表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JOKERMAN  作者: ホーリン・ホーク
32/33

32.pray for your...

 とある港。

 夜の海に呻く風と波。

 遠くを見つめながら二人の男が並び立つ。


 ライセンスは短くなった煙草をピンと弾いた。

 海の闇に消えゆく赤い炎の点。

 溜息混じりにライセンスは訊いた。


「……本当にそれで良かったのか?」

「ああ。俺にその資格はない」

「その子もお前を慕っていたというが。そうか」

「ドクによろしく頼んである」

 ジョーは俯き、その笑顔を懐かしむ。


 渦巻く風。ジョーは分かっていた。

「フットプライドの件。ライセンス、あんただろ?」

「……証拠はないはずだが」

「証拠を残していないのが何よりの証拠だ」

 ライセンスは顎を摩りながら頷く。

「お前の苦しみの一つでも、奴は味わうべきだ」



 飛び散る波飛沫がハーバーライトに煌めいた。

「ジョー。お前はずっと償っていた。二つの口座に金を振り込んでいた。違うか?」

「……ああ。バイト代をな」

「ん?」

「ビフの所で皿洗いと店内清掃した稼ぎでな。クリーンな金だぜ」

「フハハ。そう。お前の仕事は丁寧だからな」



 二人は空を見上げた。

 ふと、振り始める雪。ジョーは言う。

「……俺は国家に裏切られたと思い、復讐を謀った時期もあった。敵に捕まり拷問され顔を潰されズタズタにされ、ただ怒りだけが支配したはずだった。だが心の何処かに彼女が居たんだ。いつも彼女がいた。いつかリリィに会いたいと願っていた。最終的に俺を生かしたのは彼女への想いだ。……恋は……人を生かしてくれる」



 頬に解けゆく雪。

「サンダースへの恩義。彼を必要悪と見定め、(めい)に従う殺し屋稼業……とはいえ、俺は人を殺め過ぎた。体中、血生臭い。とても誰かを幸せになどできない。俺を待っているのはただ、地獄だけだ」

 そう言うジョーを見て、ライセンスはいたわった。

「……心配するな。俺も同じ。共に行こう」


 ジョーは彼を見て微笑んだ。

「療養中に看ててくれたあんたのことは忘れない。感謝してる」

「気にするな。同じ臭いがしただけだ」



 ジョーは目を閉じ、リリィを思い浮かべる。

 ――俺は遠くで君とボビィの幸せを祈ってる……。


 ライセンスは彼の肩に手をやる。ジョーは

「この雪はやけに塩辛い」そう言って頬を袖口で拭った。


 目を閉じれば聞こえてくる彼女の声。

 艶やかで、愛らしい響き……



 ……無事を祈ってるわ……ジョセフ……

 ……あなたの目は……とても優しい……

 ……そう、祈ってるわ……無事を……


 ……あなたの無事を……




 END


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ