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同じ枝で鳴いた鳥  作者: 悠々遙
15/19

十五

「全てとは、どういうことだ」


「私の想いを、すべてお伝えしようということです」


「……申してみよ」


 怖くないと言えば嘘になる。しかし、桔梗は今このときに聞かねば、後悔することになるだろうと確信していた。発言を許された藤が、ぽつぽつと話し始める。


「最初、私は兄上を脅しました。秘密を握って、情人となれと。この時点で、私は間違っておりました。そして、貴方以外には何もいらないとまで思い、縁談を断って父上と兄上にご迷惑をおかけした。その上、私が兄上と引き合わせた姫君に嫉妬し、怨み、貴方を傷つけた。勝手なことばかりして参りました。そして私は、己の罪深さを自覚しました」


 罪を告白するような藤の声音に、桔梗の胸も切なく締め付けられる。しかし、それを表情に出さないように努めていた。


「……もうよいのです。貴方の秘密も、決して誰にも言いませぬ。もうこの関係は終わりに致しましょう。貴方は、私から解き放たれるべきです。今後一切、兄上と共寝するようなことはありますまい」


 弾かれたように、桔梗は顔を上げた。それはとても有り難い申し出のはずなのに、何故か胸のざわめきがおさまらない。


「最後に一度だけ、仰ってはくださりませぬか」


「……何をだ」


「一度で良いのです。それで全ての諦めがつく。ただ一言――『お前が憎い』と」


 風が止む。周りの音が全て消える。二人だけが、世界から切り取られている。


「藤」


「はい」


「私は、私は、お前が……っ」


「ええ」


 視界が歪んで、藤の顔も見えなくなった。頬の上を熱い何かが通る。



「お前が、憎くて仕方ない――誰よりも、何よりも、お前以上に、私をここまで憎しみに駆り立てる者はおらぬ」



 桔梗の喉からは、それ以上、言葉が出てこなかった。返答も聞かないまま、逃げ出すように庭に走り出て、元来た道を引き返す。どれだけ拭っても涙が溢れて、止まらなかった。桔梗は感情の整理がつかぬまま、心配する房親を無視して馬を走らせた。





 これが、二人の交わした最後の会話となった。

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