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22.悪女な彼女

 オフ会終盤、影山は得意のパコリカとトケルを熱唱していた。マイクを握り、プロ顔負けの派手なポーズをとりながら歌声を聴かせれば、周りはプロのオーケストラを聴いたかのような絶賛の声と盛大な拍手をする。そんな白々しい茶番に影山は照れくさそうに笑い、頬を掻く。


「あ、ありがとうございます。リクエストがあれば、次コニコニで歌うときに参考にさせていただきます」


 そんな姿を淡々と見つめるシュウ。思うことは耳障りな歌声だ。影山の歌声は、複数のウェイ系が酒に酔いながらバカでかく歌っているような耳障りな歌唱力でしかない。このままファンの集いに囲まれながら、歌い手として活動するなら必ず破滅する未来が訪れるだろう。

 所詮、歌唱力がない歌い手は、恋愛経験が豊富ではない中高生を一時的に虜にしてるだけに過ぎない。天然、純粋、優しい、その三点セットが乙女の母性本能を擽る。恋愛脳は好意を抱ければ、都合のいい妄想で勝手に脳を狂わせ、一時的な快楽に溺れる。

 妄想の世界に溺れる乙女達は全員、沼の底までズブズブと沈んでほしい。助けを求めるように縋る手を、ほんの僅かな施しを与えるだけで永久に飼い慣らしたい。そして青春をコニコニ動画で費やし、貴重な学生時代を黒歴史に染めてほしい。捻くれ者のシュウはそんなことを思う。


 そんな思考はつゆ知らず、影山はファンと交流していた。一人一人に握手を交わし、拙い会話ではあるがファンと寄り添う思い遣りがある会話をする。

 そんな太陽にファン達は自然と足を運ぶ。コミュ障ではあるが、出会いを大切にする姿に感銘を受けたからだ。会話が苦手でも人を思う心遣いは自然と伝わる。最初は色々あったが、何事も慣れだ。

 シュウは、そんな影山の様子を淡々と見つめていた。自分もファンと交流し、感謝の言葉を言われたら頑張ろうと思えた日々があった。今はオフ会=オフパコという下心満載の脳みそになってしまったが、彼をみると懐かしい気持ちになる。


「やっほ、シュウ」


 突然、鳥肌が立つほど耳障りな声がする。恐る恐る後ろを振り返ると、そこにはムーンが笑みを浮かべながら立っていた。

 シュウは思わず眉間に皺をよせ、冷たくあしらう。


「出禁、帰れ」

「えー、いいの? 写真バラす?」

「……」

「うっわ、露骨に嫌がるねぇ」


 目線を逸し、苦々しい表情をしたシュウを面白おかしく弄るムーン。そして会話を続ける。


「太陽って童貞? (うで)に少し胸を当てただけで動揺するの」

「……まあ、経験なさそうではあるな」

「シュウと違ってヤリチンじゃなさそうだしね」

「ビッチのお前に言われたくねぇよ」


 定期的にオフ会に参加しては、有名実況者と繋がることをステータスに感じるムーン。そして月1でオフ会を開いては、自分好みの女を言葉巧みに口説いて後腐れない快楽を楽しむシュウ。腐敗した者同士、ある意味お似合いだ。


「ねえ、太陽くんの恥ずかしい写真ほしい? ベッドシーン撮ってRAISOに送るよ?」

「リベンジポルノはやめろ。お前がやってることは犯罪だ」

「へえ? 未成年の私と肉体関係を持った貴方と、未成年を食い物にした男の半裸写真を晒した私、どっちが罪が重いんだろうね?」


 ムーンは薄ら笑いを浮かべながら鼻で笑う。


「私が貴方を生かしてるって分からない? 私が警察に通報したら、シュウは豚箱行きなのに」


 悪女のムーンは17歳と装い、シュウと淫らな行為をした。

 彼女が髪を掻きあげた瞬間、全身が心地よい想いに満たされた。髪から仄かに香る甘い匂いはシュウの感情を刺激した。

 屈託のない彼女の笑顔は、シュウの心を射抜くのは簡単で、張り裂けそうな想いは初めて恋を覚えたあの頃の感情を鮮明に思い出させてくれた。オフパコだけで終わらせたくない。そう言って恋人になろうと縋りたかったが、蓋をあければ彼女も自分と似た者同士。

 それでも関係を止められなかった。男心を擽るコツを十分に兼ね備えた彼女は、他の女性と比べることが出来ないほど魅力的で、シュウの有り余る情熱をヘトヘトになるまで絞りだした。

 彼女とは時間がある度に足を運び、何度も唇を合わせた。関係が続けばマンネリ化するので、コスプレをしてもらってはお互いを求めあった。ベッドの上では、お互い混じり合った香水の匂いさえも刺激的で脳を狂わせる。


「豚箱か。散々俺を弄んだくせに冷たいな?」

「弄んだのはどっちだか。たまに思い出しては疼くけど?」

「ははっ、お互い相性だけはよかったからな」


 パズルのピースがピッタリとはまるような心地よさと、あの温もりは言葉で表せるものではない。彼女の熱っぽい吐息と縋る姿は己を奮い立たせることは容易で、冷めることを知らない情熱は、夜空に浮かぶ星のように儚く光輝いた。

 シュウは火照った感情を誤魔化すように言葉を言った。


「太陽くんをあまりいじめないでくれよ?」

「いじめるつもりはないけど、私が胸を見せた瞬間、無数の生命を飛ばしそうな気がする」

「見た瞬間、自爆するのは流石にないと思いたい……」


 純粋無垢な太陽なら、婦人売り場の下着ですら対象に感じていそうなので警戒する。


「それより太陽くんのパンツ、ウケがいいやつにしたから感謝しろよ」

「世話焼きは相変わらず健在ってことね。従順な犬であるケントが昔言ってたよ? シュウは自分が知らない世界を色々教えてくれるって」

「ふん、今は狂犬だぞ」

「猿のような貴方よりはマシでしょう? それとも犬猿の仲にでもなった?」

「なってねぇよ。早くあっち行け」


 シュウは箒を掃くように手を払うと、ムーンは楽しそうに笑みを浮かべながら手を振った。


「またね。彼の腰がヘトヘトになるまで楽しむから」

「あのな、太陽くんを遊園地のアトラクション扱いにするなっ」


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