(10)実験開始
研究員達の話によると、ここは精霊師カストロの屋敷の中らしい。
けど、今はそんな事どうでもいい、取り敢えず逃げる方法を考えないと。
「カストロ様、ではクリスタルの封印を解きます。よろしいですか?」
「拘束の術式はいつでも展開できる、やれ。」
「承知致しました!」
ピシッ、ピシッ、バキッ。パリーンッ。
「拘束術式展開」
この狭いクリスタルからやっと出れたけど、拘束術式とやらのせいで痛みがやってきた。
「痛っ、、また閉じ込めるの?」
カストロが気持ち悪い笑みを浮かべている。
「君を逃すわけにはいかないのでな。流石に逃げられて皇帝にバレるわけにはいかないんだ、くれぐれも逃げてくれるなよ」
このカストロとかいう人間は、悪い方の人間らしい。笑みが気持ち悪いし、皇帝にバレるわけにはいかないってことは、悪い事をしているはず。それに皇帝にバレないようにしてるって事は、いざとなったら皇帝をダシに威嚇できるかも。
最初の実験とやらはただ複数の人間に眺められることから始まった。もう丸三日も複数の人間に見られ続けれいる。研究員の言葉は難しい。前世でそれ何りに人間を見て来たけど、ここの人間の言葉はまるで何かの呪文を聞いているみたい。
「この精霊は生まれて間もない精霊である事は間違いないんだが、なぜ四大属性を備えていないのかさっぱりだな。」
「普通生まれて間もない精霊でも属性は備えているはずだ、やはり突然変異ではないのか??」
ここの人間たちは私の出生や、四大属性について知りたいみたい。私も知りたいくらい。ここの人間が突きとめてくれれば私も自分の事が分かるかもしれない。
一週間が経ってようやく私の事を眺めてくる人数が減って来たと思ったら、変な機械を六人がかりで運ぶのが見えた。
(随分大きな機械だけどなんだろう?)
「カストロ様、設置及び起動準備出来ました」
「あぁ。では次に移ろう。どこまでこの精霊が耐えれるか見ものだな」
ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン。
(うるさいっ。なんなのこの機械!?)
機械が動き始めると、術式の周りに拳大くらいの宝石のエメラルドの様な深緑の石が、1つ現れた。
「強制抽出開始しました。なっ!?高純度の精霊石っっ!?」
「こっ、この純度流石の私も驚いたぞ、抽出直後でここまで純度の高い精霊石が出来るとはっ!ただ、このペースで後1週間持つかが問題だな。」
「流石に、3日程度しかもたないかと思われます。この純度ですと、裏ルートでSSレートの評価を軽く超えるかと。」
「生まれて間もない精霊は未知数だ、まだ不明な点も多い、どこまで耐えられるのか見ものではないか!」
ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン。
(体の中から何かが吸われてるみたい。体は何とも無いけど、居心地はあんまり良くないけど、人間が言っていた精霊石って綺麗。)