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008 ニ度目の呼び出し


 アイテムボックスを手に入れたフィリップは、今日の探索はここまでにしてモンスターを倒しながら来た道を戻っていた。


「やっぱりないか~……リビングアーマーの兜は持って歩けばよかったな~」


 ダンジョン内のドロップアイテムは、どういうシステムかわからないけどしばらく放置すると床に吸い込まれることは実証済みなのだが、兜は欲しかった模様。コンプリートしたかったと思われる。

 ちなみに宝箱に入っているアイテムは、次に来た時には補充されていたり違う物が入っているけど、お金や回復アイテム以外は使い道が思い付かないのでいつもそのままにしている。


 リビングアーマーの兜はこの日は諦め、次回からは地下3階を拠点にして、レベル上げに精を出すフィリップであった。


「これ……どうやって装備したらいいんだ??」


 リビングアーマー装備をコンプリートしたフィリップは、サイズがまったく合わないし装備の仕方もわからなかったので、泣く泣くアイテムボックスの肥やしにしたのであったとさ。



 昼間は仮病を使って眠り、夜にはダンジョンでレベル上げをするフィリップの毎日。

 レベルが上がったことで日に日にダンジョンまで辿り着く時間が短縮されていたので、そろそろ地下4階に挑もうと考えてから眠ったら、お昼近くにエイラに起こされた。


「お体の具合が悪いところ申し訳ありません」

「ふぁ~……なんかあったの? ふぁ~……」

「陛下がお呼びです。必ず連れて来るように言われていますので、準備のほどを」

「父上が? なんか怒られるようなことしたっけ……ちなみに用件は聞いてる??」

「存じ上げておりません」

「行くしかないか~」


 どうもフィリップは皇帝と会うのは緊張するから行きたくないみたい。前回呼び出されたのもエイラとやっちまったからだったので、怒られると思っているらしい。

 ぶっちゃけ、仮病を使って一日中寝てることにしているのだから、怒られても当然なのだが……


 久し振りに綺麗な子供服に袖を通したフィリップは、エイラを伴って颯爽(さっそう)と歩く。だが、道行く人がフィリップが通り過ぎるとコソコソやっていたので気になる模様。

 なので挙動不審に歩きながら執務室に入ったら、皇帝にまた膝の上に乗せられて話をする。


「なかなか派手に遊んでいるらしいな……」

「……はい??」


 皇帝の冷たい声に、フィリップは夜遊びがバレたのかと思って声が上ずった。


「エイラ以外に手を出すなと言っただろう」

「手を出す?? ……してないしてない! 誰がそんなこと言ってるの!?」

「侍女や騎士たちだ」


 まさかの冤罪にフィリップは焦りまくり。これはフィリップに近付いた貴族の侍女や女騎士がなかなか落とせなかったから、送り込んだ家長に「体の関係を築いた」と噓の報告をしたことが始まり。

 元々手癖の悪い噂が流れていたから家長はそれを信じてしまい、「うちの子、第二皇子とデキてるんやで~」と周りに言いふらしたのだ。しかし、他の家も同じことをやっていたので「お前んとこもやったんか!?」ってなったんだって。

 そこで娘を問い詰めたところ、噓だと聞かされたけど面子があるので引くに引けない。幸いフィリップは部屋から出て来ないし否定もしないので、噂が風化する作戦を取ろうとしたが、風化するどころか広まり続けているらしい……


「いや、城内全ての女を抱けるわけないじゃん!? それに町娘や奴隷なんて会ったこともないよ!? 城にいてどうやって会うの!?」


 なので、貴族たちは尾ヒレを付けまくって発生元を隠す作戦に出たらしい……


「信じていいんだな?」

「その噂を信じる人のほうがどうかしてません?」

「わかった。噂を広めている者には死んでもらおう」

「やりすぎじゃない??」


 不敬罪に値するから罰は当然でも、フィリップ的には死人は出したくないみたいだ。


「てか、僕のことはどう言われてもいいんじゃない? ダメ皇子でいたほうが、お兄様の邪魔にならないし」

「しかし、それではフィリップが侮辱され続けるぞ?」

「僕なら大丈夫。お兄様が無事に跡を継いでくれるほうが嬉しいしね」

「……本当によいのだな?」

「うん!」


 フィリップの覚悟に、皇帝は優しい顔になって頭を撫でた。フィリップは「そんな顔もできるんだ」と嬉しそうに受け入れたのであった。


「そろそろ本題に入ろう」

「へ? は、はあ……」


 けっこう重めの話だったから噂話の件で呼び出されていたと思っていたフィリップは、これより酷いことがあるのかと予想しながら聞く。


「近々、神殿で魔法の適性検査が行われる。その日までに、できるだけ体調を整えておけ。多少体調が悪くても出席させるからな」

「は、はい……」


 しかし、噂話よりたいしたことでもなかったので、フィリップはすごすごと帰って行くのであったとさ。



 自室に戻ったフィリップは、パジャマに着替えてベッドに飛び込むと適性検査のことを考えていた。


「これがあったの忘れてたよ。こないだの誕生日も、皇子なのに兄貴とエイラしか祝ってくれなかったし……僕が仮病使ってるのが悪いのか。友達もいないし……そういえば、このキャラって動物しか友達がいないんだったな。今度、小鳥でも見付けたら捕まえてみるか……」


 ボッチには少し悲しくなったフィリップであったが、頭を振って気を取り直す。


「そんなことより! 神殿に行って適性検査なんて受けたら計画が狂ってしまう。兄貴と戦う時に初めて氷魔法を見せたほうがカッコイイと思うんだけどな~。さて、どうしたものか……」


 フィリップは悪知恵を振り絞り、魔法適性検査に挑むのであった。


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