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011 悪役令嬢


 フレドリクのあとに続き、庭園を抜けた先の噴水広場に移動するフィリップたち一同。噴水の前のテーブル席には金髪の頭にドリルをぶら下げたような少女が座っており、メイドと何やら楽しそうに喋っていた。

 ひとまずフレドリクはフィリップたちを待たせて少女の元へ駆けて行き、しばらくすると手招きして呼ぶので、全員で向かった。


「こちらは、エステル・ダンマーク。ダンマーク辺境伯の御令嬢だ」

「フィリップ殿下。お久し振りでございますわ」


 フレドリクが紹介するとカイたちを無視して、フィリップだけに向けて笑顔でカーテシーをするエステル。第二皇子がいるのだから、当然の対応だ。


「あら……またお隠れになってしまいましたわ」

「フィリップ。お姉さんになる人に失礼だぞ~?」


 しかし、フィリップはエイラの後ろに隠れて覗き見ている。


(うお~! かわいい~! てか、笑顔がなんて怖くてかわいいんだ!!)


 どうやら、急にアイドルが現れた感覚になったからビビッて隠れてしまったらしい。


(てか、初めて会ったんじゃなかったんだな。そういえば……この子、何度か見たことあるかも? あっ、兄貴と仲良さそうにしていた子か。記憶が戻る前に会ってたんだな~。その時もお母さんの後ろに隠れてたから、いまの行動はベストなんじゃね? あ~。かわいい。胸はまだぺったんこだ~)


 フィリップが出て来ないのでは仕方がない。エステルはカイたちに挨拶して、世間話に変えていた。


(うお~。ですわですわ言ってる。この歳からこんな口調だったんだ。それにしても、兄貴は悪役令嬢と仲いいな。なんでここからあんなに拗れるんだろ……目が怖いからか? そこがいいのに~)


 ゲームの中ではフレドリクとエステルは言い争っている場面が多かったので、観察するように見るフィリップ。しかし、お茶に誘われたら「疲れた」とか言ってこの場を立ち去った。


(まだ我慢だ。ここで何かするとシナリオが変わってしまうかもしれない。いっそのことストーリーを楽しんで、こっぴどくフラれた悪役令嬢を助けるのも面白いかも? それなら弱っているから簡単に落とせるかもな~。あの大きな胸に……グフフ)


 ゲスイことを考えて、夢やあそこが膨らむフィリップであったとさ。



 それから数日、フィリップは偶然を装いフレドリクと会ってはエステルを探していたけど会えずじまい。さすがにフレドリクも、フィリップがこんなに出歩くことに不思議がっている。


「最近、体の調子がいいのか?」

「うん。まぁ……お兄様は、最近はいつも剣の訓練ばかりしてるけど、大会か何かあるの?」


 フィリップも怪しまれたと思ってすぐさま話題を振った。


「大会とかじゃなくて、近々帝都学院の入学式なんだ。皇族なんだから、下々の者に弱い姿を見せられないから訓練していたんだ」

「帝都学院……あ、だからこないだカイたちも城にいたんだ……」

「よくわかったな。みんな同い年だから、準備のために早く帝都に入っていたんだ」


 完全に忘れていたフィリップ。ここ帝国では、10歳になった皇族や貴族の大半は春から帝都学院に通うのだから、乙女ゲームの主要キャラは今年が入学なのだ。


「そうだ。春からはフィリップにあまり会いに行けなくなるんだ。すまないな」

「あ、りょ、どうして??」

「ここからでも通えるのだが、皇族は寮に入るのが通例なんだ」

「それじゃあ仕方ないよ。お勉強、頑張ってね」

「もっと寂しそうにしてもいいんじゃないか~?」

「うわ~。寂しいな~。遊びに行っちゃおっかな~??」


 取って付けたような言い方は不発。あわよくば帝都学院のキャンパスに潜り込もうと思ったけど、学校行事を除いて関係者以外入れない決まりなので断られてしまったフィリップであった。



 それから数日が過ぎ、フレドリクの入学式になったので、フィリップも皇帝と共に体育館みたいな建物の2階にある超VIP席で眺めていた。


(お~。兄貴が主席になってる。あ、そんな設定だったな。これから最後まで1位を取り続けるんだ。あっ! 悪役令嬢発見! 取り巻きもいるぅぅ!!)


 フレドリクが祝辞を読んでいるのに、フィリップはエステルばかりを見ている。その隣には小さな少女と膨よかな少女もいたから、さらに興奮しているな。


(いや~。眼福眼福。やっぱり見慣れた制服の悪役令嬢はかわいいな。でも、いまの制服は僕が入学する頃には着れないだろうな。胸がぜんぜん違うもん。早く2年後にならないかな~……ん? なんか大事なことを忘れているような……)


 フィリップは考えても思い出せないので、すぐにエステルに目を移して巨乳になった姿を想像してた。

 そうこうしていたら入学式も終わったので、馬車に乗った皇帝の膝の上に乗ったフィリップはお城に帰るのであった……



「そうだ! 思い出した!!」


 自室に戻って、今日はエイラと楽しいことができなかったのでなかなか寝付けなかったフィリップは、入学式に考えていたことをようやく思い出した。


「カールスタード学院……このキャラは、帝都学院じゃなくて、10歳から他国の学校に送られるんだった! シナリオ通りに行くとマズイぞ~……」


 そう、フィリップは途中参加の第二皇子。帝都学院には転校生として、フレドリクが最上級生の5年生になってから登場するのだ。


「ま、いつも通り仮病でやり過ごせばいっか。帝都学院に入っても、遠巻きに見ておけばシナリオを邪魔しないだろう。2年後が楽しみだな~」


 こうして不安なことも解消したフィリップは、やっと眠りに落ちたのであった。


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