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東京悪夢物語「生肉(レア)」

作者: ヨッシー@
掲載日:2021/09/01

東京悪夢物語「生肉(レア)


八俣精肉店、

私の店では、昔から焼き肉弁当を売っている。

美味しくて評判だ。

注文を聞いてから作るのが基本だ。

最近、まめに買いに来るお客さんがいる。

歳の項は25歳ぐらい、女性、色白やせ型。

あっ、

今日も買いに来た。

「焼き肉弁当、一つ…」

か細い声だ。

「はい、」

「いつもありがとうございます〜」笑顔。

……

「あの〜」

「はい、」

「肉は、なるべくレアで」

「そうですか、わかりました」

……

「はい、焼き肉弁当出来ました〜」

「780円になります」

お金を出す女性。

本当に色白だ、手が青白い。

女性は、焼き肉弁当を持って、帰って行った。

後ろ姿、

長い髪が湿っている。


数日後、

また、女性が買いに来た。

「焼き肉弁当、一つ…」

か細い声。

「あの〜、肉はレアで…なるべく、火を通さないで」

……

「お客さん〜火を通さないと食中毒になっちゃうよ、ハハハ、」

「……レアで、お願いします」

「はい、」

私は、言われた通り、レアで焼き肉弁当を作った。

「出来ました、」

女性は、焼き肉弁当を持って、帰って行った。


数日後、

再び、あの女性がやって来た。

「いつも、ありがとうございます〜」笑顔。

……

「焼き肉弁当、一つ、レアで…火を通さないで」

「えっ?』

「火を通さないんですか?』

……

「それは、出来ませんよ〜」

「いくらウチが新鮮な肉で作っているって言ったて、本当に食中毒になったら大変だよ、」

「レアで…」

「レアで!」

「ちょっと、出来ませんよ〜」

「レアでー!」怒鳴る女性。

ガガッ、

店主に掴みかかる、目が血走ってる。

痛い、

長い爪が、腕に食い込む。

「む、無理です、無理ですよ。法律で禁止されていますし、」

……

手を離す女性。

「これ下さい」

白い指で食肉ケースを指差す。

牛モツ、

「は、はい…」

「一人前700円です」

お金を出す女性。

牛モツを渡す。

バッ、

いきなり包みを開け、牛モツを食べ出す女性。

クチャ、クチャ、

「何を、」

素手で牛モツを美味そうに食べている。

クチャ、クチャ、クチャ、

クチャ、クチャ、クチャ、

ゴクン、ゴクン、

……


食べ終わる。

ペロ、ペロ、

美味そうに、指を舐める女性。

「ごちそうさまでした」

か細い声だ。

そして、ゆっくり、ゆっくりと帰って行った。


それから…

あの女性はピタリと来なくなった。

街で、長い髪の女性を見かけると思い出してしまう。


湿った髪、レアで…


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