4.meet again
「合計で五千ニーゼです」
量販店で精算を終えるジョー。
籠いっぱいの缶詰、トマトジュース、非常食。それらをショルダーバッグに詰め、速やかに店を後にした。
レジのマギーはまじまじと見送った。
――よそ者ね……レスラーか何かかしら……。
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食料を調達し、ジョーはバイクにまたがりキーを挿す。すると駐車場の隅に一人の少年の姿が目の端に入った。
少年はしゃがみ込み側溝を見つめている。困った様子で動かない。どうしようか悩んだが、ジョーはバイクのキーを抜いた。
「……坊や。どうしたんだ?」
潤んだ目の少年は、その大男、ジョーを見上げ、固まった。
「何か……落としたのかい?」
「……うん、僕のマスクボーグK」と、鼻汁をすする。
「ん? 何だって?」
「正義のヒーロー。悪と戦うサイボーグさ。知らない?」
「ああ。知らない」
「ほら、あそこ」
確かにその〝人形〟がドブにハマっている。
鉄の格子の蓋、その奥深くからこちらを見つめている。
「うむ。これじゃあ坊やには取れないな」
そう言ってジョーは錆びた蓋を掴んだ。
「下がってな」
少年は息を飲んだ。見知らぬ大男の太く力強い腕に目を奪われた。
分厚い鉄蓋が軽々と持ち上げられ、脇に寄せられる。ジョーは膝をつき手を伸ばした。その手は人形を掴み、少年の前に。
「……ありがとう」
「洗わなきゃな」
ジョーは泥まみれの人形を水道水で洗い、タオルで拭いてあげる。
少年は満面の笑みでまたお礼を言った。
「おじさん、ありがとう!」
その輝く瞳にジョーは嬉しくなった。
「……ヒーローを救い上げたおじさんも、ヒーローかな?」
ジョーは戯けて言った。そんな気持ちになるのも懐かしかった。その時だった。
「ボビィ! 何をしてるの?」
店の建物の角から一人の女が声を上げ、走り寄ってきた。
「どうしたの? その人は誰?」とヒステリックに。
「ママだよ」と少年はジョーに言い、その母親の方を向く。
「ママ! おじさんが僕のKを助けてくれたんだ!」
事情を母親に説明する少年ボビィ。
彼女は眉をひそめ、初めはジョーを睨んだが、ボビィの喜びが次第に伝わり、理解した。サングラスを外し、礼を言う。
「すみません……。ありがとうございます」
ジョーはその時目を疑った。胸が激しく高鳴った。現れた少年の母親、それは彼が知る、忘れられない女性だった。唯一、ジョーがかつて心を焦がした、唯一の女性だ……。




