(2)かわいそうな最下級精霊~精霊師視点~
前回のあらすじ
私が最下級精霊ということが分かったけど、私食べられるかも!?
私はルヴォニア公国の精霊師を務めているフィリア・カストロという。
今回皇帝陛下の命令で、精霊召喚を行うこととなった。
王宮内には精霊召喚の儀式に使用する、精霊の間がありそこで精霊師10人がかりで1体の精霊を召喚する。
召喚については人間は選べない為、運が関係してくる。
このルヴォニア公国では中級と上級の精霊のみ精霊として崇めている。
下級や、下級にも満たない最下級の精霊は消耗品として扱われるという暗黙のルールが存在する。王宮の地下には、この国の汚点であるマナプールが存在していて、そのプールを使い下級精霊のマナを強制的に吸い取っている。
下級精霊のマナのおかげで、この国は急速に発展し人間の生活は比べ物にならないくらいに豊かになった。
今日の精霊召喚では、言葉を発することも、呪縛の術式から抜け出すことすらできない最下級の精霊が召喚されてきた。
(かわいそうに、、また精霊の犠牲が生まれてしまう、、)
思わず「かわいそうに、、」と声が出てしまった。
だが、これまでに100体以上の精霊を召喚してきた。中には、最上級の精霊も含まれていたが今回の精霊は見たことが無い。
まず、白色の服というのがありえないのだ。
精霊は、火、風、大地、水の四元素からなる。その元素は服の色に出てきたり、髪や目の色といった表面に出てくるのが普通なのだ。
(突然変異か?真っ白な服を纏った精霊は文献にもなかったはず、、だが、言葉もしゃべれず簡単な呪縛の術式すら破れないなら最下級精霊のはず、、)
「言葉も話せないとは、、はぁ、また下級精霊なのかカストロ卿よ」
との皇帝陛下のお声で一気に思考が現実へと戻された。
「皇帝陛下大変申し訳ありません。また失敗のようです」
精霊は、最下級でも信頼関係を築くことで能力を覚醒させ、その国に合ったマナを強化したり、精霊が認めた人間と契約することで、うまくいけば上級精霊程度の力を引き出すことも可能なのだから、失敗も何もないのだが、現皇帝陛下はそういう考えではない。弱き精霊は、さらに弱い人間の糧へというのが現皇帝陛下の考えだ。
「カストロ卿、その精霊を頼んだぞ」
「承知いたしました、仰せのままに皇帝陛下」
私は皇帝陛下が退出したのを確認したのち召喚した最下級精霊を召喚陣の下に仕込んでおいた術式を起動させ地下へと移動させた。
(この国の業がまた増えていく、、純粋な精霊を犠牲に成り立っている国など隣国に侵略されていまええばいいのだ!)
地下へと降りていく下級精霊を見ながら
「すまない。許してくれとは言わない、次は下級精霊に生まれないよう祈りを捧げます。どうか来世は幸せに生きてくれ。」
召喚した下級精霊が見えなくなったのを確認し、地下への扉を術式で封印する。
精霊の間を後にし、近くにいた兵士に召喚した下級精霊をマナプールへ入れることを指示する。
「今しがた召喚した精霊は最下級精霊だ。いつも通り処理しろ。」
「承知いたしました。そのように処理いたします」
今後の展開をお楽しみに!