(6)私、追いかけられる
前回のあらすじ
精霊師カストロが皇帝へ謁見し、召喚された私こと下級精霊を捕縛するため動き出した。
中級精霊であるアフロディーテ話していると、また人間の足音が聞こえてきた。しかも今度は二人じゃない。かなりの人数だし、ガチャガチャと金属どうしが擦れる音がしていた。どうしたらいいか分からずキョロキョロと周りを見て、考え込んだ。
「早く逃げなさい!」
「っ!」
大きな声が聞こえて私の頭がスッキリした。
「私逃げなきゃ!またあとでまた会おうね!絶対だよアフロディーテ!」
「ええまた、ね。幼き精霊さん」
その時の私は、逃げる事で頭がいっぱいで、アフロディーテが悲しげな表情で笑っていたのに気づかなかった。
ガチャガチャ、ガチャガチャ
「おい!誰か下級精霊を見つけたか!?」
「隊長!まだ見つかりません!」
「これはカストロ卿が興味を持つわけだ。全員集合!探知魔法を使う一旦撤退しろ!」
「はっ!」
(やばい、やばい!団体さんのお出ましだ!しかも、かなり的確に探してくる。早くここから出なきゃ私捕まっちゃう!)
そんな事を考えていると、何か透明な波のようなものが当たった。
(なにっ!?これ??)
「いたぞっ!二つ目のマナプールの裏だ!全員捕縛術式展開しろ!」
「はっ!術式展開完了しました!」
「捕縛開始!」
透明な波が当たった時、とっても嫌な予感がした。多分野生の感だね。
人間が離れたところに行ったのを見計らって移動しようとしたら、今度は、真っ黒な鎖が網目状に広がって私の方に向かってきていた。
反射的に逃げたが、片足に真っ黒な鎖が絡まってしまった。
この真っ黒な鎖はかなり痛んだ。まるで足が火傷したみたいにジンジンと痛む。
「つぅ!」
「隊長!不十分ですが、一時的な足止めはできました!」
「私が行くまで近寄るな!」
「はっ!」
多数の人間から!隊長と呼ばれた者が近づいて来る。そして何かをぶつぶつと喋った後、黒い鎖が私の全身に絡みついてきた。
(痛い、痛い痛いっ!)
「いやっっ!やめてっ!」
やめてって言ってるのに、全然やめてくれない。言葉は通じてるはずなのに。そして私心の中で人間に対する怒りの感情が湧いた。
「触れるな、人間」
え?私は心の中でやめて下さいって言ってただけなのに、口から勝手に言葉が溢れてきた。 でもそのおかげで、人間達が動くのをやめた。
(っ!鎖が少し緩んでる!今しかないっ、)
私は必死にもがき、ようやく真っ黒な鎖から抜け出す事に成功し、人間達が入ってきた扉から出る事に成功した。
少ししてから後ろで物音と声が聞こえてきたが、今はかまっている場合ではない。
「追えっ!絶対に逃がすな!!」
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