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07.シュウと太陽

 影山はシュウのツイツイターを確認する。するとフォロワーは45万人もいた。今現在、影山のフォロワーは3.5万人だ。1ヶ月足らずで3万人はかなり凄いが、友達が存在せず、SNSは初めての影山はそんなことは知らない。

 あまりの桁に驚くと、シュウの情報を集めようとツイートを覗く。内容は動画投稿の情報と私生活が6対4で呟かれていた。

 影山は固定ツイートに疑問を覚える。


「来月は東京でオフ会をします!宜しければ参加してください。俺に会えるのはこのオフ会だけ!申込みはこちら→」


 オフ会、初めて聞く言葉だ。影山はスマホでオフ会と調べる。ネットには、顔を知らない人同士が現実世界で会うと書いてあった。  


「オフ会ね……」


 思わず自分の顔を思い浮かべる。ゴキブリの方がまだマシな顔をしていると、陰口を叩かれた経験があるので苦笑する。


「僕には縁がない話だな」 


 誰もいない自室で響く言葉。

 それから影山はシュウというゲーム実況者の情報を集める。検索エンジンで「シュウ 実況者」と調べると、トップには「シュウ ケント」「シュウ オフ会」「シュウ オフパコ」「シュウ 炎上」「シュウ ヤった」と表示された。


 鈍感の影山でもわかる。この男は世間を騒がせた人物であると。検索の一番上に表示されたページを開く。

「シュウとケントの関係は?」「シュウはファンに手をだしたのか?それを検証していきたいと思います」そんな生々しい言葉が並ぶ。

 内容は、シュウにはケントというゲーム実況仲間がいたこと、そのケントがホテルでファンと淫らな行為を行ったと書かれていた。そのオフ会がシュウとケントが定期的に開催しているらしく、そのせいでシュウもオフ会でファンを食ったのではないかと騒がれているようだ。だがシュウは、オフパコをやったという証拠がないので、してないという検証で終わっていた。

 影山はひと呼吸する。


「やめた方がいいかもな。でも大手実況者だし、多少交流はあった方がいい……」


 椅子に寄りかかりながら背伸びをする。影山は話上手な人間ではない。ネットや共通の趣味なら何とかなるが、陽キャのリア充と対等に話せるほど肝が据わってない。

 好奇心から影山は、オフパコした男の証拠写真をネット上で探すことにする。すると泥酔した男が半裸になり、布団に包まった生々しい画像を発見する。蚊に刺されたかのような真っ赤な複数の痕、極めつけは胸をわしづかみにする手だ。男の顔もバッチリ写っていた。言い逃れは出来ない。 


 何故こんな写真があるかというと、ファンが大手掲示板に晒したと情報が載っていた。

 げんなりする影山。 


「クズすぎるな、この女」


 思わず吐きだす言葉。

 ーー僕はオフパコなんて絶対しない

 そう心に刻む。

 影山はシュウと交流を図ろうか検討する。だが、ファンに手をだした噂が受け入れられない。

 影山は疑問を払拭する為、シュウにDMを送る。


「DM拝見させていただきました。前向きに検討したいと思っておりますが、ネット上で騒動になった件についてお伺いしたいことがございます。差し支えがなければご説明いただけますでしょうか?」


 シュウはそんなDMをスマホで見つめていた。文面を凝視するとため息をつく。


「あークソ面倒くせぇ。けっこう人気沸騰中だから接近しようと思ったのに」


 シュウは釣れない返信に落胆する。この男をオフ会に誘えば、新規の可愛い女の子と交流を図れるそんな思考があったからだ。

 シュウは隣りにいるケントに話しかける。


「なあ、どう思う? 太陽って男、けっこう女子に人気あるんだ。最近オフ会も同じ女ばかりで目移りしなくなったし?」 

「勝手にすれば? 俺は炎上して燃えつきましたよっと」


 パソコンでゲーム実況の編集をしながら、適当に返事をするケント。

 そんな姿にムッとするシュウ。


「はあ!? お前のせいで俺も炎上に巻き込まれたんだぞ? 少しは責任を感じろ!」

「そもそもケントが最初にオフパコして、俺を誘ったんだろ? もう俺は表の世界で活動出来ない人間だし、女を物色できない。なんで協力しなきゃいけねぇんだよ」


 ケントは投げやりに言葉を放つ。沢山のファンを食い散らし、炎上から逃げたケントはシュウ専属の編集スタッフになっていた。それをいいことにシュウは言う。


「今のお前がいるのは俺のお陰だろ? 今更、一般の仕事に戻れないから雇ってやったのに」


 一度、自由とストレスフリーを味わったフリーランス生活。一般企業でこき使われ、自由がなく、規則正しい生活に今更戻るのは難しい。そのうえ年収だって大幅に減少する。

 ケントは大きなため息をつくと言った。


「はいはい分かりました。じゃあ嘘をつけばいいだろ? 今は俺と縁を切って、音信不通。そしてオフパコはしてない、そういえば全て解決」


 ケントは面白おかしく言うと、シュウは不敵な笑みを浮かべる。


「そうだな、今更嘘を躊躇う理由なんてない。俺は可愛い子が大好きだし、処女ほど唆る性質だ」


 思わずケントは言う。


「若気の至りだしな?」

「だな。俺達はまだいい方だ。もっと酷えやつがいる」


 二人は顔を見合わせると大笑いする。

 そしてシュウは返信した。


「オフ会でファンと交流し、ベットで一夜を共にしたという噂でしょうか?当方はそんな事実は一切ありません。現在、親友のケントとは縁を切り、音信不通です。まだ疑念があるのなら真摯にお答えします」


 影山はDMを確認すると唸る。


「んーー、大丈夫そうかな……?」


 疑念を完全に払拭できないが、嘘をついてるようにはみえない。影山はツイツイターでシュウをフォローした。


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