アンディに迫られ、そして……
テーブル上のものを片付けるふりをし、厨房に行こうとした。
勢いよく立ち上がった拍子に、アンディの手がわたしの手から離れた。
そのままテーブル上のものを胸元に抱えられるだけ抱え持ち、彼に背を向けて歩き始めた。
気持ち的には、駆けだしたつもりだった。
「おいっ!」
その瞬間、すぐうしろで椅子が倒れ、テーブルが床をすべる大きな音がした。
その音が耳に入ってきたときには、うしろから両肩をつかまれていた。そして、すごい力で体ごと振り返らされていた。気がついたら、彼にがっしりと両肩をつかまれた状態で彼の美貌を見上げていた。
「ずいぶんとご無沙汰なんだろう? こんな田舎では、遊べる男などいやしないからな。おっさんとじいさんばかりじゃないか、ええっ?」
またしても葡萄酒のにおいが鼻にまとわりつく。
アンディに両肩をがっしりつかまれ、とらえられている。それはまるで肉食獣に捕らえられた小動物だ。
恐怖心からくるパニックで、どうしていいのかわからない。
胸元に抱えている葡萄酒の瓶やグラスや数枚の皿が滑り落ち、床にあたった。
「ガチャン!」
グラスや皿の割れる音が、「おふくろ亭」の店内にやけにおおきく響き渡った。そんな気がした。
(アンディは、どうしてこんなことをするの?)
バカな問いだとはわかっている。男性は、性欲を満たしたいのだ。
たとえわたしのようなレディであっても、男性はみずからの欲を満たす道具にしたいのだ。
「順番は違うが、結局はうまくおさまる。だから、なっ、いいだろう? さきにヤルことをヤッテおけば、責任や義務はあとからついてくる。だから、うまくいくわけだ。おれもきみもな」
体は硬直しているけれど、だんだんパニックがおさまってきて頭がクリアになってきた。
そうなると、アンディのわけのわからない持論にいろいろツッコみたくなった。
もっとも、言葉は出てこないけれど。
「カヤ、なにかあったのかい?」
その瞬間、裏口の扉がきしむ音がし、メリッサの声が聞えてきた。
彼女が戻ってきてくれたのだ。
それはまさしく、わたしにとって最高のタイミングだった。




