あとがき
僕の〝JOKERMAN〟というキャラクターは前作〝SHINNING HIGH〟で生まれ、当初から次回作の主人公にと考えていた。殺し屋ジョーカーマンの物語。ただハードボイルドな話ではなく、主人公ジョセフが殺し屋になったのも理由があって、悲劇があって、傷を背負い、追い詰められ、絶望の淵で悪魔に魂を売り、感情を捨て去り――。でも心の何処かに、遠くに何かしら美しい記憶が残っているはず……行き着いたところはラブストーリーだった。
純粋な恋の物語にしたかった。リュック・ベッソン一九九四年監督作品〝レオン〟のような。初恋の女性を一途に想い続ける純粋な男。正面きって『好きだ』とも言えない純情な男の恋物語を描いてみたいと思った。
恋は、生きるうえでの原動力だと思う。誰かに恋い焦がれる、胸が熱くなる、愛して愛して止まない、会いたくて会いたくてたまらない、その感情はとても大事だし必要だと思う。たとえ片想いでも。強くその人のことを想う、念うこと。遠く離れていてもその人の身を案じる、無事を祈る、それは尊いこと。精いっぱい愛したその温もりはいつまでも消えず、自分を生かしてくれるものだと信じてる。
同胞に裏切られたジョセフは、まるで怒りだけで生きていた。だが残された心の片隅でリリィのことを想っていた。密かに、ずっと彼女を愛し続けた。もしいつか会えたらと。最後に言う。『最終的に俺を生かしたのは彼女への想いだ』。そしてリリィが『無事を祈ってる』その言葉を胸に、それからも生きてゆく……。
ボブ・ディランがカリブ海のある島で霊の刺激を受けて書いたという一九八三年〝JOKERMAN〟。偽りの予言者のことを歌った、とライナーノーツにある。ジョーカーマンとはイエス・キリストのことだとかディラン自身のことだとかファンの間で様々な解釈がある。そのワードだけ拝借したわけだけど、僕のJOKERMANは僕自身であり、僕ではない誰か。救世主。また、この曲が収められているアルバム名は〝INFIDELS〟=異教徒、無信仰者という意味。考えさせられるのは信仰のあり方。では何を信じればいいのか、何を頼りにすればいいのか。劇中のジョセフ・ハーディングは想い出を頼りに生きてゆく。恋も信仰と等しく、愛に繋がってゆくものだ。
二〇一九年 六月五日 ホーリン・ホーク




