私の師匠(予定)は伝説的魔女様!
主人公は魔力のある村娘です。が、主役は魔女と(元)勇者です。久しぶりに書いたのでお手柔らかにお願いします。
昔から私にはおかしなものが見えた。どうおかしいのか。それを上手く説明するのは難しいけれど、普通の人には視えないものらしいと言う事だけは確かで。私はいつしか村から少し離れた小屋で生活するようになった。家族は優しい。生きていけるように手伝ってくれる。だから、寂しいなんて気持ちは、贅沢だ。
「そこの少女。この辺りで銀髪の、紫の目を持つちょっと口の悪い、でも心底お人好しの男を見かけなかったか」
「え…?」
そこの少女と言うのはおそらく私の事だろう。この辺りに他に人なんて見かけない。しかし、なんて綺麗な人だろう。私は生まれて初めて見たと思うくらい綺麗な人に驚き過ぎてしまった。
「ふむ。いやなに、不審者ではないぞ。ただの魔女だ」
「魔女!?」
魔女って、魔女ってあの!?
「二百年前に勇者様と聖女様、エルフの尊きお方と魔王を倒したと言われている、あの魔女様ですか!?」
「まぁ概ね間違ってはおらん。して少女、先の質問に……」
「サインを頂いてもよろしいでしょうか!!」
「…いや、ただの魔女だぞ。腹黒聖女とあの高慢エルフではないんだが」
腹黒?高慢?いえ、そんな事はどうでもいい。
「私、子供の頃から絵本の魔女様のファンでして…神木を守る為に戦うシーンなんかもう最高でしかなくて!」
「神木…?あぁ、それは違う。その木に生息するアメジドリが私は好きなだけでな。誤解だ少女よ」
「セナと言います!魔女様!」
「分かった。分こうたよ。サインだな、してやろう。だから落ち着いて私の質問に返答をおくれ。この辺りに銀髪…かは分からないが、ちょっと口の悪い、ものすっごいお人好しの何かしらがおらぬか?」
魔女様が書いてくれたサインは達筆過ぎて私には読めないけど、憧れの魔女様のお願いに私は自分のおかしな力を使う事に決めた。
「そのお人好しって方のお名前は?」
「…ふむ、そなた魔力持ちなのは分かっておったが、何かしら使えるのか?」
「あはは、失せ物探しに使ってた事しかないのでお役に立てるかは分かりませんが」
魔女様は少し考えた後、ふわりと柔らかく笑った。
「クルーゼル。勇者クルーゼルだ」
「勇者様…でも、その、勇者様は人間、でしたよね…?」
とっくに亡くなっている筈だ。私の力は生きてるものにしか使えない。幽霊様だったら、見つける事は出来ない。
そう魔女様に伝えると魔女様は指先で何か模様を描いた。するとそこには何かしらの文字っぽいものが書かれている。
「高慢エルフがクルーゼルが転生したと言ったのだ。だから探している。伝えられなかった事を、伝えたくて」
泣き出しそうな顔で微笑む魔女様に私は决意して、地面に枝で模様を描き始めた。
「眼か」
「はい。分かりやすい方が視えやすいので」
「独学なら大したものだ。ふふっ、私がもう少し若ければ弟子にしてやっても良かったぞ」
「え!?本当ですか!?」
「うむ」
「魔女様まだまだお若いです!どうですか!私家事出来ます!お師匠様!!」
「お、落ち着こうか?術式どうした」
「僕のシルだ!!!」
その時何かが私の顔面に激突してきた。
「いった!!」
「ぽっとわいた子供が僕のシルの弟子になるなんて認めない!」
「………もしかして、クルー?」
魔女様が大事そうに抱えてくれた鳥さん。紫の綺麗な羽を持つ、アメジドリだ。
「何でアメジドリに生まれ変わったの?前世、良いことをした貴方は何になるか選べる筈だから簡単に見つかるって高慢エルフが言ってたのに…もしかして、私に見つかりたくなかった…?」
普通の女の子の様に涙ぐんで話す魔女様に私は一瞬焼き鳥にしようかな、と思うくらいムカッとしちゃったんだけど。
「違う!僕は…僕はあれだけ君を愛していると言いながら、原因はあれど、他の女と結婚した。もうシルに嫌われていると思ったんだ。だから、君が好きなアメジドリになれば、シルヴァに、好きになってもらえるかと思って、ただ、そう、死ぬ時に思ってしまって…」
その言葉を聞くと、魔女様は鳥のくちばしにちょんと口付けた。
「クルーが生きている間に言えなかった。好きだよ。無理矢理あの腹黒聖女の旦那様にされちゃったから、言えなかったけど、今はもう言える。クルーが好きよ。小鳥になってもね」
聖女様は王女様でもあって。勇者様は聖女様と結婚して王様になって末永く幸せに暮らしたと言うのが絵本に書いてある事だったけど…。
「君の魂の根を握られて居たんだ。結婚しないならシルを輪廻の輪から外すと言われて…それでも僕は君だけを愛していたよ。あの女には触れていないけど、旅に出たシルにはわからなかったよね。ごめん」
は、腹黒聖女だ!!
「ありがとうセナ。セナのおかげでクルーに逢えた」
「では是非弟子に!!」
「君には感動の再会をした二人をしばらく二人きりにしてあげようという心は無いの」
「ふたり」
「シル、この子性格あんまり良くないよ」
「クルー、そんな事言わないで。セナ、必ずまた会いに来るから、その時は君…ごほん、そなたを弟子に取ろう」
「やったー!言質取りましたよ!?」
「息災で待っていてくれ。この老婆にも教えてやれる事はあるだろうから」
「あ、普通で良いのに。イメージ作りですか?無理しないで下さいね?」
しばらくして、私の家には美人の師匠が来て。
その肩には常に口が悪いけど、師匠にだけ心底優しいアメジドリが居る。
因みに聖女はまだ転生していません。当分難しいです。それだけ悪い事をしたので。勇者と聖女は白い結婚でした。聖女は悔しながら違う男の子を孕み、産みました。