されるだろう? 調味料や食材も仕入れたいからね。いつものようにトッドじいさんのところで馬車を借りてね。早朝に出発して一日定期市をまわり、マーレの街で夕食を食べてから帰ってくればいい」
「やった!」
マイクは、大喜びである。
とはいえ、席を立って飛んだり跳ねたりするわけではない。整った顔立ちに満面の笑みを浮かべるだけである。
彼は、年齢のわりには落ち着いている。ガサツなところがほとんどない。
彼は、頭の回転がはやくて早熟である。「マイクは、二度目の人生でも送っているのでは?」、とときどき考えてしまう。
そういうストーリーの小説を読んでから、余計にそんな想像をしてしまう。
「ふたりとも、そのときまでに欲しいものを考えておきなよ」
そのメリッサの提案は、厚かましいと思う反面すごくうれしい。
そして、楽しみでもある。
マイクよりわたしの方が楽しみにしすぎてはしゃいでいたかもしれない。
じつは、マーレの定期市が大好きなのである。
マーレの町はおおきい。このサムズ王国の第二の都市なので、町じたいの規模がおおきいだけでなく、人口も多い。
定期市は、街の中心部にある記念公園で開かれる。そこには、サムズ王国だけでなく他の国の人たちも売り買いにやって来る。毎回、多くの人でにぎわっている。
ほんとうにさまざまな店や屋台が並んでいるので、一日中すごすことが出来る。三日間行われるけれど、三日間だって楽しめそう。とはいえ、いつも一日しかすごせない。当然のことながら、たった一日では時間が足りない。
いつもまわりきれず、残念で口惜しい思いをしてしまう。
今回は、出来るだけ多くの店をのぞいてみたい。
ひそかに決意してしまった。